ただ幸せになりたいだけなのに
水中で爆発する珠はキコリたちを追うように次々と投下され爆発していく。
ズン、ズドンと激しい音を伴う爆発は水底をも揺らし、キコリたちが水上へ向かうことすら許さない。
ただ逃げるしかないが……此処まで用意周到に攻撃してくる相手が、キコリたちの逃走を予測できていないはずもない。となると次はどんな手に出るか、キコリは必死で考える。
(俺なら、何処かで回り込んで攻撃する。向こうは飛べるんだ。ならどうする? どうすれば……)
この上にいるのがサレナであるとして、狙いはほぼ間違いなくオルフェだ。
たとえキコリが生き残っても、オルフェが耐えられないようならば負けだ。
つまり……キコリがやるべきことは。
「ドド」
「ああ」
「オルフェを頼む」
「任せろ」
ただそれだけでいい。キコリはフェアリーマントの力を使い、思いきり上へと跳ぶ。
魔法の効果のおかげで、水の抵抗は元よりほとんどない。
だからこそ、いつも跳ぶときのように高く、高く跳んで。
そして、水上へと斧を振りかぶり飛び出ていく。
「えっ」
「ミョルニル」
あっけにとられた顔をしていたサレナへと、電撃纏う斧を投げつける。
「きゃあああああ!?」
サレナの展開したバリアのようなものに弾かれ戻ってくる斧がキコリの手にくるよりも、再びキコリが水の中に潜る方が早いだろう。それが自然の摂理というものだ。
しかし、キコリには今妖精の摂理が味方している。
身体を妖精のような軽さに変えて飛翔を助けるフェアリーマント。
それをキコリが使っても、飛べはしない。キコリには翼がない、魔法の才能がない。
けれど。跳ぶことに関しては、熟練していた。そしてキコリの身体は今フェアリーマントにより、妖精の如く軽くなっている。
だからこそ。キコリは水辺で妖精がそうやって遊ぶように……水を蹴って、跳んだ。
音すら響かせることなく、けれど波紋は確かに水面に残して。
そうしてその手に戻るのは、キコリの斧。
「うそ。何、今の」
「ぶっつけ本番の新技だ」
ミョルニル、とキコリは唱えて。今度はサレナのバリアへと直接斧を叩きつける。
ズドン、と凄まじい電撃がサレナのバリアの表面を流れて。その向こうで、サレナが必死な表情をする。
「なんなの!? この威力、さっきの技! それに……また未来を覆した!」
「未来、か」
サレナのバリアを土台にキコリは更に飛んで、斧にミョルニルの電撃を纏わせる。
「なんでよ! 私はただ幸せになりたいだけなのに! なんで邪魔するの!?」
「未来のためだよ」
そうして落下と共に叩きつけた斧が……サレナのバリアを打ち砕いた。
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