あたしが生まれる前の時代の話
スタンプボアの突進力はかなり強く、乗っていれば同種以外は弾き飛ばせるほどには強い。
具体的には、先程からゴブリンを何度か弾き飛ばしている。
此方を見て慌てていたので、たぶんデモンではなくモンスターのほうだろう。
「ゴブゥッ⁉」
「……まあ、どうせゴブリンは襲ってくるからいいんだけどさ。なんか悪いことしてる気分になるな」
ズガッと音をたてて弾き飛ばしたゴブリンを視線で追いながらキコリは言うが、ドドはフンと鼻を鳴らす。
「ゴブリンなら構わん。奴等は節操も無ければ信義もない」
「あー、確かにね。ゴブリンならいいんじゃない? どうせ殺し合いよ」
「ゴブリンはな! 仕方ないな!」
オルフェもフェイムも頷く辺り、本当にゴブリンはダメなんだろうなとキコリは何か納得してしまう。
「……そういや前にゴブリンがオークに絞め殺されてたの見たな……」
その後オークと戦ったんだけど、とはキコリは言わないがドドは納得したように頷いていた。
「恐らく武器か何かを盗んだのだろう。連中はそういうのは得意だ」
「だろうなあ……」
ゴブリンが持っていた立派な武器はその辺りが理由なのだろうし、オークに殺されていたのもその辺りが理由ではあるのだろう。キコリが襲われたのはついでだろうが。
「そもそもだけど、モンスターが人間と戦うのって何が理由なんだ?」
「うむ……? 人間は基本的には敵だろう? それはまあ、戦わない時もあるにはあるが」
「そうだな」
ドドとフェイムは何を言っているんだといった様子でキコリを見るが、まあキコリも人間だった頃はモンスターは全部敵と考えていたのでそれについては何も言えないのだが。
「理由っていうか積み重ねよね。直接的には人間の言う汚染地域が出来た争いあたりが一番大きい理由だと思うけど」
「……なるほどな。そもそも、その争いの理由は何だったんだ?」
確かアレを引き起こしたのは天才とか英雄とか呼ばれる人間……恐らくは転生者のはずだが、まさか1人で戦争を引き起こしたわけでもないだろう。其処に至るまでの諸々があって、決定打となった一撃は、ただそれだけのものでしかなかったはずだ。なら、そうなるまで悪化した要因は何処にあるのか?
「さあ? あたしが生まれる前の時代の話だし。ドラゴンなら知ってるんじゃないの? それこそ、この前の奴とか」
「あー……」
とはいえシャルシャーンは聞きたいことがあるからと呼んで来てくれるような相手ではないだろう。そのうちヴォルカニオンにでも聞いた方がマトモな答えが返ってきそうだ。
「まあ、トルケイシャみたいな無茶苦茶する奴がいることを考えるに、俺じゃ理解できないような複雑な理由があったりするんだろうけどな……」
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