戦場跡でもあるまいし
それはまるで、ゴーストの存在そのものを拒絶するような。
あるいは溢れる水を壁が防ぎ弾き返したかのような。
「ヒ……? ヒギエッ!」
呆けたような顔のゴーストは、ドドのメイスの一撃で霧散する。
魔力生命体であり、物理攻撃が通じないはずのゴーストが、だ。しかし、その理由は明確だ。
「なるほど。悪魔の金属は貴様等より強いとドドは理解した」
そう、魔法を弾く悪魔の金属はそれそのものが魔力を秘めたマジックアイテムでもある。
魔力を弾く魔法の品というソレは一見矛盾して見えるが魔法学をかじった者であればそうではないとすぐに分かる。
魔法を弾く。それ自体も魔力によって為される作用なのだから。
そして、その力は今ゴーストという「生きている魔法」を弾き、滅してみせたのだ。
更に言えば、この場にはもう1つ魔法の武具がある。
「でりゃあああああ!」
「ヒイ!」
「ヒイイイイイイ!」
そう、キコリのドラゴンメイルとドラゴンアクス。
ドラゴンであるキコリの鱗と爪であるそれは、キコリ自身の魔力から生み出された、いわば天然の魔法の武具だ。
それ故に、キコリの斧はゴーストを斬り裂きキコリの鎧はゴーストの侵入を許さない。
そして……魔法的戦闘では様々なモンスターの中でもトップ争いをする種族の1人も、此処に居る。
「クールウェーブ!」
「ヒイイイイイ!」
オルフェが放った青い波動は、冷気を放つだけの魔法。しかしただそれだけの魔法でゴーストが溶けるように消えていく理由は、単純に込めた魔力量故だ。
いわば、より濃い魔力で押し流すという力技。それでいて単純な魔法故に連発など自由自在。
そうして3人はゴーストをあっという間に殲滅し、その場にはキラキラと光る魔石が幾つか残されていた。
「もう居ない、な?」
「少なくとも周囲には居ないようだ」
「何も気付かなかった連中が何言ってんのよ。バカじゃないの?」
周囲を警戒していたキコリとドドはオルフェに言われ「うぐっ」と黙り込むが、そんな2人にオルフェは「大丈夫よ、少なくとも近くには居ないわ」と肩を竦める。
「とはいえ、たぶんこの森はゴーストだらけね。どういう理由でそうなってんのかまでは知らないけど」
まだオルフェの感じた違和感は残っている。恐らくゴーストはまだいるだろうとオルフェは感じていた。
しかし何より問題なのは「どういう理由で此処にゴーストが溜まっているのか」だった。
「そもそもこんな場所にゴーストがこれだけ居るのは変なのよ。戦場跡でもあるまいし、何が目的で溜まってんのかしら」
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