オーク式の斧
シャルシャーンの言葉がどういう意味かは、すぐに理解できた。
キコリを先頭にオルフェとシャルシャーン、最後尾にドドという構成で歩いていた矢先。
何もなかったはずの場所……オルフェの真横に、突如オークが出現したのだ。
「グゴオオオオオオオオ!」
「えっ……!?」
ズン、と。振り下ろされた斧をオルフェは回避し、驚愕に目を見開くドドが動くより先にキコリが飛び掛かり頭を叩き割るような強烈な一撃を叩き込む。
「ガグッ……」
「ミョルニル」
振り上げた斧に電撃を纏わせ、再度の一撃が叩き込まれる。
傷口から流し込んだ電撃はオークの体内を蹂躙し……その身体が、グラリと倒れる。
地響きと共に地面へと倒れた死骸が動かないのを確認すると、そこでキコリは初めて気が付いたように「あっ」と声をあげる。
「ごめん、ドド。オーク殺しちゃったよ」
「いや、いい。今のは上手く言えないが……ドドの同胞とは思えなかった」
「ていうか、突然出て来たわよ? 普通のオークとも思えないわ」
ドドとオルフェもそう言うが、キコリも確かに今のオークの出現についてはおかしいと思っていた。
こんな見晴らしの良い草原で、オークを見逃す要素など何処にもなかったはずだ。
なら、オークが何か気配も姿も消し透明になるような魔法でも使ったのだろうか?
いや、それならオルフェが「そういう魔法」の可能性に言及したっていいはずだ。
オルフェの魔法の知識についてはキコリは全幅の信頼をおいている。
だから、そんなオルフェが知らないとすれば今のオークはオルフェすら知らない魔法を使いこなしてみせたということになる。
だがそれにしては攻撃方法がただの斧だった。
オークの巨体に相応しい大きな斧ではあるが、それだけだ。
試しにキコリはオークの斧を持ち上げてみるが……重たい斧というだけで、何か特別な力が感じられるわけでもない。
「オルフェ、この斧に何か秘密があったりは」
「どう見てもただの斧じゃない」
「いや、ただの斧には見えない」
オルフェの意見を、ドドが難しい表情で否定する。
「その斧は妙だ。妙にしっかりし過ぎている」
「どういう意味だ?」
「貸してくれ」
ドドはキコリから斧を受け取ると一通り見回し、頷く。
「オーク式の斧で間違いない。だが、全くガタがない……これは新品だ。作ったばかりという感じだな」
「新品、か」
「作り手の癖もない。見本のような作り方をしている……あまりにも気味が悪い」
キコリにはその辺りはよく分からない。ドドは鍛冶師だからそういうのが分かるのだろうと、そんなことを考える。
キコリに分かるのは……いや、出来るのは。
「グガアアアアアアアア!」
こちらに向かって走ってくるオークを迎撃せんが為、斧を構えることくらいだった。
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