知性持つ者の義務

「あー! 少しはスッキリしたわ!」

「おつかれ。でも、これで終わりじゃない」

「そうね」

「どういうことだ?」


 納得しあうキコリとオルフェに、ドドが疑問符を浮かべる。

 ネクロマンサーを……しかも3人も倒したのだ。これで終わりと考えるのが自然だからだ。


「だってアイツ等、ネクロマンサーのくせにアンデッドを使わなかっただろ」

「そう、いえば」


 言われて、ドドもようやく気付く。

 ポイズンゴースト、そしてアンデッドオーク。戦力になるアンデッドはたくさんいるはずなのに、あのネクロマンサーたちは1体もアンデッドを出してこなかった。

 僅かでも出せば戦況がかなり変わったかもしれないのに、不利になっても出そうとしない。

 これには当然、相応の理由があると考えるべきだ。しかし、それは何か?


「たぶん、使えなかったんだ。アイツ等の上がいる。アイツ等もネクロマンサーだったんだろうけど……集めたアンデッドを使う権限がなかったんだろうな」


 そしてその何者かは、この状況でも出てこない。それはつまり「会いたければ其方から来い」という意味なのだろう。

 そして現状、その誘いに乗らないという選択肢は……。


「ま、此処から魔法撃ち込んでもいいんだけど」

「いや、それはどうだろうな……いける、か……?」

「ドドはそれはちょっとどうだろうかと思うが」

「罠を丁寧に張ってるんでしょうし。わざわざ飛び込む理由ある?」

「ないな」

「まあ、ドドもそれには同意だ」


 キコリとドドが頷くと、オルフェはキコリをツンツン突く。


「じゃ、グングニル撃ちましょ」

「あー、あの時みたいにか」

「そ。何か仕掛けてるんなら出てくるでしょ」

「だな。じゃあ早速」

『待て』


 キコリとオルフェがグングニルを撃つ態勢に入った、その瞬間。空気を振るわせるように声が響き渡る。


『こちらは争うつもりはない。話し合おう』

「別にこっちは話し合う理由はないんですけどぉ?」

『理由は無くともまずは話をするのが知性持つ者の義務と理解している』

 

 何やら小難しいことを言う「声」にオルフェはキコリに「どうする?」と目線で聞いてくる。

 怪しい。怪しいのは間違いない。なんだかんだと罠に誘い込もうとしている気はする。

 しかし、相手の言う事ことは間違ってはいない。

 あのネクロマンサー3人による攻撃など、話を拒絶する理由はいくらでもある。

 あるが……気に入らないからとりあえず話し合いを拒否して潰そうというのはちょっと……という気持ちもあるにはある。


「何か妙な真似をしたら即座に全部壊す! それでいいか!?」

『勿論だ。こちらも配下の襲撃については謝罪しよう。さあ、橋を渡って此方へ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る