絶対タネがあるわ
「何を……言ってるんだ?」
「妖精とオークと行動を共にしている。そしてその、人間とは思えぬ生命力。防具の性能を加味しても有り得ぬ程だ」
「……そうじゃないと言ったらどうする」
「憂いなく殺す」
なるほど、此処で「人間だ」と言えばあるいは戦いを回避する道があるのかもしれない。
それを理解した上でキコリが選んだのは。
「人間じゃない。元人間ではあるけどな」
「そうか。嘘をつかなかったことは評価しよう」
腕を振り上げるネクロマンサーに、キコリは「待て!」と呼びかける。
「なんだ。話なら終わった」
「勝手に終わらせるな。俺は質問に答えた。お前も質問に答えろ」
答える義理などないと言われてしまえばそれまでだが、ネクロマンサーは意外にも僅かな沈黙の後に「ふむ……」と悩むような様子をみせる。
「……いいだろう。言ってみろ」
「ドドの村を襲ったネクロマンサーはお前か? もしそうなら、どうして襲った?」
「なるほど、面白い質問だ。だが……その質問には答えられんな」
「どうしてだ」
「それも答えられん。さあ、始めよう」
言うと同時、ネクロマンサーの左右に無数の氷の矢が現れる。
「来るぞ!」
「全員、ドドの後ろに!」
ドドが巨大盾を構え、降り注ぐ氷の矢を防ぐ。
激しい音を立てて盾にぶつかる氷の矢にドドは呻くが、なんとか盾を突破されずに防ぎきる。
「ファイアッアロー!」
「ミョルニル!」
オルフェが数本の炎の矢を放ち、キコリが稲妻纏う斧を投擲するが、ネクロマンサーは空中で全て回避してしまう。そして……ネクロマンサーは自分のいる場所とは全く違う方角から風の刃と炎の弾を同時に放つ。
「こ、の……っ!」
炎の弾を回避しようとしたキコリの足をまたあの土の手が掴んでおり、そのままキコリに着弾した風の刃がキコリの鎧を抉る。
土の腕を無理矢理蹴り壊し、キコリは荒い息を吐く。
先程から自分を集中攻撃しているが、理由は自分が一番面倒だからだろう、とキコリは思う。
この場にあった幻術魔法を破ったのはキコリだ。そんなキコリがいなくなればどうとでも出来ると思っている可能性はある。
(それに、違和感はもう1つ)
先程からキコリを執拗に狙ってくる無数の魔法。
キコリは魔法には詳しくないし才能もないが、魔法の才能のある妖精を……そしてオルフェを知っている。
そのオルフェですら、何も唱えず、しかも複数の魔法を同時発動させるなど出来ていない。
オルフェに出来ないことがネクロマンサーに出来ている可能性もあるにはある。
だから、キコリは魔法を回避しながらオルフェへと叫ぶ。
「オルフェ! 1人でアレは可能か⁉」
「無理! 絶対タネがあるわ!」
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