言葉より行動で示すべきだ

 山の上とはいえ……いや、山の上だからかそれなりの木々が生えている場所もある。

 食える実のなる木だ、とドドが言っている辺り、そういう目的で植えられている可能性もあるだろうか?

 キコリたちが来た方向とは逆の方向へと向かう中で、ドドは「ドドは問いたいことがある」と声をあげる。


「ん? 質問ってことか?」

「そうだ。キコリが人間ではないということは分かっている。だが、具体的に『何』であるか分からない」

「……」

「最初は妖精の亜種かと思ったが、そうではないとドドは思う。もっと荒々しい何かだ。違うか?」


 キコリは少し考える。キコリがドラゴンだという情報は、軽々しく他人に話すものではないと思っている。ドドは今は仲間だが、そこまで話していいかはまだ分からない。

 だから、キコリは嘘をつかずに正直に「話せない」と伝える事に決める。


「すまないが、俺が『何』かはまだ話せない」

「先程の信用の話か」

「まあ、そうなる。正直、あまり言いたい話じゃない」

「そうか。ドドはそれを尊重しよう」

「助かる」


 案外アッサリ引いたな……とキコリは思うが、ドドの内心までは分からない。

 それほど重要な質問ではなかったのかもしれないが……。


「だが、誤魔化すでもなく『話せない』と伝えたことをドドは好意的に思う」


 言われて、キコリは一瞬虚を突かれたような表情になる。

 信用できないと言ったも同然だというのに、それを好意的に受け取られるとは思ってもいなかったのだ。


「……それは、いいのか?」

「ああ、いい。嘘で誤魔化し後で真実が露呈するより、余程誠実だとドドは思う」

「なるほど、な」


 そういう考え方はなかったな、とキコリは思う。


「ドドも話していないことは多々ある。それを一々語ることが良いとも思えない」

「かもな」

「そして何より」


 ドドはメイスを握ると、生えていた木を殴打する。聞こえてきたのは悲鳴で、ホワイトアームがどさりと一体落ちてきて……そのまま驚異的な身体能力で起き上がりドドへと腕を振るう。

 だが、ドドの手はそれをアッサリと受け止めて。驚愕の表情のホワイトアームの顔面へとメイスを叩き付け地面に縫い付ける。

 一撃で確実に殺したと確信できるそれを念の為蹴っ飛ばして確認すると、ドドは振り向く。


「言葉より行動で示すべきだ。口では何とでも言えるとドドは思う」

「同意だ」


 此処で待ち構えていたのか、他の木からもホワイトアームが降りてきて……その腕を振るうより前に、キコリがその懐へと入り込んでいる。


「ミョルニル」


 叩きつけた斧から電撃が流れ、ホワイトアームを黒焦げの死骸へと変える。

 おおー、とドドが感心したような声をあげ、オルフェが「まあ、そうなるわよね」と頷く。

 ユグトレイルのダンジョン内でならともかく、こっちに戻った「今のキコリ」の相手になりはしない。それを再確認したのだろう。


「だから、俺も行動で示すよ。ドド、仲良くやろう」

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