同類ですから
それは、諦め……というよりは諦観に近い境地だった。
キコリが人間という生き物に期待しなくなっている中で、ほぼ唯一の例外であるアリア。
そのアリアに否定されたならば、キコリの中で人間としての「何か」は完全に消え去るだろう。
それが良いことか悪いことかは現時点で判断しようもないが……少なくとも、これはそういう儀式めいたものだ。
だからこそ、キコリは帰宅したアリアに真実を告げて。
「あ、そうなんですね」
返ってきた反応に「は?」と間の抜けた声をあげた。
「なんか変わったなー、とは思ってましたけど。そうでしたか、ドラゴンでしたか」
「え、いや。ええ? そんな軽い話題をしてないと思うんですが」
「世間一般的にはそうなんでしょうけど。別にキコリはキコリですし。今日突然変わったって話じゃないですよね?」
「それは、まあ」
「ならそういうことですよ」
あまりにもあっけらかんとしたアリアが「さ、ご飯にしましょ。あ、今日はシチューなんですねー」と台所に向かっていくのを見てオルフェが思わず「バーサーカーってのはこんなんばっかりなのかしら」と呟いてしまう。
「どうでしょうね。バーサーカーって弱いうちに戦って死ぬか、強くなってから戦って死ぬので。あんまり見ないんですよね」
「どっちも死んでるじゃない」
「そうですよー? 死に損ねてる私と五体無事なキコリが例外なんであって、普通は死にます。バーサーカーは、そういう生き方しか出来ないんですよ」
それは、キコリを知っているオルフェであれば納得できる台詞ではあった。
事実オルフェが居なければ、キコリは何度も死んでいた場面があったからだ。
しかし、と思う。
「キコリに色々教えたのはアンタだったはずだけど? 死ぬようなの教えたの?」
「ええ、そうですよ。何もないなら命をかける。それは普通のことです」
「……アンタはキコリの味方だと思ってたけど」
「勿論味方です。だから強くなる方法を教えました」
アリアは至極真面目な表情のまま、オルフェと向かい合う。
「殺し合いを生業にするなら、命なんて迷いなく賭金に出来ないといけないんですよ。誰かより劣る部分があるなら尚更です。自分か相手か。どっちかが死ぬ状況で迷いなく殺しにいける人は結果的に生き残りやすい。だから『そういうの』が通じない相手と出会うまでは勝てるんです」
「……悪いけど、全然理解できないわ」
「理解して貰えるとは思ってません。でも、キコリは私が教えずともバーサーカーになっていたと思いますよ」
「はあ?」
「分かるんです、そういうの。同類ですから」
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