自覚はしてる。でも治らない
絶命したホワイトアームの身体がバウンドし、転がっていく。タフなホワイトアームも顔面を頭蓋ごと割られては流石に死ぬ。もっとも割ろうと思って割れるようなものではないが……色々と状況が重なった結果とも言えるだろう。
ある意味で無茶の結果であり、キコリのマジックアクスを持つ腕には相応の反動が来ていた。
当然だ。威力にはそれ相応の反動というものがある。ズキズキと痛む腕はそれでもマジックアクスを離さないが……もし2体目のホワイトアームが隠れていれば、満足に振るのは難しかっただろう。
その腕にオルフェが触れ「ヒール」と唱えれば腕は回復するが……そんなオルフェをキコリはじっと見ていた。
「なによ。今更ヒールが珍しいって訳でもないでしょうに」
「……普段オルフェが狙われないから、あんまり意識しなかったんだけどさ。今回オルフェが無茶したのはなんていうか、結構ビビッたよ」
「何言ってんのよ。一番ビビッたのはあたしだってのよ」
ええー、と言うキコリにオルフェは「当然でしょうが」と返す。
「ちょっと間違えれば死んでたもの。2度とやりたくないわ、あんなの」
「まあ、な」
1つミスしたら……いや、しなくても死んでいた。だからこそ、オルフェにとっては賭けに近い無茶だった。
それでも無茶をしたのは、ただ単にキコリを助ける為だ。ただそれだけの理由に命をかけたのだ。
出会ったばかりの頃であれば、そんなことは天地がひっくり返ってもしなかっただろうが……。
それが今となっては、キコリを見捨てる方が有り得なくなっている。なんとも不思議なものだと、オルフェはそんなことを思う。
「我ながら、面倒な奴に関わっちゃったわ」
「感謝してるよ、ほんと」
「は?」
「感謝してる。いつもありがとな、オルフェ。お前がいないと俺、死んじゃうからさ」
それはキコリの本心だ。パーティーを組んだのは初めてではないが、オルフェほど安心できる相棒はいない。
自分が無茶をしてもオルフェがいれば大丈夫。そんな、依存にも似た感情をキコリはオルフェに抱いている。まあ、その分無茶している自覚もあるので、それは本当に悪いとは思っているのだが今のところ行動は伴っていない。そして、そんな自分をオルフェも理解してくれていると分かっているからブレーキがかからないのは本当にタチが悪いのだが。
要はオルフェはキコリを甘やかしているのだ。本人にそんなつもりがなくとも……だ。
しかし、オルフェは同じような背丈で、キコリのそんな本心からの笑顔を真正面から見て……赤くなっていく顔を手でパンと叩いて隠す。
「……このダメ人間」
「自覚はしてる。でも治らない。ごめんな?」
「それは分かってるけど、開き直られるとすげームカつくのはなんでしかしらね」
オルフェにバシバシと叩かれて、キコリは「ほんとごめん」と謝って。そんなキコリに、オルフェは諦めたような長い……長い溜息をついた。
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