根拠ならあるさ
「何よバカ。根拠のない慰めなんかいらないわよ」
「根拠ならあるさ」
オルフェに、キコリはそう即答する。
そう、キコリには根拠がある。誰にも否定できない、根拠がだ。
「俺は今とほぼ変わらない状態で、ゴブリンジェネラルをぶっ殺してる」
「……何かの冗談?」
「事実。ルナイクリプスとかいう魔法の支援は貰ったけど、それだけ。1人で戦って、ぶっ殺したんだ」
そう、あの日あの時。キコリには不完全なドラゴンクラウンすらなかった。
……まあ「チャージ機能のついた鎧」はあったが、それはあえて言わない。
キコリが血反吐を吐く程度の無茶をすれば、似たようなことは出来るかもしれないから。
「……確か会った時チャージ機能の鎧着てたわよね。それは?」
だが、オルフェは誤魔化せない。仕方なく、キコリは「持ってた」と答えて。「やっぱりね」と答えが返ってくる。そして……オルフェの手がキコリの背中に回される。
「ほんと、バカね。黙って無茶する気だった?」
「……ああ」
キコリがそう言えば、オルフェは腕に力を籠めてキコリをギュッと締め上げる。
「ばぁっかじゃないの!? それであたしが喜ぶと思った!? 何度説教すれば気が済むのアンタ!」
「いてて! オルフェ、結構痛い!」
「そうよ、無茶すれば痛いし無茶した奴の相棒も痛いのよ! いい加減学べ!」
「ご、ごめん! 悪かった!」
オルフェから解放されたキコリもキコリから手を離したオルフェも、ぜえぜえと息を吐いて。
「でもありがとう。落ち着いたわ」
「あー、いや。それならよかった」
「とりあえず、5階に行くまでにやるべきことは見えてきたわね」
「何すればいいんだ?」
「アレよ」
オルフェが指差したのは、ゴブリンからキコリが奪った剣だ。
「あたしたちが使える武器や防具、あとは道具もかしらね。そういうのを奪い取るのよ。たぶん上に行けば行くほど強くなる……ならそれを奪えば、あたしたちも自然と強くなるわよね」
「確かにな。でも此処のゴブリン、斧持ってるかな?」
「杖があればそれも欲しいわね。人間ってそうやって魔法の威力高めてるんでしょ?」
あれが欲しいこれが欲しいと言い合っていると、陰鬱な感情など自然と消え去っている。
代わりに湧いてきたのは先へ進む為の意欲と、強い闘志だ。
「よし、そうと決まったら、まずは1階を虱潰しだな」
「そうね。奪えるものは全部奪って、一番いいものを持っていきましょ」
ゴブリンがいることは分かっている。
だから、まずはゴブリンを狩り尽くす。
「じゃあ、行くかオルフェ」
「ええ、キコリ」
そうして……オルフェとキコリのコンビは、再始動を果たしたのだ。
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