俺も役に立てたってわけだ
「……なんだ?」
キコリは弾かれた手を、再度転移門に触れさせる。
向こう側に突き抜けるはずの手はしかし、再びバヂッという音を響かせ弾かれる。
手に伝わるビリビリとした感覚は、「転移門そのもの」に弾かれたことをキコリに知らせてくる。
「ちょ、何よそれ……通れないってこと!?」
「俺だけかもしれないけどな」
「だとしてそんなの検証できないわよ! 万が一あたしが通って戻ってこれなくなったら……!」
今一番最悪な可能性はソレだとオルフェは考えている。
キコリとオルフェが分断された場合、オルフェも危険だが一番危険なのはキコリだ。
また無茶でもやって倒れた時、オルフェが側にいなければどうすることもできない。
しかし何より一番危険なのはこの場所だ。だというのに、この場所から戻ることが出来ない。
戻ることが出来ないなら……とれる手段は、あまり多くはない。
「キコリ。今から幾つかの手段を提示するわ」
「ああ、頼む」
1つ目は、此処で待機して転移門が正常に戻るか試す。
安全牌であるとは思うが……正直、可能性は低いだろう。
2つ目は、他の転移門を通り、其処から帰還のルートを探る。
まさか他の転移門までダメになっているということはないと思うが……まあ、悪い賭けではない。
「それと、3つ目だけど……正直、この手段はとりたくないわね」
「あー、なんとなく想像はつくぞ。原因を叩くんだな?」
「……そうよ」
通常起こらないことが発生しているなら、必ず何らかの原因が存在する。
そしてそれは、多くの場合は一時的な、それも人為的な原因であることが多い。
ならばキコリとオルフェが……まあ、無茶をすることになるだろうが叩けるはずだ。
しかし3つの選択肢の中では1番の賭けだ。オルフェは、あまりこの手段はとりたくはない。
「なら、全部試そう」
「へ?」
「危険性を低く抑えられるなら、そのほうがいいに決まってる。1つ目から順番に試していこう」
幸いにも、今すぐこの場で此処を脱出しなければならない理由はない。
食糧も水も多少の余裕があり、モンスターの強さもキコリとオルフェで対処できるレベルだ。
ならばまずは転移門が復旧する可能性に賭け、それでダメなら他の転移門を試せばいい。
それでもダメなら……。
「2つ目まで試してダメなら、3つ目……原因を探そう。転移門が使えなくなるくらいの異常なら、案外すぐに見つけ出せる気もするしな」
「まあ、そうね。あたしとしたことが、思わぬ事態に慌てちゃったわね」
「お、じゃあ俺も役に立てたってわけだ」
「調子にのんじゃないわよ」
そうしてオルフェが調子を取り戻したのを確認して、キコリはクスリと笑う。
まずは、此処でしばらく待機。
これで大丈夫ならいいのだが……そうはならないだろうな、と。
キコリは特に根拠はないものの、そんなことを考えていた。
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