此処では跳ぶの禁止よ
何処までも続くかと思われたアリの穴だが、勿論そんなわけはない。
やがて見えてきた転移門を潜ると、今度は砂漠へと放り出される。
あの「生きている町」をも思わせる……いや、あれ以上に熱い喉を焼くような空気の蔓延する場所をミミズのような化け物に襲われ抜ければ、その次はバッファローのようなモンスターの襲ってくる草原。そこを抜けると……広がる森の中へと辿り着いていた。
「今度は森か……どう思う? 今度は当たりかな?」
「さあね」
何か不気味なものを見るように上を見上げるオルフェにキコリは思わず疑問符を浮かべる。
「どうしたんだ? 空に何かあるのか?」
「気付かないの? 本気で魔法関連の才能ゼロね、アンタ」
「全然分からん。何があるんだよ」
「……『何か』よ」
そう、オルフェには見えていた。
木々の間から僅かに見える空。そこに滞留する、得体のしれない『何か』に。
それが何であるかまでは分からない。しかし、とんでもない魔力がそこに渦を巻いているように感じられた。
敵意のようなものは感じられない。しかし、もし空へと飛び出せば……ソレは此方を無慈悲に呑み込むことは間違いないように思われた。
「キコリ。アンタ、本当に何も感じないの?」
「ああ、感じない。殺気でもあればすぐに気付くと思うんだが」
「そう。だとすると……」
この「上」に居るのはドラゴンに類する何かなのだろうか?
もしキコリが同族の気配を感じ、それ故に何も脅威を感じていないというのであれば説明はつく。
「とりあえず、此処では跳ぶの禁止よ。刺激したくない」
「ああ、分かった。歩いていくしかないってことだな」
キコリも、オルフェの言う事であれば無条件に信用すべきだと思っていた。
オルフェの助言に疑う余地はなく、本当にキコリのことを考えていると実感できているからだ。
危ないと聞かされて尚、キコリは「上」に何も感じないが……わざわざその「危ない何か」を刺激する必要もない。
斧を構えたまま、キコリはオルフェを先導するように歩いて。
自分に向かって振り下ろされた「枝」を、斧で受け止める。
「なっ……トレント!?」
「ミョルニル」
「ギギイッ!?」
キコリが斧に電撃を奔らせれば、キコリを押し潰そうと斧に触れたままだったトレントに電撃が流れていく。流石にその一撃で絶命する事は無かったようだが、その僅かな隙にキコリはトレントのすぐ近くまで潜り込んでいる。
そして繰り出すのは、木こりスタイルの構え方。
木を切り倒す動作そのままに、キコリはトレントの胴体……幹に斧を叩き込む。
ガアーン、と響いた音とダメージにトレントは絶叫して。続く第2打が、トレントを無慈悲に切り倒していた。
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