あたしも同じ意見よ
翌日の朝。
キコリは自分の上に浮かんでスヤスヤと寝ているオルフェに気付いた。
なんだか疲れているように見えるが……起こさない方がいいだろうか?
そんな事を考えて、そっと布団から抜け出す。
今のうちに階下に降りて朝食でも作っておこう、と。
気を利かせて階段をそっと降りて。食材庫から昨日ついでに買っておいたパンの塊を取り出す。
硬いパンではあるが、まあ牛乳と一緒に流し込めばどうにでもなるだろう。
「……ほんと、冷蔵庫があって助かったよ」
過去の天才……まあ転生者だろうが、彼等が作った家庭用の道具が此処にも設置されている。
魔石を使い冷気を送り出すだけの簡単設計だが、それでもかなり役に立つ。
そうでなければ、牛乳は昨日飲み切らなければいけなかっただろう。
「あとはシチューの残りも少しあるな。これを温めて……」
「なによー。起こしなさいよぉ」
「あ、おはようオルフェ」
「おはよぉ」
2階からフラフラと……いや、フヨフヨと飛んでくるオルフェは眠そうだ。
具体的には言葉のトゲが丸まっている。
だが起きてすぐナッツのところへ飛んでいくのはどうだろうかと思うのだが……とキコリは思うが、言わない。
そしてオルフェはナッツをポリッと食べるとようやく目が覚めたのか、そのままキコリの近くへ飛んでくる。
「ていうか、ほんと起こしなさいよね」
「ああ、悪かった。疲れてそうに見えたし、少しでも寝てほしかったんだ」
「アンタがあたしを心配しようとか5年早いわよ」
「5年でいいのか?」
「期待の表れよ。誇っていいわよ?」
「ハハッ」
そんな会話を交わしながら、キコリは朝食の準備を進めていく。
そうして並んだ簡単な朝食だが……オルフェの分のパンはちゃんと妖精サイズにカットしてある。
それをモグモグと食べながら「不味いわねコレ」と文句を言いながらでもあるが、オルフェはキコリに視線を向ける。
「それで、今日は何処行くか決めたの?」
「とりあえずは『生きている町』かな、とは思ってる」
「理由は?」
「一番可能性が高いから」
そう、3つの候補の中では「生きている町」が一番可能性が高い。
ロックゴーレムが自分を秘匿する手段を持っているのであれば、それはロックゴーレム自身の魔力によるものだ。
だとして、そんな強力な魔法をロックゴーレムみたいな肉体派モンスターが長時間使えるとも思えない。
ならばどういうカラクリか。
「ロックゴーレムは……『生きている石』とか、そういう類のモンスターの亜種の可能性が高いと思う」
「あたしも同じ意見よ」
キコリにオルフェはニヤリと笑って応える。
そっとキコリの皿にナッツを置いてくれたのは……ご褒美なのだろうか?
ともかく、2人の今日の目的地は「生きている町」に決定したのだった。
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