これからも

「あ、あはははははは!」


 キコリの肩を叩きながら、オルフェは本当に嬉しそうに笑う。

 これほどの笑顔は今まで見たことがないという程の笑顔だが……まあ、当然だろう。

 この場を我が物顔で飛んでいた、妖精の森を焼いたワイバーンたちを空から消える程に屠り尽くしたのだ。

 オルフェに……妖精にとって、これほどの大勝利はないだろう。


「やー、楽しい! 気持ちいいわ! 最高!」

「喜んでもらえて何よりだ」

「うんうん! アンタ最高よキコリ!」


 幸せの絶頂といった様子のオルフェではあるが、キコリとしては懸念事項はまだ残っている。


「一応、まだワイバーンのボスらしき奴は倒してないんだけどな」

「別にどうでもいいわよ、そんな奴。これだけやれば再起不能だろうし」

「まあ、な」


 モンスターなどと呼ばれていても生き物だ。

 更に言えばこんな分割されたフィールドであれば、その区域限定であれば全滅させることだって可能だろう。

 たとえワイバーンのボスが生き残っていたところで、別のワイバーンの住む区域に行かなければ個体数を増やす事も出来ない。

 実質上、この区域は制圧してしまったようなものだ。


「卑怯な手段ではあったけど……勝ちは勝ち、だ」

「別に卑怯じゃないでしょ」

「そうか?」

「そうよ。馬鹿じゃあるまいし、真正面からいくだけが戦いじゃないわよ」


 まあ、その通りではあるだろうか。

 いや、その通りなのだ。なのにどうして、こんな事を考えてしまったのか?

 キコリは考えて……1つの結論を出す。


「……真正面から勝ちたかったのかもな」

「バーカ」

「そうだな」


 しかしまあ、全ては終わった話だ。

 オルフェも満足そうだし、これでいいのだとキコリは思う。


「……帰るか」

「そうね」


 キコリとオルフェは、そのまま元妖精の森への転移門へ向かっていく。

 ワイバーンを倒してしまったことは報告の必要はあるだろうが、流石にゲリラ戦で倒したなどと信じてもらえるだろうか?

 魔石を回収する暇もあまり無かったが、それでも回収したものはあるから……それで信じてもらえるかもしれない。

 転移門を潜り抜けて、元妖精の森に辿り着いて。

 けれどもう、オルフェの表情は曇らない。

 

「なあ、オルフェ」

「なに?」

「これからもさ、俺と組まないか?」


 そう、オルフェの復讐が終わったなら……もうキコリと組む理由はない。

 オルフェはいつ妖精の新しい集落に帰ってもおかしくないのだ。

 だから、キコリはそう言葉にする。

 キコリとオルフェでなら、きっとこの先も進んでいける。

 そう思うからこそ、キコリはそう提案して。

 オルフェは、そんなキコリの顔をじっと覗き込む。


「あたしは高いわよ?」


 笑うオルフェに、キコリも笑みを返す。

 そして……そして。

 2人の背後。転移門から、巨大な「何か」が姿を現した。

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