おかしいとは思ってたんだ
「ミョルニルッ!」
電撃が、斧に宿る。
このまま投擲しても効かないのは分かっている。
分かっているが、それでもキコリは投げる。
狙うのは正面の一体。
投げた斧はやはり弾かれ、電撃もその表面を滑る。
そして、もう一体のスノウアリゲーターは当然その隙を逃しはしない。
背後からキコリを噛むべく襲い掛かって。
大きく開いたその口に、振り向いたキコリの投げた「もう1本の斧」が入り込む。
「ガッ……ギャガガッガガガガガガッガ!?」
口から体内に容赦なく入り込む電撃はスノウアリゲーターの身体を中から蹂躙して。
「フレイムスフィア」
上空からオルフェの投げ落とした大火球が1体目のスノウアリゲーターへと襲い掛かる。
その攻撃にスノウアリゲーターは気にした様子もない。
ない、が……その下にある「雪」はそうではない。
スノウアリゲーターの表面を「魔法が滑る」というのであれば。
滑った魔法は当然その周囲へ行く。
そしてこれも当然のことだが……イエティが焦げる程の炎を受ければ通常、雪は為す術なく蒸発する。
ジュオッと。スノウアリゲーターの足元の雪が大きく溶ける。
元々、イエティが潜める程度には積もっている雪だ。
スノウアリゲーターが「落ちる」程度には大穴が開く。
「ギャアアアアア!?」
なんとか落ちないようにしようとして、しかし出来るはずもない。
無様に転がり落ちて、腹を上に向けてひっくり返ってしまう。
そして、そんな姿を見せてしまえば。
「ミョルニル」
飛んでくる電撃纏う斧は、スノウアリゲーターを殺し切るには充分すぎる威力を持っていた。
「……ふう」
戻ってきた斧をキャッチすると、キコリは穴から少し離れた場所に座り込む。
オルフェの開けた大穴にも雪が降り積もり始め、いずれ元の雪原に戻っていくのだろう。
そして……キコリはその雪を手の平で受け止めるようにしながら呟く。
「おかしいとは思ってたんだ」
「何が?」
「この雪。魔力を含んでるだろ」
「そりゃそうでしょ。此処はそういう場所よ?」
「まあ、そうなんだが。こんなに雪が積もるのに、一定以上の高さに積もる気配が見えない」
キコリがそう言うと、オルフェは首を傾げる。
キコリが思い出すのは前世のニュースで見た、冬の北国の光景。
人よりよほど高く積もった雪。あの光景を思えば……。
「こんな勢いで雪が降ってるなら、転移門を抜けた先が雪の壁の『中』でもおかしくないはずなんだ」
「あー、なるほどね?」
地面を歩いていないオルフェにはあまり分からない感覚なのだろう。
キコリは思わず苦笑してしまうが……考えてみればヒントは最初から出てはいたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます