賭けに出られる状況じゃあない
「ファイアアロー!」
続けてオルフェがスノウアリゲーターのうちの1体に火の矢を放つが……表面でやはり滑るようにして受け流されていく。
「げっ!?」
「オルフェ、もっと上空に! ミョルニルッ!」
キコリの斧が再び電撃を纏って。スノウアリゲーターのうちの1体が寸前までオルフェが居た場所に向けて大口を開けてジャンプする。
だがその時にはもうオルフェは更に高い位置を飛んでいて。
見えたその腹に、キコリは帯電する斧を叩き込む。
「ギイイアアアアアアア!?」
突き刺さった斧は傷口から電撃を流し込み、スノウアリゲーターが黒焦げになる。
だが同時に2体のスノウアリゲーターがキコリへと飛び掛かって……寸前、オルフェが急降下しキコリを危険域から引きずり出す。
「助かる!」
「うっさい! どうすんのよアレ!」
「腹は柔らかい! あと身体の中は普通に効く!」
「そりゃあ大発見ね! あと2回同じ手が効いたら勝てるわよ!」
確かに、スノウアリゲーターたちは仲間の死で警戒したのか、キコリ達を睨みながらゆっくりと周囲を歩いている。
今のところこちらに襲い掛かってくる様子はないが、だからといって楽観視できるとも思えなかった。
「諦めた……ってわけじゃないよな」
「どうブッ殺すか算段つけてるだけでしょ」
「だよなあ……」
つまり、どちらかが死ぬまでこの状況は終わらない。
ならばこちらもスノウアリゲーターたちを殺す算段を整えないといけないが……。
「オルフェ。さっきのフレイムスフィアとかいう魔法でなんとか出来ないか?」
「たぶん無理。ファイアアローだって弱いわけじゃないのよ」
「……賭けに出られる状況じゃあない、か」
「そういうこと」
相手の持っている能力を推察することは簡単だ。
物理攻撃と魔法攻撃に滅法強い。
ただそれだけのことで、それだけであるが故に状況は酷く悪い。
こちらが勝つ方法は2つ。腹か、体内に攻撃を叩き込むこと。
それだけだが……ワニ相手にどうやればそんな真似が出来るのか、ちっとも浮かんでこない。
考えて、キコリはハッとする。
「オルフェ!」
「何よ」
「フレイムスフィアだ! アイツ等の足元に向けて撃てば……!」
「はあ? ああ、なるほどね」
凶悪に笑うオルフェは、それだけで理解してくれたようだった。
「まずは俺が注意を引く。その隙に頼む」
「おっけー」
息を、思いきり吸い込む。
このレベルのモンスター相手であれば、威圧で動きを止めるなどありえないだろうと思う。
だが……こちらを警戒している今であれば、注意を引くことくらいは出来るはず。
だから、キコリはありったけの殺意を籠める。
お前達を絶対に殺してやると。そんな意思を籠めて、叫ぶ。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼」
ウォークライ。
全力の殺意を籠めたウォークライは、確かにスノウアリゲーターたちの注意をキコリへと引き付けた。
だからこそ、スノウアリゲーターたちは気付かなかった。
高速でキコリの近くから飛び去った、小さな妖精に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます