今日はもう無茶しないように
「キコリ!」
「うわっ!」
そして階段を下りていくと、カウンターにいたアリアがキコリに向かって突進するように抱き着いてくる。
「よかった、無事で!」
「はい。戻りました」
「ええ、お帰りなさい」
アリアはキコリをギュッと抱きしめると、少し離れてキコリを上から下までじっと見る。
「色々聞きたいことはありますけど……まず、その頭の上の妖精は?」
「オルフェです。色々あって、今は協力関係です」
「あのさー、キコリ」
「え?」
突然声をあげたオルフェにキコリが疑問符を浮かべると、オルフェはそのままキコリの近くに飛んでくる。
「コイツ、キコリの何?」
「何って……えーっと」
改めて聞かれると、どういう関係なのだろう。
恩人、同居人、家族のような人。
どれも正しい気がするし、どれも正確ではない気がする。
「まあ、家族みたいな人……かな」
「ふーん」
「何かあるのか?」
「キコリとは違うけど、微妙に人間の域はみ出てるなって思っただけ。人間だけど普通の人間じゃないな、みたいな」
「あー……」
バーサーカーだからだろうか、とキコリは思う。
今は魔力異常で全力で戦えないが、もし全力ならキコリよりずっと強いはずだ。
と、そこまで考えてキコリは思う。
アリアの魔力異常……もしかしたら、オルフェなら治せるのではないだろうか?
「オルフェ。もしかしてアリアさんの身体治せたりしないか?」
「無理」
「そうなのか?」
人間には無理でも妖精なら、と思ったのだが……やはり無理なのかとキコリは落胆する。
「どういう症状かは分かるわよ。でもソレ、一から作り直さないとどうしようもない類のやつだから。ユグドラシルの葉くらいないと無理なんじゃない?」
「ユグドラシル……」
逆に言えば、それさえあれば治るということだ。
大分希望が見えてきたとキコリは思う。
「ありがとう、オルフェ」
「別にお礼言われることしてないわよ」
「それでもありがとう」
オルフェは黙ってそっぽを向いてしまうが、キコリは本当にありがたいと思っている。
「なんだか随分仲がいいですね?」
「はい、仲良しです」
「アンタねえ……調子乗ってんじゃないわよ」
オルフェが睨みつけてくるのを受け流し、キコリは笑う。
「うーん……まあ、仲が良いのはいいことですよね」
「別に良くないわよ」
「まあ、その辺りは私には分かりませんが……それでキコリ、その装備は?」
「ミミックの死骸から出ました」
本日二度目の嘘だが、もうこのまま貫き通すしかない。
「まるでドラゴンみたいな鎧……かなり良いものなのは間違いないでしょうね」
「はい。ワイバーンとの戦いでもかなり助けられました」
「ワイバーン」
その単語を呟くと、アリアはキコリの身体を鎧の上からではあるがペタペタと触り始める。
「……怪我は、ないんですね?」
「大丈夫です」
「なら、いいんですが……ワイバーンですか。まさか、そんなものが出てくるなんて……」
心配するアリアに「でも大丈夫でしたから」と何度も繰り返し……「今日はもう無茶しないように」と言い含められ、キコリとオルフェはアリアの家へと向かっていく。
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