キコリ、というのは
結局押し切られたキコリだが、やはり心配だった。
オルフェが防衛都市に魔法を叩き込まないかというのもそうだが「友好的に見える妖精」というものがもたらす影響が想像できなかったのだ。
だから砦跡を抜けて、森に入って、その辺りでオルフェにもう1度聞いてみる事にした。
「……なあ、オルフェ」
「なによ。そんなにあたしが嫌なの」
「そうじゃなくてだな」
「嫌かどうかを聞いてんのよ」
「嫌じゃないよ」
「ならいいじゃない」
はあー……と、キコリは大きく溜息をつく。
そうではない。そうではないのだ。
「そもそも、なんで俺についてこようと思ったんだ?」
「決まってるでしょ。ワイバーンどもをブッ殺すためよ」
「俺じゃ勝てないぞ?」
「すぐにやれとは言わないわよ。でも他のモンスターどもと交渉するよりはマシでしょ」
「……そんなもんかな」
キコリの兜の上に乗っているオルフェをそのままに、キコリは英雄門へと近づき……衛兵がギョッとしたように槍を構える。
「待て! 頭の上! 気付いてないのか!?」
「友好的な妖精です! 大丈夫です!」
笛を構え吹き鳴らす準備をしている衛兵に、キコリは慌てたように叫ぶ。
やはりこうなったかという感じではあるが、だからといって連れてきた責任は当然ある。
「友好的な妖精!? 何を馬鹿な……!」
「この時点で攻撃してないです! そうでしょう!?」
そんなキコリの叫びに、衛兵は多少迷いながらではあるが槍の穂先を下におろす。
「……まあ、確かにそうだが……そのまま待機するように。流石に独断で入れられん」
「はい」
衛兵が門の内側に向かって何か叫ぶと、衛兵が1人何処かへと走っていく。
「アンタって意外と信用ないの?」
「俺の問題かなあ、これ……」
そんな事を言い合っていると、衛兵に連れられて何か偉そうな服を着た数人とその護衛らしき人間が向かってくるのが見えた。
正直、誰だか分からない。
彼等は兜に妖精を乗せたキコリを見ると驚いたように声をあげ、やがて護衛らしき1人が走ってくる。
「友好的な妖精とやらを連れてきたのはお前か」
「はい」
「……」
「何よ」
護衛はキコリの頭の上に視線を向けると、オルフェに気圧され後退る。
「少し待て」
護衛が振り向き頷くと、偉そうな服の人達がキコリの近くへと寄ってくる。
「なんと……」
「本当に攻撃してこないぞ」
「まさかそんな」
「あのさー」
その様子に、オルフェがイライラしたように声をあげる。
「品定めされるの好きじゃないのよね。入っていいの? ダメなの?」
「申し訳ないが、目的を教えてほしい。妖精は人間と敵対的というのが常識だった」
「こいつと……キコリと組んだってだけの話よ。これでいい?」
偉そうな服の人達は顔を見合わせると、その内の1人がキコリに振り向く。
「キコリ、というのは君の名前か?」
「はい。キコリです」
「そうか……うむ。私はこのニールゲンの統括長、ハイデルン・セイムズだ。一応セノン王国からは『防衛伯』の地位を授かっている」
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