上手くいかないな

「……上手くいかないな」

「上手くいったことあるの?」

「……あんまりない」


 大笑いするオルフェだが、キコリとしては本当に困りものだ。

 とりあえず、まずは帰る必要がある、が。


「出来たー!」


 壁の向こうから、そんな声が聞こえてくる。

 あれから然程時間はたっていないはずだが、と驚くキコリが土の壁に目を向けると、その向こう側から3体の妖精が飛んでくる。


「じゃじゃーん!」

「お披露目だよー!」

「ねー!」


 土の壁が崩れ、その向こうから人影が見える。

 いや、人影ではない。それは……。


「鎧と、斧?」


 そう、それはキコリのサイズに合わせた武具を土の人形に着せたものだった。

 まず、胸部鎧に肩鎧。なんだか少しばかり凶悪なデザインになっているが、魔石らしきものがあしらわれているのは元のバーサークメイルを参考にしたのだろうか?

 そして腕鎧にガントレット、腰鎧と脚鎧。そこまではいい。

 

「この兜って……」

「ドラゴン!」

「ぽいもの!」

「ねー!」


 そう、それはキコリが見ても「ドラゴン」だと分かるような意匠の兜があった。

 前方はガッツリ空いていて、視界を塞ぐようなことはなさそうだが……。

 そして、片手用の斧が2本。

 元のキコリの装備を参考にしたのだろう、こんな短時間で出来たとは思えないようなものだ。

 なの、だが。なんだか、妙な威圧を感じる気がする。


「凄いな……ありがとう」

「でしょー?」

「やっぱ人間とはレベルが違うよねー」

「ねー」

「で、なんというか本当に凄そうなんだが……何か能力があったりするのか?」

「魔力吸収でしょ?」

「そうだよ」

「ねー」


 まあ、凄いにこしたことはない。

 キコリは鎧に近づき、触れる。

 ……特に何も起こらない。

 ホッとして、キコリは鎧を身に着けていく。

 そして最後に斧を……持つと、シュルッとガントレットに斧が吸い込まれていく。


「え!?」

「やったー、ビックリした!」

「そこ苦労したもんねー!」

「ねー!」

 

 イエーイ、と手を叩きあう妖精たちだが、キコリとしては説明してほしい。

 どうしたものかとガントレットを軽く叩いたりしてみるが、斧は出てこない。

 そうすると、鎧をじっと見ていたオルフェが「そこね」と指をさす。


「え? 何処だよ?」

「んーと……たぶん、こうね。手を握ってー」

「あ、ああ」

「魔力を手に流すことを意識する」

「……付与魔法じゃダメだよな?」

「ダメに決まってんでしょ」

「ダメかぁ……」


 魔力を流すと言われても、どうすればいいのか。

 

(……付与魔法の時の感覚を応用すればいけるか?)


 あの全身に力が流れ込むような感覚を、手先だけに。

 深呼吸して、手先に意識を集中すると……手先に何かが流れていくのが分かる。

 そうすると、手元でバチッと何かがスパークして。

 キコリの両手には、先程消えた斧が握られていた。

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