大変よろしいです
「さて! ではキコリも実際に使ってみましょうか」
「はい!」
イメージは、出来る。
今、キコリは実際にミョルニルの発動を見たからだ。
あれだけの説明も受けて……それで出来ないなどとは、キコリは言わない。
だから、マジックアックスを構えてキコリはイメージする。
斧に集う雷を。
自分に戻ってくる斧を。
イメージする。アリアが見せてくれた、あの姿を。
「ミョルニル!」
カッ、と。アリアのそれに比べると大分弱いが、放電する斧がキコリの手の中で完成する。
それは単純にキコリとアリアの魔力の差によるものだ。
だが、それでも……確かにコレはミョルニルだ。
「おおおおりゃあああああ!」
投げる。キコリの投擲した斧は木に突き刺さり、見事砕くと共に放電し、そのままキコリの手元に戻ってくる。
木は……多少焦げただけのようだが、これはもう仕方がない。
「うんうん、しっかり発動出来てますね!」
「アリアさんが実演してくれたおかげです」
「そう言って貰えると嬉しいですね」
アリアは笑いながら、キコリの砕いた木を検分する。
「……キコリはやっぱり男の子ですね。パワーがあります」
「そうですか?」
「ええ。しっかり木を砕いています。たぶん鍛えれば、砕くんじゃなくて切り裂くことも可能でしょうね」
それが出来るのであれば、かなり凄いだろうとキコリは思う。
この魔法……ミョルニルの本質は威力が大きく強化されることにある。
ならば、キコリ自身を鍛える事で威力の上昇が見込めるのだ。
「ふふ、すぐでも鍛えたいって顔ですけど。ダメですよ? 私の見てるところでは無茶なんてさせてあげませんから」
「うっ……分かってます」
「死の淵にこそ成長の鍵あり、とは言いますけど。そんなものは普段本気になれない人の言い訳です。それを成功体験にする人は、歪んだ成長しかできなくなっちゃうんですから」
「気をつけます」
「うん、大変よろしいです!」
ニコニコと微笑むアリアにキコリも笑い……そして、ふと思い出したようにキコリは「そういえば」と口にする。
「ビッグゴブリンを倒したのに、モンスターの姿がありませんけど……どうなってるんでしょうね?」
「うーん……」
アリアは周囲を見回すと「分かりません」と肩をすくめる。
「まだ弱いモンスターが様子を見ているのかもしれませんし、奥に進んでいる調査隊が全滅させているのかもしれません。どのみち……今は何とも言えませんね。あと2、3日すれば何かしら判断できるとは思いますけど」
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