凄い高そうですけど

「で、今日は何しに来た……って聞くのは無粋だな。何相手にしたんだ?」

「異常進化体のゴブリンです」

「なるほどな。そのくらいで済んでよかったな」


 異常進化体、と聞いて全てを察したらしく、ミルグはキコリの鎧の傷を撫でる。


「大した一撃だ。お前、これがあと少しズレてたら鎧ごと真っ二つだったな」

「……やっぱりそうですか?」

「ああ。ま、その胸部鎧はもうダメだな。新しいの買え。つーかもっと良いの買うか?」

「そうしたいな、とは思ってます」

「よし、じゃあ使える金をそこに出せ。それで見繕ってやる」


 キコリが財布を丸ごと出すと、ミルグは「ほう」と笑う。


「中々豪気じゃねえか」

「死にかけましたから」

「だろうな。おい、お前はどうすんだ」

「僕ですか? 僕は……うーん。胸部鎧で良いのがあれば。予算は5万イエン以内で」

「おう、分かった」


 そう言うと、ミルグはカウンターにピカピカの白い胸部鎧を置く。

 どうやらクーンのものであるらしく、小さい魔石が幾つもあしらわれている。


「お前神官だろ? 魔石の質は良くねえが、そっち系の威力増加の効果のあるやつを組み込んである。材質はホワイトメタル」

「え、これ5万ですか?」

「7万だ。予算5万だって抜かすってことは持ってるだろ。これ逃すとすぐ売れるぞ」

「う……確かに。でも、ホワイトメタルってだけで7万いくんじゃ」

「前の持ち主がすげえ死に方してな。その時着てたやつだ。血だまりの中で鎧には傷1つなかったっつー……」

「あ、そういうのなら平気なんで買います」

「よし」


 早速商談が纏まったらしいクーンが鎧を合わせているが、その間にもミルグは店の中の品を見て回り……やがてキコリを手招きする。


「おい、こっち来い」

「はい……って、ええ?」

「どうだ、こいつ」

「どうって……凄い高そうですけど」


 ミルグが指し示したのは、マネキンの着ている部分鎧のセットだ。

 黒い金属で出来ていると思われるその鎧は中々に頑丈そうではあるが……魔石らしきものも胸元を中心にあしらわれていて、物凄く高そうに見える。


「ブラックメタル製で、魔石もつけてある。値段は20万イエンだ」

「予算を軽くオーバーしてるんですが……」

「んなもんは知ってるよ。だがお前等、さっきの話からするに異常進化体を倒したんだろ?」

「はい。でもちょっと事情があって認めてもらえるか分からないんですが……」

「問題ねえよ。異常進化体関連の賞金は結構デケえんだ。貰ったらこいつを買いに来な。その時、こいつがどれだけ凄くて、どれだけお買い得か教えてやるよ」

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