俺たちで倒しました

 そうして何とかキコリとクーンは英雄門までビッグゴブリンの死体を運び切る。

 近づくソリに驚いていた衛兵たちだったが、英雄門の前までやってきたキコリたちに1人が駆け寄ってくる。


「これは……異常進化体か!?」

「はい、たぶんですけど」

「そっちのキコリの背負ってる斧が弾かれる表皮の硬さです。こういうのが奥に居るのでなければ間違いないかと」

「な、るほどな……」


 まじまじとビッグゴブリンの死体を見ていた衛兵は、その胸元にかかっているドクロのネックレスに視線を向ける。


「これ……ゴブリンの頭骨か?」

「え、そうなんですか?」

「ああ。どっかのバカが売ってんの見たことある」


 どんな馬鹿だろうと思いつつも、怖くて聞けないのでキコリとクーンは顔を見合わせる。

 どう考えても、マトモな店じゃない。


「ふーん……異常にデカいゴブリンが、ゴブリンの頭骨のネックレスを、ね……間違いなく異常進化体だな」

「そういうものなんですか?」

「ああ。普通は同族殺しなんぞしねえよ。それをするってことは、どっかプッツンいってるってことさ」


 そこまで言って、衛兵は綺麗なビッグゴブリンの死体のおかしさに気付いて「んん?」と声をあげる。


「……そういやこの死体、異常に綺麗だな。どうやって倒したんだ?」

「俺の魔法です。奥の手ですけど」

「そうか。なら詳しくは聞かん」

「いいんですか?」

「マナーだからな。とはいえ、そういう特殊なやり方は今後何かあった時に疑われる材料にもなるぞ。気をつけとけ」

「……はい」


 衛兵の言いたいことはキコリには分かっている。

 傷1つ無い綺麗な死体が出た時に、「そういう魔法」を使えるキコリが疑われかねないということだ。

 何かあった時に使うのは躊躇わないが……使いどころは充分に考えたほうがいいだろう。


「とりあえず、そうだな。こんなもん持ってお前等2人が町中を練り歩くのもな……冒険者ギルドだよな?」

「はい」

「ならあっちから来させよう。ちょっと待っとけ」

「え? いいんですか?」

「いいんだよ。行く途中で余計なトラブル引き込みたいってんなら別だがな」


 そう言われてしまえば、キコリもクーンも「自分で持っていく」とは口が裂けても言えない。

 ……それに何より、もう疲れたのだ。

 冒険者ギルドから人が来てどうにかしてくれるというのであれば、それがいいに決まっている。

 衛兵の1人が冒険者ギルドへと走っていき……やがて、数人の男性職員を連れて戻ってくる。


「こ、これは……! 君たちが見つけたんですか!?」

「俺たちで倒しました」

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