安くて優秀ですけど
「俺には分からないんですけど……何かマズイ感じですかね」
「私も専門外だからあんまり言えませんけど、一言で言えばボロいですよね。あとそもそも戦闘用じゃないですし」
「まあ、それは……」
薪割り用なのだから仕方ないといえば仕方ない。
薪ではなくゴブリンを割っているが、本来はそういう用途のものではない。
おまけにキコリが貰った時点で相当使い古していたものではある。
とはいえ……だ。
「けど、何を買えばいいものか……」
「ちなみにご予算は?」
「宿代1000を残せば20000ですね」
「ふむ」
アリアは近くを歩き回ると、剣を1本持ち上げてみせる。
「剣……はまあ、キコリにはあってないでしょうね」
「使ったことないですからね」
「一番人気の武器ではあるんですけどね」
言いながらアリアが鞘から剣を抜く。
肉厚で刃が僅かに湾曲したその剣は、随分と威力のありそうな形をしている。
「まあ、こういうのはある程度身体能力か技量がある人が使うものですからね」
ダメですね、と言って鞘に納める。
「とすると、やっぱり斧ですか」
「その方が使い慣れてはいますね」
「ふーむ」
斧といっても、色々並んでいる。
キコリもアリアの隣で斧を見るが……片手斧に両手斧、大きい斧に小さい斧まで様々だ。
やはり大きい斧ほど強そうには見えるが、あまり大きい斧はキコリが扱えそうにない。
「そうですね……使い勝手が似てるのは片刃のバトルアクスでしょうねえ」
「結構重いですね」
「そりゃまあ、総鉄製ですから」
試しに振ってみるが、今までの斧よりは大きいし重いものの、使えそうだと直感的に思う。
しかも握り手がついていて、今持っている斧よりも遥かに使いやすそうだ。
「……これ、お幾らですか?」
「7000イエンですよ」
「買います」
即決で買い、キコリは斧を背負う。結果として斧を2本背負ってしまうことになったが……古い斧をミルグは引き取ってくれるだろうか、と。そんな事を考える。
「キコリはこの後、どうするんですか?」
「もう1度ミルグさんのところに行って、古い斧を引き取ってもらおうかと。あとは前回買えなかったチェインメイルについても相談しようかと」
「チェインメイルですかあ……」
「何か問題ありますか?」
「いえ、安くて優秀ですけど……あれってメンテ大変だし刺突にはほぼ意味ないんですよね」
「え、そうなんですか?」
「そうなんですよ。角兎の突進でも普通に貫かれますからね、チェインメイル」
ましてやオーク相手ならチェインメイルなんて紙みたいなもんです、と。
そう言うアリアにキコリは「買うのやめようかな……」と、そんな事を思っていた。
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