小説家になりたい

@santa703

第1話

私は小説家になりたかった。ということは未だ小説家になっていないということである。いつ頃から小説家になりたいと思っていたのかと言えば、大学受験を目指していた高校生だったと思うけれど、文章を書くのは嫌いではなく、国語の成績は良かった。受験勉強の合間に小説を意識して友人のある日の事を書き綴り、こんなのを書いて見たと、クラブ活動の同学年の仲間3人に見せた事がある。才能があると言ってくれたし、モデルになった本人は、実際に俺の名前を使って良かったのにと言った。だが結局それだけで終わってしまった。けれど、いまだに小説家になろうと思っている。手元にあった本を何気なく広げたら、「なにを目指しているのか、叶えられなくてもよいさ、夢をおいかけていればたのしいから」という文章が大きな文字で見開きに書かれていた。あるお医者さんが健康に過ごすコツを書いてある本だった。そして、どうすれば小説家になれるのかと考えたら、小説を投稿することができるサイトを見つけたのである。このチャンスを逃すわけにはいかない。ということで、文章を綴る。

 小説家になりたいと考えた私がまず取り掛かったのはできる限り読むということだった。それはほとんどがタイトルで選ばれた。特に小説の書き方を学ぼうということは考えなかった。芥川賞受賞作は必ず読んでいたのは、芥川賞作家にある意味で憧れていたということだろう。それから日記を書くようにした。文章を書くトレーニングと考えてもいた。そして独学で小説家になれると考えていた。

 大学受験は失敗し、一年間いわゆる浪人生活を送った。そして就職試験を受けた。大学に行けば小説家になれるとは、全く思っていなかった。就職試験は合格し、就職した。すると、仕事をするためには多くの研修や訓練を受けなければならなかった。従って小説を書くという時間はその頃には無かった。それでも小説家になりたいという気持ちは変わっていない。生計を立てるためには収入が無ければ、成り立たない訳で、学生時代に小説家と認められる作品が有れば、生活のために働くということは必要のないことかも知れない。しかしながら多くの小説家と言われる人々は、なんらか別の職業を有してる人が多いように思う。だから職に就いたからといって小説家になれないということでは無い。と言っても小説を書くということは時間と労力が必要なので、仕事の合間にということはわたしにとって難しいことだった。そして結婚した。

 新しい生活が始まり、自分だけのことを考えていては生活は成り立たない。ただし私は小説家になりたいと考えていることは話をした。相変わらず月に数冊の小説を読むということは続けていた。そして気に入った部分を抜き書きしたり感想をノートに記録した。あくまで自分が小説を書くということの準備だと考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る