庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしてる【書籍化&漫画化】
ダイスケ
第1章:個人事業編
第1話 ある日、庭に穴ができた
「あれ、こんなとこに穴なんてあったかな」
台風一過、散らかった庭を掃除していた
「参ったなあ…不動産屋のやつ適当な土地を売りつけやがって…」
思わず不満がこぼれた。
大樹(ヒロキ)が30代でブラック商社に見切りをつけて退職、脱サラして地元でリサイクルショップを開業して2年になる。
軽トラとスーパーカブをお供に地元回りをしてリサイクル品を回収、修理する仕事は性に合っていたがいかんせん利益が薄い。
地盤改良が必要となると、幾ら費用がかかるか知れたものではない。
幸いなことに物置も兼ねた庭は広く、自宅兼事務所からも距離がある。
「とりあえずゴミでも放り込んでおくか」
庭掃除で出た枝や木の葉のゴミを穴に放り込んで、ヒロキはいつもの仕事に戻った。
台風後はリサイクル業者にとっては、ある種稼ぎ時ではある。
軽トラのエンジンをかけると、今日も相棒は元気よく応えてくれた。
★ ★ ★ ★ ★
「さあて、今日も働くかな…っと、あれ?枝はどこ行った?」
翌朝、ヒロキは庭の具合を確かめようと穴を見ると、異常を発見した。
昨日ゴミで埋めたはずの穴が、また復活しているのだ。
「まずいな…わりと深い穴なのか?」
地下水で土壌が流れて地下には巨大な穴が開いている、という海外ニュースを見たことがある。
調査するのも危ない。
「とりあえず、もう少しゴミを捨ててみるか」
ヒロキは事務所に溜まっているシュレッダー済の書類や、不要な可燃ごみを捨ててみることにした。
あまり儲かっていないリサイクル事業者にとって、事業ゴミに分類される書類を捨てることは結構な負担なのである。
どうせ今より状況が悪くなることはない。
土壌改良を怠った不動産屋が悪いのだ。
と、自己正当化しつつヒロキは事務所から40リットル袋30袋にもなる書類のゴミを穴に捨てた。
そして簡単にシャベルで土をかぶせておいた。
★ ★ ★ ★ ★
「いやいや。さすがにおかしいでしょ…」
翌朝、埋めたはずの穴はぽっかりとまるで何事もなかったかのように、その姿を現していた。
「誰かが持って行ったとか?何かの悪戯?」
ヒロキは周囲の茂みや庭のどこかに隠しカメラがないか、探して回った。
昨今は迷惑系動画撮影者による悪戯が社会問題になっている。
ゴミを持って行くのはともかく、どこか別の場所で事務所のゴミをまき散らされたりしたら、責任や賠償問題になるかもしれない。
「参ったなあ…監視カメラでもつけてみるか?」
最近は数千円のカメラでも夜間赤外線監視が可能になっている。
ヒロキはリサイクル品で買い取ったカメラとノートPCを連携させてセットした上で、事務所の残りゴミを穴に捨てて埋めた。
もしも犯人がいれば撮影できるだろう。
★ ★ ★ ★ ★
翌日もゴミは消えていた。
依然として穴はそこにあった。
「さあて、犯人は映っているかな…」
毎夜のように敷地に誰かが無断侵入しているとしたら、男の一人暮らしといえどもさすがに気持ちが悪い。
「おっと…映った映った…ん?ん―――ッ?」
監視カメラには何も映っていなかった。
穴は、ただゴミを静かに飲み込んで行ったのだ。
「地盤が変動しているとか、流砂とか…?」
何となく普通でないことが起きているような気はしたが、犯人がいないのであれば特に支障はない。
ヒロキはリサイクル業の方に戻ることにした。
事業ゴミの捨て場が出来て経費節約にはなったが、売上を立てなければ零細リサイクル業は生きていけないのだ。
――――――――――――
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