悪道──残酷小児の悪路──

黒煙草

少年A

生まれは雌の股から

育ちはベランダ

食い物はゴミ

学はないから、調べて覚えた




「おい、このくせぇガキ何とかしろ」

「うっさいわね……さっさと消えろ!!」


僕のガキの頃はよく物を投げられた

額に傷跡が残っても、ものが飛んでくる日常

住処のベランダだけが、僕の住んでいい場所


「やっと行ったか」

「ねーぇ、これから外行こー」

「バカかてめえ、俺もだけどよぉ……サツにバレたら面倒なのはてめぇの方だろ」


2度、役所のお偉いさんが来た


僕は嘘をついて、『何も無かったよ』と返事をして、帰ってもらった


『また、来るよ』って言って、二度と来てない


正義の味方なんて、この世にはいない


「チッ、女なら使い道はあったのに……」

「ハッ、男でも好きなやついるんじゃねぇか?」

「私に金が入らなきゃ意味ないんだよ!」

「金金うるせぇなぁ、じゃあガキ連れて……そうだな、ヒバリー店に来いよ」

「んー?聞かない店だね。何があんの?」

「いってからのお楽しみってな」


そうして僕は、ベランダだけが世界の、外に出た


初めて見た外の景色は灰色だった


空も

大地も

雲も

人も


「ここだよ」

「へぇ、でかい店ね」

「アポとんの面倒だったんだせぇ、さぁ来な」


白一色の眩しかったその店は、僕と女を呑み込んだ







「やめてぇぇぇえ!!た、たす、助けてよぉぉぉ!!」

「痛い!!痛い痛い痛い!!」


店の中はミンチ工場だった


指1本10万円、女の借金は150万円

僕の片腕と、女の指5本で、借金は消えた


━━━━━━━━



まだ、片腕が残っている気がした


「……情けねぇ、ガキの頃の夢見るなんざ」


僕は片腕を失い、路頭をさ迷っていた


髪は白髪に

顔は世間の言うイケメンに

身体はいっぱい食べて、大きくなった

でも、生活は裏路地だ


「……腹、減ったな」


僕は飢えていた

表に出れば、沢山の食べ物がある


「女でも捕まえて、喰らうか」


僕は、悪と呼ばれる殺し屋だ


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