第十二回 丸から四角。新たな眼鏡。


 ――丸くて大きかった眼鏡は、あの時に……曲がって割れて壊れていた。



 女の子の……傷は消えないように、その眼鏡も二度と元には戻らないの。


 でもね、心の火照りと共に……


 私は新たなスタートを、その心に決めたの。その形となったものが、今の眼鏡。今日からデビューに至った。黒縁の四角い眼鏡。女の子は眼鏡で化けるそうなの。と、その様なことを誰が言ったの? それはそれは遠い記憶の中? 将又つい最近なのかな?


 それについては思い出せないのだけど、もう近づいているの、迫る学芸会のその日その時。修正点の多い新解釈の白雪姫だけど、皆が協力してくれた。


 時折、落ち込むことはあるけど、その度に……


「ドンマイ」「いくらでも修正していいから、遠慮なく言ってね」「天気てんきちゃんの納得いくように何回でもトライだよ。僕を天気ちゃんの思う白雪姫にして。妥協は駄目だよ」


 と、励ましてくれるの。特に白雪姫役の千佳ちかは、私の思う白雪姫を追及してくるの。


 男の子三人は、特に……


出雲いずも、王妃と白雪姫の関係だけど、星野ほしの姉妹を使うなら、そのまま双子という設定もありだと思うんだ。白雪姫は王妃の妹。王妃の座を狙われていると誤解して、殺害しようとしたところ、七人の小人……ならぬ、三匹の男児が守ろうとするが多勢に無勢で……」


 と、そんな具合に意見をしてくる。


 とくに三人の中の、千林せんばやし君。私が復活した日に、頬を腫らしていた。……本人は何も言わなかったけど、そのことについて。私のお父さんに謝った際に殴られていたそうだ。


 見た感じでは、激しかったと思われる傷痕……


 お父さんを止めたのは、早坂はやさか先生だったようだ。……実は、梨花りかからそう聞いたの。


 私の代わりにクラスを纏めてつつ、学芸会の稽古を進めていた梨花を、そっと助けていたのは彼だったそうなの。「文句があるなら俺が聞いてやるから、星野に何もかも押し付けるのもいい加減にしろよ」と、啖呵を切ったこともあったそうなの……



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