第九回 今一度、執筆した内容とは。
――それは鏡の中で行われる世界。私は私のもう一つの顔。……裏と表の顔。
もしかするなら、新しい王妃は白雪姫の裏側だったと、そう解釈するのなら、それを演じることができるのは、あの二人に於いて他にはないと思うの。
身が震える程、
狂おしくもなったけど、
病室の中でも、私は執筆した。書くと読むの自分のアカウントが使えないままで、それ以前にネットも繋がらない環境の中だけれども、弾くキーボード。そして決定版ともなる新解釈の白雪姫も仕上がった。……ザ・脚本に反映もした。変更点も多数あるけど、
「天気ちゃんが元気になるまで、劇としても仕上げてみせるから」
と、梨花ちゃんは引き受けてくれた。私のお見舞いで訪れる中だけれども。千佳には内緒で、このやり取りを始めていたのだ。梨花と二人きりで、マンツーマンで。
新解釈の王妃……
そして託した。私の構想を彼女に。
この目で、私自身が私の構想を見ることを楽しみに、暫しの眠りに就くの。自分では判らない自分の声。委縮した声は人の耳に届かないから。だからこその一人芝居……つまりは自身との会話だ。私はきっと、人との会話のスピードに合わせられないの。
皆のテンポが速くて、追いつかないから……
喋るのが下手だと思っていたこれまでだけど、実はこれが原因だったから。でも、あの子だけは違っていたの。千佳だけは。僕のお喋りに、ついてきてくれる。実は千佳も同じだったの。私のことを、理解してくれた。……それだけではなくお友達でいてくれた。
そして千佳から広がった、お友達の輪。その繋がりは、私に居場所を与えてくれた。
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