魔王軍幹部室にて
「イビル様、魔王様を召喚する準備は整いつつあります」
イビルと呼ばれた魔族はそれに答える。
「よろしい。現在召喚の儀の邪魔となっている物はあるか?」
「いえ、何一つありません。全ては順調に……」
イビルは眼孔を鋭く部下らしき魔族を見据える。
「本当かね? 本当ならば構わないのだが……もし『隠しごと』があった場合は君の処遇も考えねばならんぞ?」
ぞくりとその部下は震え上がって口をわななかせながら声を絞り出す。
「以前疫病をばらまいたときに一人の賢者がその邪魔をしまして……本来ほどの影響が出ませんでした。し……しかし! 何の問題にもなりませぬ! 我々の準備は全て問題無く進んでいま……」
その言葉を言い切る前に刃が部下の魔族の髭を切り裂いた。
「私はね、何の問題も無いかと聞いたのだよ? 問題があるようにしか思えないがね? それとも君は予測不可能なことに対し『多分』『きっと』『おそらく』大丈夫だなどと言う気かね?」
「い! いえ! 大至急対応いたします!」
「よろしい、魔王様召喚の邪魔となる相手は全て排除するように、懸念のひとかけらでもあるならばそれを完全に潰すことだ。我々に失敗は許されないのだよ」
部下のネバネバした皮膚が凍るような迫力でイビルはそう言った。
「はい! 至急対応いたします! 全ては魔王様のために!」
「うむ。私は君に期待しているのだよ……非常に優秀な部下として……ね」
「は、はい! 必ずや期待に応えます!」
「よろしい、下がれ」
部下の魔族が部屋から去って行った後でイビルは独りごちた。
「そう、君たちには大きな期待をしているのだよ。魔王様への贄として……な」
クツクツと地獄の底から響くような笑い声は誰にも聞かれることがないのだった。
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