その3(2021/10/28)
……………‼
ピンポーン。
俺は、片手間にインターホンを押した。
「はーい!」
遠めの声が聞こえる。
「琴梨ちゃん、俺だ、
「え!? あ、了解です、ちょ、ちょっと待ってもらっていいですか…!?」
「…? わかった」
まあ、日曜日だし、外に出たくないくらいの部屋着でいるのも無理はないか。
「お待たせしました!」
「おう、大して長くも…ってなんだその格好!?」
小一時間…ということもなく、数十秒で姿をあらわした琴梨ちゃんは、
吸血鬼のコスプレをしていた。いわゆる、ハロウィンコス…
「…『無霊隊』関連ってそういう事じゃないんですか!?」
「いや、緊急事態って言ったろ…」
なかなか平和な子だなあ、我々には惜しい存在だ。
「…それじゃあ、不可思議事象案件ってことですか」
「ああ、そういうことになる。ハロウィーンというイベントの特性上、リアライザーを刺激する可能性があるらしくてな」
その仕組みを論理で理解するのは、なかなか難しい所ではあるが。
「聞き捨てならないわね」
——御咲ちゃんですら「無霊隊関連」を誤解していたらしい。どうなってんだ…ともかく今回の主戦力となるであろう怪力の和服少女の登場だ。
「すみません、もうちょっと待っててもらえませんか、着替え直します」
「…いや」
「…?」
「そのままでいいんじゃないか、…ほら、今日はそういう日だからさ」
期せずして、[SSR]寄垣 琴梨[ヴァンパイア]ピックアップを引いてしまった俺は、次に齋兜の家、もとい口釜邸へと向かった。他に、裟神家か倪祠仲くんの元を訪れても良かったのだが、今回女性キャラクターの登場が多すぎるのと、倪祠仲くんの普段からの居場所を知らないこの際、琴梨ちゃんには繋ちゃんと合流してもらう。…となると、ヴァンパイアと死神で民家を回る事になるのか。なんというか、いよいよだな。俺も空気を読んで、そろそろゾンビの仮装をするべきかもしれない。仮装自体、しているのは琴梨ちゃんだけなのだが。
「…断る、今は手が離せない。孤織のせいでな」
「何でお前が仮装をしているんだ!?」
すぐに「流れ」が出来てしまった。誰のせいだろう。
「だから、孤織のせいだと言っているだろ」
ゾンビの仮装、取られちゃったよ。今晩口釜邸で何が起こっていたのか大体の展開を察することは出来るが、しかし孤織さん、齋兜にアンデッドの仮装とはわかってるぜ。キョンシーでも良かったかもな。…っていうか何なんだこの流れ。
この流れでいくと粮香や倪祠仲くん、もっと行くと師匠のコスプレなんてのも想像が広がリングだな。…もっとも、誰も事前に話し合っていたわけではないはずなのだが。…いや、俺がハブられているだけという最悪の流れは、絶対にないはずだ!
「———だって鋏先輩、存在が気持ち悪いから常にコスプレしてるみたいなもんじゃないですかー…いやいやそんなはずはない!!そんなはずはなーい!!」
「どういう独り言なんだ…」
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