一休み、しませんか?
reine・rosemary
プロローグ
チリリン
可愛らしい音が店内へ響く。
「どなたかしら?」
そう声を上げたのは、店主の
高い声が小さな店内に響く。
「あら、またきたのね。」
一度覚えたら、二度と忘れることのないその記憶力は、客の間でも小さな話題となってる。
今日訪れたのは、遠い北東の戦地から戻ってきた獣人だ。どうやらライオンとの半獣人らしい。ほんのり血生臭くなる。人だろうか、それとも獣の血だろうか。区別がつかない。
「貴方、本当に戦争へ行っていたのね。びっくりしたわ。というか、一度お風呂へ入ってきたら?血で汚れていて不快に感じないの?」
戦地へ行ったことのない店主はそう疑問符を重ねる。
すると、獣人がやっと口を開いた。
「いえ、私は帰ってきたら一番に貴方に会いたかった。」
そう、優しそうな顔で言う。本当にこの獣人は戦争へ行ったものなのであろうか。この顔を見る限りはそうとは思えない。
だが、至る所に切り傷や、出血がある。
「まぁ、大変!貴方背中に大きな切り傷があるわ、今日はお茶なんて出してる場合じゃないわ・・・・」
そう言いながら彼女は店の奥へ行ったと思うと、彼女は体の割に合わない箱を持ってこちらへ戻ってきた。
「座ってちょうだい、まずは手当が先よ」
そう、少し怒ったトーンで言うと、獣人は明らかに落ち込んだ態度で、座った。
「何をしたらこんなに大きな傷ができたの?」
「・・・・後ろから剣を当てられたんだ・・・」
「だからなのね、」
彼女はそれ以上喋らなかった。もう、喋らせたくなかったのだろうか、それとも、喋りたくなかったのだろうか。
「さぁ、終わったわ。貴方は傷を癒してもらわなきゃ。」
そういうと、また店の奥へ入っていく店主。
店主が入っていってすぐ、お湯の沸く音がして、いい香りが店を漂う。
「今日は、オレンジピールよ。不安や心配事がある時に飲むといいものだけど、少しだけ魔法をかけてあるわ。」
そう、彼女もまた、魔法使いであったのだ。
そんな彼女の温かい日々、どうぞご覧あれ。
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