第8話楽しみは用事が済んでから




翌朝、ベットから起きた渚は寝る前の違和感が消えていないことに気づいた。


昨晩は気のせいかと思っていたのだけれど。


しかし、何が原因なのかまったくわからない。


まぁ今のところ生活に支障はないので放っておくことにしよう。



というわけでこれからみんなの朝ご飯を洋風で作っていくことにする。


コーンスープ、オムレツ、サラダ、食パンでいいかな。


まずはコーンスープから。


玉ねぎを微塵切りにし、オリーブオイルで炒めていく。シャキシャキ感が残ったままある程度炒めたら、そこに市販のコーンクリームと牛乳を一緒に投入する。


そこからは温まるまで火にかければ完成だ。追加でコーンを入れるのもよし。


同時進行でサラダも作っていく。


ぶっちゃけサラダは作るというか、盛り付けるだけというか...前日の千切りキャベツを盛る、レタスをちぎって盛る、きゅうりを薄切りにして盛る、トマトも切って盛る。


はい、完成。終わりです。


ドレッシングは市販のをお好みで。


サラダの後にオムレツも作り始める。


卵を数個ボウルに割り入れ、その中に生クリーム、塩胡椒を入れかき混ぜる。これで卵液は完成。


フライパンを火にかけ、オリーブオイルを多めに垂らす。


そこにバターも投入する。油を入れておくことでバターが焦げにくくなるのだととある料理本に載っていた。


フライパンが温まったら卵液を投入する。


フライパンを振りながら混ぜていき、ある程度卵が固まったら形を整えていく。


半分ほどひっくり返し折り畳むように重ねたら、つなぎ目が離れないようにくっつけるように焼いていく。


つなぎ目がくっついたらお皿に盛り付ける。そしてパセリを散らして完成だ。



...お皿にオムレツだけが乗っているのはが寂しく感じたのでソーセージを二本ずつ乗っけることにする。


熱したフライパンにソーセージを投入するとジュウゥゥゥゥ...と音がなる。適度に焼き色がついたらそのままオムレツの横に盛り付ける。



火にかけていたコーンスープも温まったので、スープ用のお皿によそい入れる。



朝ご飯の準備ができたところで香織がリビングへやってきた。朝ご飯の準備をしようとして起きてきたそうなのだが、少々遅かった。


「あれ?もしかして準備終わっちゃった?」


香織が眉を下げながら残念そうに聞いた。


準備自体はすでに終わっているが、紗良たちが起きてこないことには食べることもできない。


そう考えると渚は彼女らを起こしてもらうように香織へ頼んだ。


ご飯冷めちゃうもんね!というと香織はタタタッと彼女らが眠る部屋に駆けていった。




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全員を起きてくるとそのまま席につき、朝食を食べ始める。


オムレツとコーンスープはとても好評だった。コーンスープにいたっては全員がお代わりをするほどだ。


こちらとしては自分が作ったものをたくさん食べてくれるのはとても嬉しいのだけれど。


「渚ー今日は何時頃にログインする?」


食パンにイチゴジャムを塗りながら達也がきいてきた。


渚はコーンスープを口に運びながら今日の予定を思い出す。


「今日は3時頃になりそうだよ。色々やらなきゃいけないから」


掃除に洗濯、買い物、宿題...今日やらなきゃいけないことが盛り沢山なのだ。



「ふぅん、じゃあ先にログインして待ってるわ。」


「いや、家事手伝いなさいよ。」


渚の返事を聞いて達也が発した言葉に香織が即座にツッコミを入れる。


「母さんに言われていたでしょう?しばらく養ってもらうんだから手伝いしなさいって」


「そうだよ!渚にいちゃんの負担を少しでも減らしてあげなさいっていってたじゃん!!」


香織と皐月が信じられないといった表情で達也も見ながら捲し立てる。


「まさか、、、忘れてたわけじゃないよね?」


香織と皐月がジト目で達也を見つめる。達也はどっと額に汗を浮かべた。


「そっ!そそそそんなわけ...ない......だろ........??」


おそらく忘れていたのだろう。気まずくなった達也は彼女らの冷たい視線に耐えられず視線をそらす。


じっと達也を見つめていた香織たちはふと視線を外すと渚と紗良に向かって微笑んだ。


「そういうことだから渚くんに紗良ちゃん。遠慮なくこき使ってね!!!」


爽やかな笑顔でそう言い放った。



その言葉を聞いた渚と紗良は




頬を引き攣らせ、冷や汗を垂らしていた。


普通は人手が増えたことに喜ぶのだが、今回増えた人手はあまり喜ばしいものではなかった。


なぜならこの三人、絶望的なほど家事ができないからである。


家事ができるのであれば、そもそも夏休みの間に久里山家に滞在することなどなかった。


この三人には家事をさせてはいけない!!!


となればやることは必然的に...


「「(買い出しとか、配膳だよなぁ。)」」


渚と紗良は同時に同じことを考えていた。そして


「「うん、頼りにしてるよ」」


頬を引き攣らせながら同時にそういったのだった。




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達也と皐月を買い出しに行かせたところで渚と紗良は家事に取り掛かる。


皐月に買い物メモを渡し、達也を荷物持ちとして同行させた。


これであの二人の手伝いは大丈夫だろう。


問題は...



香織である。



当初は三人まとめて買い出しに行ってもらう予定だったが、香織が


「私は渚くんと紗良ちゃんの手伝いをするの。買い出しは二人で十分でしょう?」


と達也を説得?して自宅に待機することとなった。


香織はやる気十分でこちらの指示を待っている。


いかに何もやらせないで満足してもらうかが大事なところである。


下手に触らせると家が半壊する。しかしこの善意をおざなりにしてはいけない。



それを踏まえた上で渚が出した決断は







「家事を覚えるために渚くんの家事の様子を見学させてもらえるなんて!」


そういって渚の後ろについてまわる香織。まるで研修だね!と嬉しそうだ。



そう、見学である。


家事を覚えるためというらしい理由をつければ香織も納得するだろうと紗良と一緒に考えた結果である。


ただし一回目は見学にしてしまった以上、次回以降は監視のもと掃除をやってもらうことになる。おそらくこれは自分でやる以上に大変だろう。


まぁこれを機に彼女らには掃除を覚えてもらい、自宅でも家事をできるようになれば篠原両親も喜ぶことだろう。


久里山家が練習場所になるだけなのだ。





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10時30分頃には全ての家事を終えることができた。


香織に説明をしながら家事をしていたのだが、思いのほか早く終えることができた。


今までの家事が悲惨だったのは単純にやり方を知らなかっただけなのかもしれない。


明日以降は期待しても良さそうだ。


・・・・多分



先ほど買い出しに行っていた達也と皐月も帰ってきた。外はとても暑かったらしく、彼らはクーラーの効いた部屋でしきりに汗を拭っていた。



昼食は軽く食べられて涼しくなるものを準備しよう。





というわけで昼食はそうめんになりました。


これはほとんどやることがない。


麺を茹でる。薬味を準備する。茹で上がった麺を冷やす。


これで十分だ。


達也は一刻も早くログインがしたいのか急いで麺を口に運んでいく。



一足先に食事を終えた達也はログインするべく自分の部屋へ戻っていった。


香織や紗良、皐月も食事を終えると待ってました!とばかりにログインしに部屋へ向かっていった。







渚は昼食の片付けを終えると、テーブルにて宿題を始める。

各教科の先生から課題が出されるのでそれなりに量がある。


しかし渚にとってはりょうが多かろうが少なかろうが大した差ではない。


渚の長期休み、いつも最初の数日で宿題を全て終わらせるのだ。


そのあとは思い出作りに勤しむ。


あとはみんなの宿題を手伝う。


これが今までの流れであり、この夏休みもその予定である。





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2時間がたった。


全教科のうち4分の3ほどが終わった。ほとんどが集中してやっていれば終わるものだったので渚は宿題がほとんど終わったことによる爽快感に包まれていた。


あと残っているのは絵日記である。




・・・・・高校生にもなって絵日記を宿題として出すってなんやねん。


割と真面目にそう思ったことは全員が納得してくれるはず。



とりあえず今日はここまでだ。



課題を閉じると渚も自分の部屋へと戻っていった。


ベットに腰掛け、ヘッドセットをかぶって寝転がる。


ゆっくり目をとじ、ゲームを起動させた。





さぁ!僕もログインしよう!!





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