第33話 - クラスマッチ⑥
––––〝
瑞希を初め1年1組を翻弄した樋口凛の超能力である。
自身を除く最大5人までの人物を配送拠点として設定する。〝
しかし定期的にサイクスを共有すると、樋口の残留サイクスが色濃く残り、瑞希の〝目〟により看破されてしまう。樋口はこれに対してある対策を施していた。
(月島、あなたの目を封じるためにあえてハイタッチや皆んなで肩を組む回数を増やし、1回で共有する私のサイクス量を少なく済ませた。さらにチームメイトの残留サイクスもお互いに付着するためにカモフラージュの役割も果たす)
3年生は最後のクラスマッチということで、1回1回プレーが切れるごとにハイタッチや肩を組むなどして鼓舞する姿は自然に映るだろう。そして初めからこの
(最初に森と井上を目立たせたのは警戒心をより煽って精神力を削るため。〝応用的
さらに樋口の作戦は続く。
(ここまでしたのは私が配送場所などの設定をするとどうしても私の残留サイクスが色濃くなってしまうから。2人に意識を向けさせて、私は試合にあまり関与せずに目立たない位置で設定する。最後の2分間は私たち全員に意識が向いてしまったが、速度とパワーを最大にして決着をつける。これが私の戦略)
誤算は瑞希の成長。
樋口は事前に女バレの試合を見ており、〝
(さすがに最後は込められた私のサイクスが減ってボールスピードは減速してしまった。それでも1回1回ボールが配送されると私のサイクスが発動する。終盤は彼女がボールを避け続けたことでプレーが切れなかった。それで皆んなと触れ合う機会が減ってしまい、カモフラージュ効果が薄れて私の残留サイクスが浮き彫りになってしまった)
気がかりなのは試合終了後の瑞希の目である。
(気付かれたのかと思われるほどに鋭い眼光だった。女バスは決勝まで進むともう一度このチームと当たり、それには私も月島も参加している。また戦略を考えないと)
一方で準優勝に終わった1年1組は互いに健闘を讃え合う。
「皆んなお疲れ様! 惜しかったね!」
萌が声をかける。
「皆んなごめん……最初にアウト取られちゃったし、 〝
瑞希は元気なくチームメイトに謝罪する。女バレの準決勝敗退は単純に自分の訓練不足。訓練を積んでp-Phoneを使用しながらの消費を抑えることができるようになれば勝てる確信があった。しかし、今回は相手の策略に嵌り、完全に攻略された。
「月島さんのせいじゃないよ! 最後まで粘ってたの月島さんだしね!」
「ありがとう……」
クラスメイト全員が瑞希を慰め、労う。
(けれど誰の超能力なのか、そしてどんな超能力なのかは予想はついてる)
––––試合終了約1分前
(落ち着け! まず誰の超能力か特定する! おそらくボールへの影響を与える物質刺激型超能力者、又は少し可能性は低いけど身体に影響を与える身体刺激型超能力者。紫色、又は赤色のサイクスに注目しなきゃ)
物質刺激型超能力者は2番(樋口)と7番(二宮)、身体刺激型は5番(森)の3人。
––––〝
瑞希は3人に対して〝
––––試合終了約10秒前
(ボールが遅くなってきた……? いやそれよりも……)
瑞希は紫色の残留サイクスが全ての選手やボールに浮き彫りになったことを確認した。可能性は2番(樋口)か7番(二宮)の選手。瑞希の特殊技能である残留サイクスの見分けによって確定させる。
(2番の選手の残留サイクスだ)
––––現在
(おそらく物体を特定の場所へ正確に運ぶ
ではなぜ試合終了間際に浮き彫りになったのか?
(サイクスの触れ合いが多くて残留サイクスの濃さに差異がなくなってしまった可能性がある)
瑞希は相手チームの行動を思い返す。
(1プレー毎にハイタッチや肩を組むことが多かった。単純にチームの士気を高めるためだと思っていたけど私の目を警戒してカモフラージュするためだったら……? 有り得る! そして終盤、ボールスピードやパワーが落ちてきたことや他の選手も同じようにボールを正確に一定の速さで投げていたことから、定期的にボールや運ぶ場所に彼女のサイクスを込める必要があるんだ!)
瑞希は3年4組の女バスのメンバー表を眺める。
(2番の選手は確か……樋口さん……いた! おそらくまたこの
瑞希は決意を固め、明日に向けてコンディションを整えようと努めた。
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