第56話 祭りと馬車の件

 翌朝、ゆっくりと目覚めたら妻二人はまだスッポンポンのままで寝ていたので、俺はまた欲情してしまった。そして、女性喜ぶ左右の手指が仕事を始める。


「ん、トウジ。朝から、何て、ヤンッ、ダメ······」


「ああ、トウジ。そこはー、そこはー、ダメェー!」


 二人の妻もダメと言いながらも感じている。俺はもう我慢出来ずに熱く滾った息子をサヤに······


 朝から三回戦ずつやりました。リア充ですが、何か? ハッ、イカンイカン、最近は開き直るクセがついている。反省しなくては······


 俺は起きてからも大満足していた(しまった)ので、このままマッタリ過ごしても良いなぁと思っていたが、妻二人に促されて時間も、ちょうど良いから祭りに行く事に。

 家に無音をかけていたので気がつかなかったが、外に出ると村中が賑わっていた。そして、外に出た俺達三人に礼を言ってくる村人達。


「こんな美味しいお肉は初めて食べた」


「王侯貴族が食べるようなお肉を分けてくれて有り難う」


 等々、口々に礼を言われて照れてしまった。黒鬼ホースの肉って凄いんだな。改めてそう認識していたら、サヤが言う。


「私もマコトも食べた事が無いから楽しみだよ!」


 そこで俺達も急いで広場に行ってみると屋台が出来ていた。屋台の奥には昨日の調理器具を並べていた場所があり、そこで料理人達が一所懸命に料理をしていた。屋台は大盛況で、俺達は少し離れて見ていたが、アガンさんに見つかった。

 アガンさんは俺達を屋台の裏に案内してくれる。そこで料理を出してくれた。


「さあ、食べて下さい。トウジさん達のお陰で私達もこんなに美味しい料理を食べる事が出来ます」


 俺達は出された料理を食べてみる。旨い! 一口食べてその旨味が口中に広がる。その幸せを感じながら夢中で食べていたら、次の料理が届けられる。

 そして俺達三人は口福こうふくという言葉の意味を知った······ 暫くはこれ以上の料理には出会えないだろうと思う。俺は余りに感動したために、五人の料理人に無機で作った包丁をプレゼントした。柄は強暴ベアーの骨。刃は邪竜ヴォーレントの牙にミスリを混ぜた合金だ。専用の砥石として、邪竜ヴォーレントの骨を粉砕してからミスリを混ぜて四角に固めたモノも渡した。皆がその切れ味に感動してくれ、村に来たら是非とも店に来て食べて欲しいと言ってくれた。五人が五人ともそれぞれ店をやっていて、得意料理が違うので、いがみ合いもせず、むしろ互いに切磋琢磨しながら店をやっているそうだ。

 俺達三人は絶対に寄らせてもらうと約束した。それから借家に戻った俺は、いよいよ取り掛かる事にした。


 そう、馬車の製作だ。妻二人がゆったりした気分で乗れる最高の馬車を製作するぞ。何なら馬車の中でもムフフな事も······


 先ずは箱だ。妻二人が安全かつリラックス出来る空間を作らなくてはならない。

 そのためには頑丈さだけではダメだ。俺は素材を吟味して考える。よし、骨組みは邪竜ヴォーレントの骨で作って、皮を利用して囲もう。この世界の道幅を考えると横幅は一.五メートルが限界か······ 狭いな。どうする? 考えろ、俺。

 そこで新しく得たスキルを利用できるかもと思い付く。スキル名は無有むう。無いけど有る状態を作り出せる。無在むざいに似てるけど、少し違う。俺は取りあえず骨を利用して横幅一.五メートル、長さ二メートル、高さ二.三メートルの箱を作り、出入口を除いて、周りを邪竜ヴォーレントの皮で囲む。

 出来たら出入口の扉を作り、中に無有むうをかけた。すると、中には無い筈の空間が有る。成功だ。イメージで中の広さは十二畳位にしてあるが、妻二人の要望を聞いて、広げる必要があるなら広げよう。箱の底にはスプリングコイルを敷き詰めて、更に板をはった二重構造にしてある。衝撃をかなり逃がしてくれる筈だ。そして、車軸と車輪の製作に取り掛かる。

 この世界にはまだ無い軸受ベアリングを作った。これは外からは見えない様に蓋を作り隠す。車軸は鉄に強暴ベアーの骨粉を混ぜて鍛え直した特別製だ。車輪も同じ素材で作るが、ここでもヴォーレントの皮を巻いて衝撃を吸収する工夫を施した。

 片側二輪の四輪車仕様にしたので、安定感も抜群だ。そして、馬型ゴーレムの製作を始める。


 馬車は二頭立てにしたので、馬型も二体作る予定だが、予備も欲しいから五体製作しようと思う。魔石も八個あるしな。

 先ずは骨組だがこれは上体は黒鬼ホースをそのまま使用した。角は除けたが。そして、足の骨をヴォーレントの骨を加工して作り直す。肉体はミスリにヴォーレントの肉粉を混ぜて作る。皮もヴォーレントの皮を使用した。

 その心臓部分に黒鬼ホースの魔石を入れて魔力が体全体を循環するようにした。一応の完成だが、さて俺の言う事を聞くのか? 俺は一体だけ魔力を込めてみた。

 すると、案の定威嚇してきやがる。想像主に逆らうとは不逞野郎ふてぇやろうだ。俺は魔力を切ろうとした。そこにサヤがやって来た。

 そしたらこの馬野郎はサヤにすり寄り頭を擦り付けるではないか······


「わあ、可愛いねぇ。貴方が私達の馬車を引っ張ってくれるのかな?」


 サヤが懐く馬ゴーレムにそう言うと、俺を見て早く繋げと『ブルルウッ』といななきやがる。この野郎、サヤが居なくなったら覚えておけよ······ 俺はそう思いながらも繋いでやる。そこにマコトもやって来て言った。


「トウジ、二頭立てみたいだけど、一頭で大丈夫? ゴーレム自体は出来てるみたいだから、私も魔力を込めてみても良いかな?」


 俺はマコトの提案を了承した。マコトがもう一頭に魔力を込めた。そいつはマコトに頭をすり寄せる。サヤを見て、サヤにも頭をすり寄せる。俺を見て威嚇する······ 何故だ? 俺がお前達の体を作ったというのに······

 俺は悲しみを堪えてもう一頭も馬車に繋いだ。人が乗っていない状態で馭者もいないがサヤとマコトの言葉に従って庭をくるっと回る。

 その時、俺の悲しみの目に気がついた二人の妻は三体残っている馬ゴーレムに近づいて、それぞれ一体ずつに魔力を込めた。するとどうだろう! 二体は俺に近寄り頭を擦り付けてきたではないか!? 俺は嬉しくて涙が溢れた。


「トウジ、トウジを好きになるように願いを込めて魔力を入れたよ」


「私も」


 二人の妻はそう言って俺を慰めてくれた。そこで俺は残り一体に妻二人を守ってくれと願いを込めて魔力を込めた。残る一体は俺の願いを叶える為か、体が一回り他のゴーレムよりも大きくなった。

 俺達三人と四体のゴーレムを見て嘶く大きなゴーレム。すると、四体はそのゴーレムの前に整列した。更に、そのゴーレムから俺達三人の頭に言葉が届いた。


『我が主よ。生まれ変わらせて頂き有り難うございます。我ら五体は主達の足となり、また盾となることをここに誓います!』


 俺はビックリした。妻二人を見ると二人もビックリしている。


「ゴーレムが言葉を発する程の自我を持つなんて······」


 マコトがそう呟く。取りあえず俺は話かけてみた。


「名前をつけても良いか? 名がある方が便利だし」


『おお、我らに名付けまでしていただけるのですか! 是非ともお願いします』


 俺は妻二人と相談する。

 初めに魔力を込めたサヤに懐いているゴーレムは『サズキ』、次にマコトが魔力を込めたゴーレムは『コズキ』、サヤが俺を好きになるように魔力を込めたゴーレムを『トズキ』、同じく俺を好きになるようにマコトが魔力を込めたゴーレムを『ウズキ』にした。そして、そんな四体を取りまとめてくれる一際大きな体になり、意志疎通も出来るゴーレムは『トウサマ』と名付けた。

 誰だ! 安直なネーミングだと言ったのは!! えっ! 誰も言ってない······ どうやら俺の空耳だったようだ。

 名前をつけたらゴーレム達から嬉しそうな感情が俺達に届いた。俺はトウサマに話しかけた。


「明日にはこの村を出て、旅を再開するんたが、馬車やお前達を村人に見られたくないから、街道を進んで見えなくなってから出す事にするよ。だから、今は無限箱の中に入っていてくれ」


『承知しましたぞ、我が主。我らは明日から存分に働きますから、これからよろしくお願い致します』


「ああ、頼んだよ」


 それから、妻二人に馬車の中に入ってもらう。外から見えているサイズよりも中が広い事に驚いてくれる二人。俺は二人にまだ広く出来るがどうする? と聞いてみた。二人は取りあえずはこの広さで良いと言ってくれたので、俺は二人がゆっくり座れる様にベンチソファを中に作った。それを見て更に喜んでくれた二人。俺も喜んで貰えて嬉しい。


 そうして、完璧な馬車と馬を作った俺は家に入り、妻二人を相手にこの村の最後の夜を楽しんだ。二人とも頑張って応えてくれたが、やはり俺が最後まで起きている。しかし、絶倫スキルも無いのに何でだ? と夜中に一人で考えていたら、金精コンセイ様の祝福『尽きない精(性)力・永久』があった事を思い出し、納得してしまった俺だった。


 ある意味絶倫スキルよりも凄い祝福だよな········


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