第50話 一旦エピローグの件

 ミーナ姫の乱入によって俺とサヤとマコトの謝礼引渡しが無くなるのかと思いきや、マクド王はミーナ姫を強引に騎士団に命令して連れ出して続行した。


「騒がせてすまなかったな。では、これよりトウジとサヤ、マコトへの謝礼引渡しを行う。トウジ、サヤ、マコトも同じくS級への推薦をしているので一両日中に決まるであろう。それから、あの家についてだが、トウジのスキルなら家を収納出来ると思うので、好きな様にして貰って良い。後、この町の少し外れた場所になるが土地を用意してあるので、後でナッツンに聞いて好きな様に利用して欲しい。それと、魔境の洞窟ダンジョンについてはその権利をトウジの物として、ダンジョンから出た利益の三割を冒険者ギルドからトウジに支払う形になる。爵位なども贈ろうかと検討したが、断られると思ったのでな、今回はそれは無しにした」


 今回はって······ 以降もお断りしますよ王様。俺は爵位なんかに興味は有りませんからね。俺が興味あるのは二人の妻とのあま~い生活ですから。


 俺達三人は頭を下げて素直に謝礼を受け取った。そうして、城を出ようとした俺達を連れ出されていたミーナ姫が待っていた。


「お待ちなさい! そこの貴方、そうダンディーな雰囲気の貴方よ。どなたかと契りは結ばれているのかしら? そう貴女がそうなのね······ では私は第二夫人で良いわ。私とも契りを結んで貰いますわ!」


 唐突にそう言い出したミーナ姫のターゲットは何とケンジさんだった······ 面倒事の匂いがプンプンした俺とエイダスはジリジリと少しずつ気づかれない様に遠ざかる。

 ミーナ姫にいきなりそう言われたケンジさんは戸惑っている。アカネさんは余裕の笑みを浮かべている。そして、アカネさんが口を開いた。


「あら、出戻りのお転婆さんが大層な口を聞くわね。どの口が私の旦那を口説いているのかしら?」


「あら、貴女は平民の癖に口の聞き方を知らないようね。この王族である私がそう決めたのだから、平民である貴女は黙って従えば良いのよ。それに第二夫人でと譲歩もしてあげてる訳だし!」


「オホホホホ、姫様は豪気なのね。フィオナちゃんはお淑やかだったけど、これ程似てない姉妹も珍しいわね」


「フィオナ? ああ、セレナお姉様の事ね。お姉様はズルいのよ。さっさと城を出て意中の殿方とくっつかれたんですもの! お陰で私は意に染まないヤーカーラ国王に嫁ぐ羽目になったんですもの! でも、安心してちょうだい。貞操は無事よ。誰があんなヒヒジジイに触らすモノですか! だから私は初物よ、さあ当事者の貴方、そうケンジという名前なのね。ケンジ、私と契りを結ぶと言いなさい!」


 更に遠ざかる俺とエイダス。そして、声が聞こえなくなった距離まで離れてから騎士の一人を捕まえてミーナ姫の事をナッツンに伝えてくれと告げた。


 俺達がそうして対策をしている間にもミーナ姫とアカネさんの間にわだかまる闘気が高まっているのが離れていても見える······ 俺は心の中で叫んでいた。


『早く来てくれーー! ナッツン!』


 そこに颯爽と現れたのはナッツンとマクド王の二人だ。王まで来るとは思わなかったが、執務は大丈夫なのか?


「ミーナ、そこで何をしている! ケンジ殿とアカネ殿はこれからの国にとっても大事な方達だぞ! 要らぬ事をするな!」


 マクド王が叱責するが、ミーナ姫には効いてないようだ。


「あら、お兄様。国にとって大事な方なら尚更、私という王族と繋がりを持つのがよろしいのではなくて? 可愛い妹がそう考えて、将来の伴侶を決めたのに祝福してくださらないの?」


「ならぬ! そもそもソナタは既に心に決めた男がおるであろう。その者の代わりにケンジ殿などと烏滸がましいにも程があるぞ! そのつもりでそなたがこの国に居ようとするのなら、一生幽閉する覚悟も私にはあるぞ!」


 マクド王の過激な言葉に衝撃を受けた様子のミーナ姫。恐らく今までそんな事を言われた事が無かったんだろうなぁ······ 

 そこにナッツンが出てきて、宰相の変装を解いて素顔でミーナ姫の前に出た。そして······


「ミーナ姫、この姿で御身の前に出るのは二度目となりますね。覚えておいでですか?」


「貴方は、! 至高のきみ!! ま、またお会い出来るなんて! ああ、貴方がいらっしゃるのでしたら、そこのシブいオジサンはどうでも良いわ! そうよ、貴方よ! 私が求めていたのは貴方なのよ! さあ、契りを結びましょう!」


 目がハートマークになったミーナ姫が素顔のナッツンに迫る。ポカーンとする俺達とガックリと項垂れるケンジさん。しかし、そんなケンジさんに寄り添うアカネさん。本当に良く出来たひとだ。まあ、気がつけば俺の左右にサヤとマコトが、エイダスの横にはエルがちゃんといるのだが。俺とエイダスは顔を見合わせて笑い合う。二人とも自分には過ぎた妻だと思っているのは分かりあった。


 マクド王とナッツンに事態の収集を任せてその場を後にする俺達。一旦、皆が俺の家に集まる。コソッと男三人で無音をかけてケンジさんの本音を聞いてみたら、


「俺はアカネ一人で十分だし、だが王族だから無碍むげに断ると何か面倒がありそうだから困っていたんだ」


 との返事が得られた。これは後でアカネさんに教えよう。今日の夜はケンジさんは精気が全て無くなるかも知れないが······


 皆で俺の家で過ごす事になったので、バーム商会に出掛けてライーグさんに買取をお願いに行くと、ライーグさんが買取部門長に昇格していた。泣きながら俺達に礼を言うライーグさんを宥めて、買取をしてもらう。


 そして、晩飯の材料を買って帰り、エルを中心に女性達が料理を作ってくれた。それを食べながら皆で歓談して、夜も更けてきたので片付けをしてそれぞれが就寝することに。

 勿論、その前にアカネさんにケンジさんの本音を伝えておいた。顔を赤くして喜んでいるアカネさんを見て伝えて良かったと思う。


 そして、部屋で二人の妻と今後の事について話し合う。


「トウジはどうしたいの?」


 サヤが俺に聞いてきた。俺は今の正直な気持ちを二人の妻に伝える。


「正直な気持ちを言うから聞いて欲しい。俺は俺に関わりがない場所で何かが起きようとも、気にはしないつもりだ。俺は英雄や勇者じゃないし、手も足もそんなに長くない。この世界の全ての人を救うなんてご大層な気持ちもない。俺はサヤとマコトと一緒に一生暮らしていけて、俺の身近にいる人が幸せでいてくれたら、それで満足なんだ。勿論、火の粉が降りかかれば打ち払うけどな。だから、ヒジリや他の邪神についても積極的に動くつもりはない。失望したか?」


 俺は二人の妻に気持ちを伝えてそう聞いてみた。二人の返事は、


「ううん、私も世界の人を救うなんてガラじゃないし、力も無いから。ただ、目の前に困っている人が居たら助けられるなら助けたいとは思う。それはトウジと一緒だよ」


「私もサヤと一緒。トウジと甘~い夜を過ごす為には頑張るけど、それ以外では頑張るつもりはないの」


 と、サヤは可愛らしくマコトはムギュっと胸を寄せて俺に言った。

 うんうん、良かった。二人とも同じ意見で。だから俺は二人に提案した。


「ケンジさんやアカネさんとは違う場所に旅に出ても良いかな~なんて思っているけど、どうかな? 勿論、一~二ヶ月はこの国の様子を見てからだけど。二人はもう見てるだろうけど、俺はまだこの国から出た事が無いから、この大陸の他の国も見てみたいしな」


 俺がそう提案すると、二人が案内すると了承してくれた。良し! これで色んな国の色んな美女を見て回れるぞ! 

 ん? 何故か冷気×二が······


 その夜、俺は金精コンセイ様からの祝福、【女性喜ぶ左右の手指】を駆使して二人を喜ばした。


「ああ、トウジもうダメ、ちょうだい、ちょうだい!」


「な~にが欲しいのかな~、サヤちゃんは?」


「きゃあ! ヤンッ、ダメ、そこはそこは違うの! そこはダメなのーーっ!」


「マコトはウソつきだな~、ここが良いんだろう? ホラ、ホラ!」


 今後の方針も夫婦で話し合いができて、安心した俺はいつもよりかなりハッスルしてしまった。

 果てた二人をこれでもかと触りまくりました。ご免なさい。


 翌日から俺達はギルドに行き、魔物を狩って過ごしたり家を無限箱に土台ごと収納して、マクド王に貰った土地に移したり、空いた土地は宿屋『豚の箱』にあげたり、魔境の洞窟ダンジョンの管理部屋に行って、ダンジョンコアに魔力を与えたりと充実した日を過ごした。

 ダンジョンで得た収入については断ったのだが、権利者が人であるなら正当な事だとギルドマスターのゼムさんに言われたので、素直に受け取ることにした。が、孤児院を経営している人がいて人となりを確かめて、ちゃんとしている方だったので匿名で寄付する様に手配した。最近はその孤児院の子供達が元気な様子が見られると近所の方の評判なので、寄付して良かったと思う。

 そんな風に日々を過ごしていると、一ヶ月後宰相ナッツンとミーナ姫が契りを結んだ。そして、国王からお触れが出て、男女で契りを結ぶ事を今後は【結婚】と言う事にしたそうだ。ナッツンの入れ知恵だな。

 

 それから更に一ヶ月が過ぎて、俺達は取りあえず東にある隣国へ行く事にした。

 さあ、新しい冒険の始まりだ!!







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 ここまで読んでいただき、誠に有り難うございます。作者が思っていた以上に沢山の方に読んでもらい嬉しい悲鳴を上げております。

 これは日本語だからこそ出来るお話だと思っております。【無】という文字を広辞苑で調べて書き出し(アナログ人間なのでノートに手書きです。)、始まったこの物語はまだまだ続いておりますが、この話以降を作者が確認したところ、支離滅裂な箇所。話の繋がりがおかしい箇所。順番間違いなどなど多数の問題点が見つかりました。(今までの投稿に問題が無かった訳ではないですが······ 優しい読者の方に恵まれており、助かっております。)そこで、急遽キリの良い数字でもあるので、最後の文章に一言付け足して一旦エピローグとさせていただきます。m(_ _)m

 手直し作業、又は書き換え作業に入り、続きの更新については一週間程先を目標にしております。

 完結ではないので、連載中のままにしておきます。また、再開した際にはよろしくお願いします。


 因みに明日は閑話休題(ミーナ姫と至高のきみの出会いの物語)を短文ですが投稿しますので、よかったら読んで下さい。


 


 



 

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