第26話 嫁が二人?の件
朝食の準備が終わって、サヤの家族が来るまでの間にこの前聞きそびれたエルさんの召喚された時の事を教えてもらった。
エルさんの時は、深夜に残業帰りで二人の男に車に無理矢理乗せられそうな時にその二人と一緒に召喚されたそうだ。
二人の男は年若く、一人は賢者でもう一人は竜殺剣士だったそうだ。
エルさんは調理師。
二人は協力するからこの女(エルさんの事)を好きにさせろと要求して、国王も王妃もそれを許可したそうだ。
しかし、バカな二人は野外の方が燃えると言って城の外でコトを行おうとして、当時の騎士団長に見つかり御用となり、エルさんは国王達に知られる前に城を出たそうだ。
因みに当時の騎士団長は何も知らされていなかった訳ではなく、事情を知っていてエルさんを助けてくれたらしい。
国王達にはそんな事は聞いてなかったとシラを切り通したそうだが。
結局それが元で、騎士団長を首になったそうだ。
実はそれがエイダスの父親だそうだ。城からエルさんを出す際に門衛に声をかけて助けてもらえと騎士団長に言われたエルさんは、言われた通りに声をかけた。が、自身の助けではなく、今後同じような立場の人を助けてやってくれと言ったら、エイダスに惚れられたそうだ。
エルさんの調理師だが、中級職だった。しかしレベルが上がって、職業が進化。
今の職業は特級調理師で高級職らしい。戦闘に関わるスキルも増えて、C級の魔物を何とかソロで狩れる強さがある。
これはエイダスと二人でエイダスが休みの度にレベル上げをしたお陰だとか。
そんな話を懐かしそうに話すエルさんを見て、やはり好みドストライクな俺はエイダスを心の中で何度も殴っていた。
しかし、サヤがそれに気づいたのか、ジーーーッと俺を見るので、妄想を即座にストップさせてエルさんに聞いた。
「一緒にきた二人はどうなったんですか?」
「それが、分からないの。どうも違う国に行かされたらしいんだけど、どこの国か、それが本当の事なのかもはっきりしてないって、ナッツンが言ってたわ」
そうすると、初めに召喚された四人にユウヤの時の二人プラスエルさんの時の二人。サヤの時の三人と俺の時の五人、計十六人が要注意人物だな。
俺はサヤや知り合えた皆と穏やかに暮らす為の障害になりそうな人物を心に刻んだ。
関わってこない限りは放置するが。
話が一区切りついた時に、ケンジさんが家族を連れてやって来た。
「待たせてすまない、マコトが中々起きなくてなぁ······」
「パパ、それは言わない約束だったでしょう?」
冷たい笑みを浮かべた二十歳位の黒髪ロングヘアーの美人さんがケンジさんにそう言う。
身長は百六十くらいでサヤよりも少し高く、非常に自己主張の激しい胸が俺の目に焼き付いた。
サヤの目から怪光線が俺に向かって飛んでくる!
サヤさんや、何度も言うが男の
隣にいる少しおっとりした感じの美女がアカネさんだろう。二十歳位の娘がいるとは思えない若さだ。その謎は直ぐに解けたが。
「皆さん、お待たせして申し訳ありません。そちらのサヤの
その挨拶はどうなんだ?と疑問におもうが、俺は立ち上がって二人に挨拶した。
「初めまして、トウジと言います。サヤとこちらの世界で出会い、結婚させていただきました。これからどうぞよろしくお願い致します。」
良し! ケンジさんの時とは違い噛まずに流暢に挨拶出来た。
そこにアカネさんから思わぬ言葉が飛び出した。
「あらあら~、サヤったら姉より先に結婚するなんて。マコトが可哀想だわ~。トウジさん、序でにウチのマコトも貰ってくれません?」
ブホッと茶を吹き出すケンジさん。その後に咳き込みながらも言葉を絞り出す。
「な、何を、ゲホッゴホッ、言って、るんだ!アカネ! 突然の突飛な冗談は止めてくれよ」
「あら~、冗談なんかじゃないわよ~。この人ならサヤもマコトも任せて安心だわ~。私のスキルがそう言うんだから、間違いないわ~。マコトも良いわよね?」
「ママのスキルが認めた人なら私に異存はないわ!
トウジさん、
きっちり頭を下げてくるマコトさん。
俺は頭の中の混乱を押さえられずにサヤを見た。サヤは複雑な表情をしていたので、通信石を使って聞いてみた。
『どうした? サヤ? 俺はお断りするつもりだけど······ 何かあるのか?』
通信に気づいたサヤが返事をする。
『トウジ、私も気持ち的に断って欲しいんだけどアカネさんのスキルに出ているなら断るべきじゃないの······ 』
どういう事だと思い、サヤに尋ねる。
『アカネさんのスキルに出ていたらどうして断っちゃいけないんだ?』
『あのね、アカネさんの職業神聖士のスキルには【天運】ってあって、重要な選択肢がある時に勝手に発動するんだけど、スキルが表す通りに行動したら間違いが無くなるの。一度叔父さんがスキルの表す通りに行動せずに死にかけた事があるから······ だから、叔父さんも認めると思うし、私も認めざるを得ないかなって······』
二人でそこまで内緒話をしていた時に、マコトさんが言った。
「サヤ、安心してね。私はトウジさんと結婚しても体の関係は持たないから。だって、私は······ 子供が産めないから······」
そこで一筋の涙がマコトの頬を伝う。
それを見てハッとするサヤ。そして、
「マコ
マコトに向かってそう言った。
サヤが心変わりした!
おい、サヤさんや先程までの内緒話は何だったんだ。俺は心を鬼にして、断るつもりだったのに······
ん? 断らなくて良いのか? そ、それはオジサンには刺激が強いんだが!
「トウジよ、俺の二人の自慢の娘だ! 泣かせたら承知しないからな! 今度はスキルを使ってお前を切り刻むからな!」
ケンジさんが、そう言ってきた。
俺がサヤを見ると、サヤも俺を見て頷く。
良いんだな! 地球だと犯罪だが、この世界には重婚という犯罪はない! 本当に俺が二人も嫁を貰って良いのだろうか?
悩む俺にエルさんが、フィオナが言う。
「トウジさん、男ならバシッと決めないと!」
「ユウヤの信頼するトウジさんなら、大丈夫です!」
フィオナさんの判断基準がユウヤありきなのは残念だが、そこまで言われたら俺も覚悟を決めなければ。
「マコトさん、いやマコト。俺で良いのか? 俺で良いなら結婚しよう。サヤとマコト二人、必ず幸せにすると誓うよ!」
俺は心を込めて、マコトにそう言った。
サヤも泣きながら頷いてくれている。マコトの返事は、
「はい······ よろしく··· お願いします。サヤもご免ね。でも、よろしくね」
嬉し泣きしながらそう返してくれた。
こ、これは益々強くならねば!
俺は心にそう誓った。
アカネさんがそこで徐に言う。
「良かったわ~。序でにワタシもトウジさんに貰ってもらおうかしら? セカンドバージンを」
アカネさん······ 感動を返して下さい······
ケンジさんが慌てて何を言ってるんだと、アカネさんに詰め寄り、サヤとマコトはママはダメと言って騒がしくしていると、エルさんが笑いながら言った。
「あらあら、ワタシも立候補しようかな? どう? トウジさん? 人妻だけど」
ヒ・ト・ヅ・マ! その怪しい響きに俺はクラクラしてしまうが、サヤとマコトの目力により理性を保って言った。
「ハハハ、やだなぁ。揶揄わないで下さいよ~。サヤもマコトも本気にしないで良いぞ~」
俺は心で泣きながら冗談ぽく言って話を誤魔化した。
そして、皆で冷めてしまったが美味しい朝食を食べて、時間があるから稽古をしたいと言ってくれたので、マコトも交えて皆で無回流の稽古をした。
夕方にはエルさんの店に顔を出すと約束して、ケンジさんとアカネさんは用事があるからと、冒険者ギルドに出掛けていった。
そして、稽古を終えてサヤとマコトの二人と一緒に部屋に戻って無音をかけた。
「マコト、辛かったら言わなくても良いが子供を産めない理由は分かってるのか?」
俺はそう聞いてみた。
マコトは大きな胸を震わせながら言った。
「私は高校の頃に事故にあって、下腹部の損傷が激しくて······」
そう言ってズボンを脱ぎ、下着も脱いで俺に見せてくるマコト。その顔は悲しみに濡れている。
マコトの下腹部に目をやると、太ももにかけて大きな傷痕がある。それを見ていたら、
「トウジさん、事故で体の中の損傷した部位は摘出されて、子供を産めない上にこんな醜い傷がある私をお嫁に貰ってくれて、有り難う。私はこれ以上は望まないから、サヤと一緒に貴方の側にいさせて下さい······」
俺はサヤを見る。
あのあと、サヤは通信石で教えてくれていた。こちらに来てすっかり事故の事を忘れていたが、マコトの子供を産めない発言で思い出したそうだ。
そして、治してやってくれと······。
俺はもう一度サヤに目で確認をとった。
サヤも頷く。
俺は黙って無傷を発動した。
マコトはまだ気がつかずに泣きながら、下半身裸のまま俺に謝っている。
そんなマコトを俺は抱き寄せて言った。
「辛かったな。正直に言ってくれて有り難う。そしてマコト、傷なんか無いからな。お前は子供だって産めるぞ」
俺の言葉にイヤイヤをするように首を振るマコトだが、サヤが姿見を持って来てマコトに言う。
「マコ
サヤに言われて涙を流しながら姿見を見たマコトは目を見開いて、固まった。
一瞬後、今度は声を上げて泣き出し、俺とサヤに礼を言いまくる。
そんなマコトを宥めて服を着させて、今は落ち着こうなと声をかけて、茶を入れてやった。
それからが大変だった。もう、一生たりとも離さないとばかりにサヤが居るにも関わらずに大胆になったマコトが、俺に迫ってくるとサヤも負けじと迫ってくる。
マコトは初めてだったのに、盛大に感じまくって果てては起き上がり挑んできた。
結局、夕方までにマコトと七回戦。サヤと九回戦を行うハメになった。二人とも幸せそうな顔だから良しとしよう。
そして、俺は敢えて宣言しよう!
『リア充、死ね!』の言葉は甘んじて受けようと思う。
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