オランウータンはどんな手?

おくとりょう

『…昨日未明、無職(30)の男性が殺人の罪で…』


 行きつけの定食屋。

 ラジオから流れるニュースに、つい箸を止めた。何だか胃がキュウっと縮こまったような気がして、脇腹をさする。食べたくて、頼んだ焼き肉定食なのに。こんなことなら、バナナにでもしておけばよかった…。

 残り数枚のお肉と茶碗に残った一口ほどの白米を勢いよく頬張るが、舌が昼寝でも始めたように味が分からない。歯ごたえばかり主張するそれらを流し込むように、味噌汁をすすった。

 …ほどよい塩気がじんわり広がる。やはり、ここのお味噌汁は最高だ。煮干しと昆布のあわせ出汁。

 自分で作るときはついつい顆粒出汁かりゅうだしを使ってしまうが、ちゃんと出汁をとった方が深みが出る。その深みが味噌をより引き立て、少ない塩気でもこれほどの満足感を得られるのだろう。軽く目を閉じて、食後の余韻を味わっていると、

『…の手だけは現在行方知れずとなっていますが、被害者遺族にもう探す意思はなく…』

 不快なニュースが耳につき、思わず眉間にシワが寄った。小さく首を振って、厨房のおばちゃんに声をかける。


「ヘイヨォ☆マダム!お会計オナシャース」


 ぴったりの額をレジの小銭入れに置いて、感謝を込めてウィンクを飛ばした。

「チャオチャーオ」

 店から出ると、狭い道をひっきりなしに人々が行き交っていた。うんざりしつつ見上げた空は透き通るような鮮やかな色をしていた。


******************************


 そういえば、あれもこんな風に空が青い日だった。

 ……いや、嘘です。

 あの日の天気は覚えていない。

 真っ青だったのは俺の顔色。


 仕事がなくて、貯金もつきそうな平日の午後。俺は事務所のソファに仰向けに寝っ転がって、焼き肉を頬張る夢を見ていた。

 玄関ベルの音に転がり落ちて、目が覚める。床に打ちつけた痛みは寝ぼけ醒ましにちょうどよかった。

 よろよろしながら、玄関の扉を開ける。のどがイガイガ気持ち悪い。口を開けたまま寝ていたのだろう。


「あのぉ…。オランウータンを探して欲しいんですけど」


 玄関先に立ち尽くした痩せぎすの男は、緊張した様子でそう言った。


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「…つまり、オランウータンが逃げてしまったけど、大事おおごとにしたくないので、警察ではなく、ウチに来た…と」


 戸棚の奥で眠っていたインスタントの緑茶を差し出すと、小さく会釈して男は頷いた。

「えぇ、私と叔母は類人猿の研究者でして。

 山奥の研究所で飼育していたのですが、先日一頭逃げ出してしまったんです。うっかり鍵を閉め忘れていたんでしょうね」

『うっかり』って…。

「大型類人猿なんて、特定動物ですし、飼育は厳重に行われているハズでは?」

 久々の客で丁重に扱うべきなのだが、思わず呆れてため息が洩れる。


「えぇ、えぇ。

 だからこそ、警察に頼むわけにいかず、今回お願いに来たのです。…どうかお願いできませんかね?」

 そう言って男は疲れた顔で、こちらを覗き込むように頭を下げた。


 …なるほど。どうして、ウチのような弱小探偵事務所に来たのかと訝しんでいたが、他には断られてきたのか。犯罪に加担するような依頼なので、警察に頼まないのは当然という他ない。

 黙っていると、男は小切手を差し出した。電子マネーが増えた令和の時代に小切手とはなかなか古風である。

「前金はお支払いできませんが、受注いただけるなら、結果の如何いかんにかかわらず、最低でもこちらの額を払わせていただきたいと思っております」

 俺は目玉が飛び出そうになった。一、十、百、千、万、十万、………。そりゃ、このゼロの数なら小切手を出すハズだ。滞納している事務所の家賃を払ってもまだお釣りが来る。

 だが、こんな大金の依頼なんて、どう考えても怪しすぎる。そもそもオランウータンの迷子なんて、嫌な予感しかしない。

 とはいえ、財布の中身と銀行の残高を思い浮かべると、喉から手が出るほどありがたい依頼で…。

 ぐるぐる回る頭を落ち着かせようと、自分の緑茶を一口飲んだ。ほどよい苦みがすぅーっと沁みわたる。


「…わかりました。お受けしましょう」


 ……ん?あれ?

 さっぱりした勢いで、うっかり受注してしまった。

 日が傾き始めた窓の外から、カラスの声が聴こえた気がした。


******************************


 …そういうわけで、俺は単身、人里離れた山奥の研究所を訪れた。


「いやぁ、遠路遥々ありがとうございます」


 …ホントだよ。お金も運転免許もない俺は、鉄道とバスを乗り継いだ上、登山道を一時間近く彷徨さまよって、ようやくたどり着いた。未だスマホには慣れないが、この唯一使える地図アプリがなければ、遭難するところだった。そして

、そのスマホももう電池が残り少ない。


「すみませんね。何のおもてなしも出来なくて…。研究所のルールで関係者以外立入禁止なんですよ」

 男は申し訳なさそうに言った。

「じゃあ、これだけお渡ししますね。

 この山一帯がウチの敷地になってますので、好きに動いていただいて結構です」

 トランシーバーと山の地図。スマホの電池が心許こころもとなかったので、ありがたい。

 まぁ、サバイバル自体は十八番おはこなのだ。今よりさらに金欠だった若い頃は、夜露で飢えを凌ぎながら、複数の迷い猫・犬の依頼をこなしたものだ。今回は一週間、研究所付近で過ごせば、見つからなくても報酬がもらえるというのだから、安いものだ。…いや、だから怪しい依頼ではあるのだけれど…。

 まぁ、この際、背に腹はかえられない。

 可能な限り準備はしてきた。どうせ、寂しい独り身だ。腹をくくって、一日目の捜索を開始した。


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 …とはいっても、そうそう何かが起こるわけもなく、一日、二日と平和に過ぎていく。歩きにくい山林の中を一日中彷徨うろつくのは、普段使わない筋肉を酷使するため、身体がバキバキにはなってしまった。…数年前、いや、二十年前はこうではなかった。一晩寝れば、疲れはとれたし、硬い地面で寝るのも平気だった。…寄る年波には勝てないということか。

 …いやまぁ、そうは言っても報酬を思えば安いものだ。


 そんなこんなで、オランウータンの気配どころか、野生の猿の気配も見つからないまま迎えた四日目のこと。

 もう一週間のサバイバルしただけで、たんまり大金を手に入れることになってしまうんじゃないかと、嬉しいような情けないよう気持ちになっていたときだった。

 そこは不自然に土の色が違っていた。掘り返され、埋めなおされたように…。整備されていない山林の中に突如現れた人為的な形跡に嫌な予感がしつつ、しゃがみこんだそのとき。頭の上を何かが風切り音とともに通り過ぎる。

 それは側の木にぶつかると大きな音を立てて地面に落ちた。

 ぎらっと鈍い光が目に刺さる。…草刈り鎌だった。古びた持ち手に対して丁寧に磨かれ、輝く鋭利な切っ先。


 突然のことにぼんやりそれを見ていると、鎌の飛んできた方角から、奇声とともに薄汚れた老婆が飛び出してきた。伸び放題の髪は砂埃で煤け、何かの巣のように落ち葉や枝が飛び出している。その奥の顔は痩せこけて、瞳ばかりが爛々らんらんと輝き、どう見ても正気とは思えなかった。


 俺は思わず飛び上がった。

 人間ってのは、ホントにびっくりすると、飛び上がるものだし、声も出ないものなのだと改めて思う。右も左も分からずに一目散に逃げ出した。何度も転んだし、穴にも落ちた気がするけれど、よく分からない。異様に身軽な老婆から逃げるだけで精一杯だった。


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 いつの間にか、辺りは真っ暗になっていた。何とか振り切れたのか、暗闇の中に老婆の気配はなく、ただ虫たちの鳴き声に満たされている。夏の夜は騒がしいのだ。

 腰ほどの高さの茂みの中に身を隠し、鞄の中からトランシーバーを取り出す。

 とりあえず、依頼者の男性に連絡をとらねば。助けを求めたいというのもあるが、研究所の付近に不審者が出たということは伝えねばならない。

 しかし、アドレナリンが出っぱなしで、興奮している俺に対する男性の反応は妙に落ち着いたものだった。


『…ぁー。もしかしたら、それは叔母かもしれません』


 はぁ?!


『いやぁ…最近、ちょっと気を病んでしまいまして…。徘徊することが増えてるんですよねぇ…。

 あ、元気だった頃の名残で、今も研究所で生活してるので、徘徊と言っても、敷地内の山林の中で、ご近所さんにご迷惑をかけることはなかったんですが…』


 俺は!殺されかけてるんだけど?!?!


『いやぁ…すみませんね。

 ちゃんと挨拶させとくべきだったかなぁ?

 でも、まだ戻ってきてないんですよねぇ…。とりあえず、また戻って来たら、しっかり言い聞かせておくんで!』


 どこか気の抜ける反応に、頭を抱えた。まぁ、自分の身は自分で守るしかない。辺りに警戒しながらも、少しでも身体を休めようと、側の木に寄りかかる。

 オランウータンと老婆に怯えながら、夜の森を過ごすことになるとは…。鳴き止まない虫の声がありがたかった。


******************************


 翌日。老婆とはすぐ再会することになる。


 俺は、依頼者の仲介のもとに彼女と平和的和解を行うため、オランウータン捜索を中断して、研究所へ引き返していた。

 老婆が飛び出して来ないか、ビクビクしながら、茂みを掻き分けて歩いていると、ふと金属の香りが鼻についた。昨日の草刈り鎌を思い出し、身震いする。

 と、そのとき。何か妙に柔らかくて固い芯のあるものを踏んづけた。


「ひぃいぃぃぃっ!?!?!」

 成人男性として情けない声が出た。まぁ、誰に聴かれることもなかったのだけど。森の中に俺はひとりで、俺が踏んづけたのは、依頼者の叔母さんの遺体のだったから…。


 腰ほどの草むらを薙ぎ倒すように倒れた彼女は首元をざっくり引き裂かれ、薄汚れたシャツは真っ赤に染まっていた。まさに血の気のなくなった顔は苦しげに歪んでいた。

 軽い目眩を覚えながら、鞄の中のスマホを探る。警察だ。警察を呼ばなければ。


 そのとき、後ろでカサリと音がした。


「あぁ、探しましたよ!探偵さ…ん。

 …え?…叔母さん?」


 振り向くと、数メートル後ろに依頼者は立っていた。元々白い痩せた顔がみるみるうちに、さらに青ざめ、側の木にしがみつくようにしゃがみこんだかと思うと、激しく嘔吐した。


「…どう…して…?…叔母、さ…ん…。

 …んぅ…んっ…探偵さんが…殺した、んですか?」


 途切れ途切れに洩らす声に、俺はいても立ってもいられなくなって、俺は…俺は……。


 逃げ出してしまった。

 まるで、俺が殺してしまったかのように。


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「違う違う違う違う違う知らない知らない違う違う知らない知らない知らない違う知らない…」

 わけも分からず、道なき道をかけ上る。乾いた口には苦味が広がり、瞳もしょぼしょぼ視界がせばまる。

 気づけば、老婆に出会った場所にひざまずいて、突っ伏していた。掘り返したかのように赤土が目立つ場所。

「違う…何で…どうして…いやだ…ごめん」

 いろんなことが頭の中をぐるぐる回って、ぶつぶつ呟いていたとき、地面から声が聴こえた。

「ヘイヨォー☆

 もうちょい静かにしてくれんかね」

 頭にぐわんぐわん響くような陽気で少しハスキーな若い男性の声。

「ねーぇ?おっちゃんのことヨ!聴いとる?」

 ガッと無理やり頭を持ち上げられた。頭を軽く鷲掴みできるような大きな手に。

 …あんな風にぐっと掴まれてしまっては、乱れる思考もピタッと止まる。とはいえ、頭を掴まれているんだから、次に生まれる感情は恐怖しかないだろ?


 恐る恐る振り向くと、そこには大きな猿が、猩々オランウータンが満面の笑みを浮かべていた。


「何泣いてんの?オラちんに話してミソ味噌?」


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「…ん~。要はオラちんのことを探しに来たけど見つかんなくて、代わりに住民の死体見つけて、ビビって逃げてきたってこと?」


 俺は黙って頷いた。まるで小さな子どもみたいに。

 …しょうがないじゃないか。生まれて初めて死体を見た後に、妙なテンションの喋るオランウータンなんて、アラフォー男の堅い頭には対応しきれない。


「…で?おっちゃんはどうしたいの?」


 ペラペラ喋る猩々しょうじょうはアメリカのCGアニメみたいだった。…あぁ、そういや最近は映画を観ていない。


「このまま、逃げちゃう?

 何にも見なかったことにして、何事もなかったみたいにして、今までの平和ピースフル幸せハッピーな日常に戻っちゃう?大昔のナマケモノメガテリウムみたいな最強デイズDAYS?」


 何もなかったことにして?今まで通り?

 平和な日常を想像した。これまで通り、のんびり働き、幸せな夢を見て、静かに朽ちる……。

 あんな事件に出くわしたのに?俺は探偵なのに?

 子どもの頃にあんなに憧れた探偵はこんなものだったか…?


 …ゆっくり顔をあげると、猩々はニコニコして、こちらを覗き込むように見つめていた。


「…OKオーゥケェーイ?準備が出来たみてぇだ~なぁ?では!」

 彼(多分オスだと思う)は姿勢を正すと両手を大きく広げて言った。

「さぁ、願い事を叶えよう。3つだけ。

 あなたの願いを叶えよう!」


「…あの老婆を殺した犯人を知りたい!」

 猩々が眉間にシワを寄せ、首を傾げる。

 …あぁ、そうだ。そうじゃない。俺は探偵なんだから。

「いや、俺が真犯人を捕まえる!」

 今度はニッタリ笑った。綺麗な歯並びの白い歯がキラッと光った。


「 心 得 た 」

 そのまま、猩々の全身が眩しく輝いたかと思うと、次の瞬間、俺の右腕が毛むくじゃらになっていた。


「それでは、まずはひとつめ叶えよう」


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 …ふふ、ふふふふふ。万事がすべて上手く行っている。

 私は口元が緩むのを抑えられなかった。


 祖父の遺した莫大な財産と「三つの願い」を叶える猿の手。

 この一年は親族同士での醜い争いが繰り広げられた。だが、もうそれも終わり。発狂しながらも、しぶとく生き残っていた叔母も始末してやった。

 あとは、あのボンクラ探偵に『猿の手』の場所を見つけさせれば…。ったく、叔父の妙な願いのせいで、オランウータンの身体をちまったせいで、扱いにくくて仕方ない。


 しかし、あのボンクラ。まさかあそこで逃げ出すとは…。私の犯行だと疑わせないためだけの小芝居だったのに。

 …いや、罪悪感を抱えていてくれた方が扱いやすくていいかもな。ふふふふふ。


 お、ちょうど戻ってきたみたいだな。


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「あの…すみません。…逃げてしまって」


 探偵は深く頭を下げた。

「…いえ。

 私の方こそ、動揺してしまいまして。

 探偵さんが…人殺しなんて、するわけないですよね」

 依頼者男性は叔母の死体を横目に口を開く。

「それに、こんな乱暴な切り傷…。とても、人間の仕業とは思えない…。獣…。

 私は逃げ出したオランウータンの仕業じゃないかと思っているんです!」


「おいおい、ひでぇ言いがかりだな?

 こんなのちょっと尖った道具を引っ掻けて、力任せに引っ張りゃあ、成人男性なら誰でもできるだろうよ」

 猩々は小さな声で呟いた。


「え?何かおっしゃいましたか?」

「…その、いや…」

 しどろもどろに、言い淀む探偵の意思に関係なく、すぅーっと右手が依頼者を指差した。

「さっさと言っちまえよ、相棒。

 人を殺したお猿さんは誰なんだい?」


 探偵は少しの沈黙のあと、指先をじっと見つめ、少し頬を赤らめて、モゴモゴと言った。

「犯人はあなたです」


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 あなたは俺を利用して、精神を病んだ叔母さんを始末しようとした。

 動機も証拠もわざわざここで挙げる必要はないでしょう。トランシーバーにGPSを仕込んだり、いろいろと細かい準備をされていたようなので。

 ただ俺ひとりを騙くらかせば、完全犯罪にできた。


 でも、肝心なところで、うっかりミスをなさっています。

 叔母さんが倒れていた現場。どうして、俺よりも低い位置にいたあなたに、草むらの中に倒れている叔母さんの姿がハッキリ見えたんですかね?


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「いやぁ…。

 ボンクラかと思ったけど、腐っても探偵さんだねぇ」

 依頼者男性はふっと肩の力を抜いたように微笑んだ。

「今からでも遅くないので、自首を…」

 寂しげな姿に同情心を覚えた探偵が彼に手を伸ばしかけた瞬間、男性は腕ほどの長さのあるスパナで殴りかかった。

「あぁ!今からでも遅くない!

 お前さえ殺せば、完全犯罪成立さ!」


(…しまった)

 慌てて後ずさるも、ちょうどスパナの間合いに入ってしまっていたアラフォーには直撃を回避することは難しく、探偵はぎゅっと目をつぶった。

(……。……あれ?)

 しかし、いつまで経っても身体のどこにも痛みが走ることはない。もしや、時間停止能力に目覚めたのかと思いつつ、恐る恐る目を開く。

 そこには、仰向けになって気を失っている依頼者男性と、スパナを握りしめた毛むくじゃらな彼の右腕があった。


「なんだい?

 ふたつめの願いは時間停止が良いのかい?」


******************************


 空は青い。

 あれは塵が光を反射した色だというけど。俺は綺麗な色だと思う。

 黒くて広い夜の空も、朱く静かな夕暮れも、未熟な俺にはまだ早い。


「ヘイヨォー☆相棒!

 まだ願いはふたつ残ってるぜ!どうすんだい♪DIEダイ♪大問題♪」

 今日も右腕から陽気な声が響いてくる。


「…もうしばらく考えるよ。

 猩々さんだって、俺の身体でもっと美味しいもんをいろいろ食べたいだろ?」

 そう言うと、跳ねるように俺の右手は天を指した。


OKオーゥケェェイ♪相棒♪

 死ぬまで一緒だ!

 オラちん、猿だが去ってやんねぇ♪

 明日も明後日もズッ友♪一緒じゃい♪」

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オランウータンはどんな手? おくとりょう @n8osoeuta

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