謁見
王座の間へ入ると、そこには国王他王宮のたくさんの家臣たちがずらりと並んでいて、緊張してしまう。
式典やパーティーの時に遠くから見るだけだった国王に、今日は近づいて話すことになる。外見は四十ほどの気の良い老人だが、近づいていくと父上から感じたものをさらに強くしたオーラがあった。
この国ではどちらかというと貴族の力の方が国王の力を上回っていることが多いが、今回のように貴族同士が争いを始めると最終的に国王が争いを収めることになる。
「よくきた、レイラ・レイノルズよ」
国王は低い声で言う。
「微力ながらこの国のお役に立つため参りました」
「先日披露した魔法は見事であった。しかし現在王国南西部を襲っている日照りは宮廷魔術師グロールでさえ解決できなかった問題だ。それをおぬしは解決できると言うのだな?」
「はい、その通りでございます」
そう言って私は頭を下げる。
「そうか。もし見事に雨を降らせることが出来れば望みの褒美をとらせよう」
「本当ですか? でしたら一つお願いしたいことがあります」
「何なりと言ってみよ」
「もし十分な量の雨を降らせることが出来ればレイノルズ家を公爵家にとりたてていただけないでしょうか」
「いくら何なりととは言ってもそれは無礼でしょう!」
私の言葉を聞いた王家の家臣が慌てて私を止めようとする。
確かに貴族家の爵位はよほどのことがない限り上下することはない。昔は隣国や異民族との戦争があったのでそこで手柄を立てれば爵位が上がることはあったが、最近は平和が続いていたため大きな手柄を立てる機会もなかった。
それもあって、すでに権力を持っていたオールストン家とオーガスト家の二強体制が続いているとも言える。
「いえ、しかし王国の水不足を解決できるとすればそれは戦争で軍勢を率いて勝利するのと同じぐらいの手柄かと思います」
戦の手柄の方が華々しいが、救っている人数は同じだろう。
私は嫁いできてからレイノルズ家が他家から下に見られていることを気にしていた。現在オールストン家とオーガスト家に嫌がらせを受けているのも二家よりも格下だからというのもある。
だからレイノルズ家が公爵貴族になればそれらの問題は全て解決するはず。
爵位が上がればもう少し日々の暮らしも豊かになるだろう。
「だからといってそれを陛下に要請するのは分不相応ではないか!」
「待て」
止めようとする家臣を国王が制する。
そして私に真剣な目を向けた。
「そこまで言うからには雨を降らせるといって少しの水を出すという程度では許されない。それは分かっているのか?」
「はい」
「南西部は土地が広い上に、川や湖の水量も減っているからちょっとやそっとの雨では足りないが」
そう、ちょっとやそっとの雨では解決できないから父上でもどうにもならなかったのだろう。
「いえ、大丈夫です」
「……分かった。そこまで言うならやってみるがよい。爵位の件についてはその結果を見て考えようではないか」
「ありがたきお言葉」
そう言って私は頭を下げた。
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