6-10話 いつでも相談を

 ルビーのアンティークショップで、キマロは浩太こうたから離れた位置で拓海たくみたちの様子を見ていた。契約者である浩太こうたから取れるギリギリの距離だ。


「あら、どうしたの、キマロ?」

 ルビーがキマロの話しかけてきた。


「ルビー、白々しいぞ……。今回の怨霊事件、お主だけでも解決できただろうに。ワシらを巻き込んだのは、ワシに見せつけるためか?」

「考えすぎよ。今年の怪異研究会には色んなことを教えたいから皆にも来てもらったのよ」

「浩太やクラリスは厳密には怪異研究会じゃなかろう」

「あら、そうだったかしら」

 ルビーはケラケラと笑った。


「邪神竜。昔話のように語られていたけれど、解決してはいないんじゃないかしら」

「切り込んで来たのぉ。どうしてそう思うのじゃ?」

「あの物語に対するキマロの反応。竜神族と人間の契約というのは、それ絡みなんじゃないの?」

「むぅ…………」

 キマロはそのまま黙り込んでしまった。


「ま、今回の怨霊事件、確かに私一人でも解決できたわ。そして、私以外にも戦える怪異はたくさんいる。せっかく交わらないはずの異世界が繋がったのだから、助けが必要ならいつでも相談しなさいな」

 ルビーはそう言うとスタスタと拓海たちの元へ歩き去った。


「それでも、異世界に迷惑はかけられん……」


 キマロは呟き、楽しそうにしている拓海たちを見た。拓海とぎく莉子りこも浩太も、本当にキマロやクラリスに良くしてくれる、大切な異世界の友人になった。で、彼らに迷惑をかけたくなかった。


 キマロは、浩太に対していつもと違う距離の近さを見せているクラリスのことも見た。魔術学校からの付き合いで、影で努力を惜しまず、妙に頑固なところのある、可愛らしい人間の少女。そのクラリスが竜神族の契約者になるというのは、キマロにとってありえない選択肢だったのだ。


「ワシはクラリスが無事に楽しく人生を歩んでいってほしいだけなのじゃよ。そのためには、クラリスをわけにはいかん」



 File 6 悪魔召喚 完

 次話より新章

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