スラム街編.6.スケルトン
――ズッ、ズッ、ズッ
そんな、何かを引き摺る様な音が地下水道内に響く……言うまでもなく、その音の正体は気絶させた浮浪者を私が運んでいる音です。
なるべく露見しない様に、多少奥まった所まで運んでから改造で強化したカッターナイフで首を掻き切って殺すのがここ数日間の決まった行動です。
「……さて、どのくらい貯まりましたかね――シュピーゲルン」
ついでに現状のステータスも確認してしまいましょう。
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名前:
性別:女性
年齢:15歳
種族:ダンジョンマスターLv.1 《亜神》
属性:光
状態:飢餓
カルマ: 《悪性》
ダンジョン機能
《不完全創造》《不完全知識》《把握》《拡張》《配置》《回収》《吸収》《合成》《改造》《同化》
――※その他ロックされている機能があります。
基本技能
《日本語》《英語》《不完全アウソニア言語》
《数学》《暗算》《高度計算》《義務教育》《不完全科学知識》《不完全化学知識》《不完全倫理》
《ストレス耐性》《苦痛耐性》《空腹耐性》《睡眠耐性》《不眠耐性》《火傷耐性》《電流耐性》《疾病耐性》《痛覚鈍化》《悪臭耐性》
《息止め》《料理》《窃盗》《性技》《恫喝》《脅迫》《採取》
《敵意感知》《悪意感知》《視線感知》《危機感知》
《短剣術》《投擲》
《免疫》
特有技能
《魂魄眼》
権能
《ダンジョンマスターLv.1》《■■■■■》
称号
《異世界人》《転移者》《迷宮の主》《人殺し》《親殺し》《狂人》《被虐待児》《契約者》《魂喰い》
加護
《地球神の加護》《■■との契約》
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使える様になった技術や経験としては窃盗、性技、恫喝に脅迫と……何ともスラムらしいラインナップですね。
他にも悪臭耐性や短剣術など、使えそうなものもありますが何とも微妙な気分になってしまいます。
まぁそれは一旦置いておくにしても、ここ数日で稼いだDPで少しはダンジョンの拡張や防衛などが出来そうですね……未だに飢餓状態からは脱する事が出来ていませんが。
「一人辺り1000ポイント程度しか入らないのが辛いです」
【そりゃあ、鍛えてる訳でもねぇ浮浪者や孤児なんてそんなもんさ】
「そんなものですか」
やはりいくらか戦闘に長けている人物をダンジョン内で殺す必要があるのでしょうね。
しかしながら、依然として私は平和な現代日本というぬるま湯に浸かっていた小娘でしかありません。
この世界の人間がどのくらい強いのかは分かりませんが、地球で武術の達人や軍人さんと正面から戦って勝てるかと問われると答えは否です。
まぁ、だからこそほぼ最低値しかDPが貰えない浮浪者や孤児をコツコツと殺して、そんな自身よりも格上の存在を嵌め殺す為にダンジョンを拡張するのですけれどね。
「しかし、うーむ……」
エリアや階層を増やす度に要求されるDPが跳ね上がりますし、下手な仲魔を創造しても倒されればその分のDPが無駄になってしまいます。
いえ、別に倒されても収支がプラスになればそれで良いのですが、スケルトンみたいな骨だけの人型に何が出来るのかさっぱり分かりません。
これ、頭数を揃えるのには丁度いいかも知れませんけれど、個人的には戦闘用ではないと思うのですが。
【スケルトンか? それなら死体を素材に創造すると安くなるぜ】
「……それを先に言ってください」
私の背後からスマホを覗き込みながらそんな事を宣うアークに脱力してしまいます……いけませんね、早くダンジョンとしての私をレベルアップさせて《不完全知識》を早いところ完全な物へとしなければ。
でないと、こういう現状では欠けている知識を一々アークに聞くか、アークに教えて貰うまで気付けません。
「まぁ、今スケルトンを作ったところで出番はないので良いですか……」
外から浮浪者や孤児を攫うにしても、完全に魔物なスケルトンでは悪目立ちしてしまいますし、かといってダンジョンに残っていてもマトモに防衛戦力として留守番できるとは思えません。
しなければならない単純作業もありませんし、もしも私の留守中に下水道内に入ってくる人が居たとしてもスケルトンを出してここに何かあると知らせず、そのままその人が何処かに行くまで何もしないでじっとして潜む方が良いでしょう。
「……いえ、一体だけ作りますか」
【なんでだ? 今は必要ないんだろ?】
「私の訓練用ですよ」
【訓練用?】
「えぇ、せっかく短剣術とやらを手に入れたのですから」
今の私が何処まで動けるのかは分かりませんが、少なくとも人型を相手に色々と動きを試すのは無駄にはならないでしょう。
これから狭いダンジョン内で武人を相手にする事を想定するのであれば、こういった小さな積み重ねは大事だと思うのです。
「――
呪文を唱え、先ほど殺したばかりの浮浪者の死体を素材に通常よりも半分のDPを消費してスケルトンとやらを創造します。
おどろおどろしい血の様な赤色の光が死体から立ち昇ったかと思えば、ブクブクと泡を立てて肉が溶けていきました。
その肉の無くなった骨だけの存在に何かが入り込み、憑依する様な感覚を覚えるのとほぼ同時に骸骨が糸に吊るされる様にして起き上がる。
「……成功、ですかね?」
【おう、バッチリだ】
「なら良いのです」
殊勝にも、何も命じずとも自主的に私達の前に跪き、じっと指示を待つ姿勢に首を傾げながらも『まぁ、成功したならいいか』と些細な疑問は捨て置く事にします。
素材となった方の魂は私が食べてしまいましたし、恐らく何かしらが憑依したと感じたあの瞬間から別人になったのでしょう……スラム出身者にしてはお行儀が良すぎますので。
「では、アナタに最初の命令です……私の訓練相手になりなさい」
――カタカタッ
発声器官が無いからか、身振りで了解を伝える骸骨さんに不便だなと思いながらも、私はカッターナイフを構える。
「――精々踏み台として頑張りなさい」
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