第7話 雨
やまぬざんざん降りの雨がビニール傘を叩く
ドンドン叩く、太鼓になった僕の傘
ぼたぼたびたびたずぶ濡れの僕
右からも左からも上からも下からも
雨がふりしきる
頬も服も髪も濡れて終わらないまま
家はどこか遠くにあるような気にすらなる
家はいつもと同じ方角のはずなのに
スニーカーが浸水した 水溜りに王冠が
ひとつふたつみっつ!よっついつつむっつ!
スニーカーが浸水した 靴下もネクタイも
まとわりつく衣服
捻れながら突風で壊れていく傘
骨折しながら盾にしたビニール傘をまた
ドンドン叩く
ぐずぐずびたびたぼたぼたぶるぶるな僕
雨が降ってる
街中に
緑だけが演舞する
風が笛を吹く 雨が かき消す
土が水を吸いきれず
シンメトリーの坂の上で僕は
傘をいっそ 傘をそっと
投げ捨てた
すごい勢いで飛んでって
メガネなんかも既にかかってない
ワイシャツに結んだネクタイ放り投げ
ジャケット邪魔で脱ぎ捨てて
腕を捲ってさあ来いと両手を広げて雨を待つ
雨は止まずに僕を打つ
ドンドンびしゃびしゃズンズンびたびた
僕は吹けない口笛を
恥も惜しまず吹いてみる
雨が かき消す
僕を かき消す
大事な 音も
ぜんぶ 消えた
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