イマサラ・ラクゴニ・ニーズハ?←ハナセバワカル!
ム月 北斗
キラキラ☆寿限無←フリガナ・ヲ・プリーズ
お読みになられてる皆さま、『寿限無』という落語をご存じでしょうか?
寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ・・・etcの『寿限無』です。
前座噺では有名なようでございますが、それではあまりに御粗末ではありませんか?
このお話はそんな『寿限無』に焦点を当てたお話でございます。
あるところに、子供のできた夫婦が居りました。奥さんの出産予定日が間近だというのにその亭主は、まーーだ、子供の名前が決まっておりません。
「あぁ、どうしたもんか。ちっともイイ
亭主は手に持っているスマホとにらめっこ。画面には『子供の名前人気ランキング』と表示されております。
どんな名前にするか悩んだ挙句、亭主はここから取ることを選んだのですが・・・
「ダメだダメだ!
全くもって立派な親としての思い、彼はきっと良い父親になることでしょう。しかし、それでも悩むようで亭主は小学校から高校までずっと一緒だった腐れ縁の友人にLINEを送りました。」
「いま、ヒマか?」 ■
■「どうした~?」
「子供の名前が決まらねえんだ ■
なんか良いの知らね?」 ■
■「予定日間近でまだ決まってねえの?w」
「アイデアはあるんだがよ ■
パっとしねぇっつうか」 ■
■「しょうがねーな。ならよ可愛げのある
■ 言葉を入れるってのはどうだい?」
「可愛げかー ■
どんな言葉があるんでい?」 ■
■「例えばよ、『
■
「『光宙』?まぁカワイイけどよ ■
それを名前にすんのかい?」 ■
■「今時そんな名前の子供ばっかりだぜ?
■ 名簿用紙にフリガナ振らねえと
■ 読めやしねえ。」
相談相手の友人は、大学を卒業後は小学校で教師に努めており、名簿用紙にズラー---っと並ぶ読みの変わった名前、いわゆる『キラキラネーム』を毎日目の当たりにしているそうです。
「光宙ねぇ・・・」 ■
■「ただし、一回だけじゃねえ。二回だ。」
「二回?光宙をかい?」 ■
■「おうよ、『光宙、光宙』ってな。」
「お、おう。『光宙、光宙』な ■
・・・うん。」 ■
■「ところでよ、おめぇさん。
■ 男か女かどっちでぃ?」
「長い付き合いだろうに忘れたか? ■
おいらは男よ。」 ■
■「おめぇのことじゃねえよ。子供!」
「あ、子供な。それが不思議なことに ■
分からねえんだわ。」 ■
■「わからねえなんてことがあるのかい?
■ ならどっちでもいいような名前に
■ しねえとな。」
現代の進んだ医学でも、生命の神秘には不明なところが多いとよく言うものです。
■「よし!男でもいいようなモノ
■ 思いついたぜ!」
「お?なんでい?」 ■
■「天下取りの大武将よ。
■ 『織田信長』はどうだい?」
「信長?!おいらの子にかい?!」 ■
■「いいじゃねえか信長の一つや二つ
■ 減るもんじゃあるめえし。」
「『織田信長』な・・・。うん。」 ■
■「一人だけじゃ物足りねえな
■ 『豊臣秀吉』と
■ 『徳川家康』もいれようや」
「ひ、秀吉に家康?!」 ■
■「天下取りだぜ、将来は出世するに
■ 違いねえ、どうよ?」
「確かになぁ・・・ ■
『豊臣秀吉』に『徳川家康』っと。」 ■
■「ただよ、これだけじゃお堅いイメージだ
■ ユーモアも入れてやろう。」
「ユーモア?どんなのでい。」 ■
■「そうだなー
■ 『おみくじ大吉』はどうだい?」
「お!語呂がいいねー ■
気に入った。」 ■
■「だろー、でよ
■ かっこよく『ハイブリッド』って
■ どうよ?」
「今風だねー、いいね。」 ■
■「あとよ、おれのクラスにいるんだがな
■ 『
「カワイイ名前じゃねーか。」 ■
■「これをよ、今度は三回にしようや。」
「それは欲張りだろーw」 ■
このバカ亭主、立派な名前を付ける事なんて考えはどこへやら。調子に乗って子供の名前はどんどんエスカレートしていきます。
■「でな、その子と仲の良い男の子がいてな
■ 『
「かっこいいじゃねえか。」 ■
■「でもよ、流星には他に好きな子がいてな
■ 『
■ 女の子がいるんだわ。」
「またすごい名前が出てきたもんだ ■
派手な名前だね~」 ■
■「しかもすげーんだぜその子。
■ 小学生でよ、許嫁がいるんだわ。」
「許嫁がいるのかい? ■
すげーじゃねーか。」 ■
■「しかも外国人ときたもんだ
■ 『イーサン』と『ルーカス』
■ 『ジェームズ』に『オリバー』と
■ 4人もいるんだ。」
「・・・ほんとすごいな。 ■
てか、カタカナが多いな・・・。」 ■
■「おっといけねぇ。そろそろ授業だ。
■ 最後にいいか?
■ 子供は『元気が一番』なんだからな
■ 生まれたら教えてくれよ!」
「おう!悪いな時間もらってよ。」 ■
友人に相談する前に亭主は一つ、名前を考えてありました。
『林太郎』
古臭い気もしますが彼が考え抜いた立派な名前でございます。
さて、それから少し時が経ち、無事に玉のような男の子が生まれました。
「やー、めんこい子じゃねえかい!頑張ったな、おめぇにそっくりよ。」
「ありがとうお前さん。ところで、この子の名前は決まったのかい?随分悩んでたようだけど・・・」
ついに聞かれた子供の名前、亭主は自信満々に答えます。
「おうよ!腰抜かすほどの良い名前が決まったぜ!聞いて驚くなよ・・・」
『光宙、光宙、織田信長
豊臣秀吉、徳川家康
おみくじ大吉、ハイブリッド
宝冠、宝冠、宝冠の流星
流星の月女神、月女神の
イーサン、ルーカス、ジェームズ、オリバー
元気一番、林太郎 』
よっぽど自信があったのか亭主は鼻高々に子供の名前を妻に聞かせました。
子供の名前を聞いた妻は亭主の狙い通り呆然。
妻は寝台の側の戸棚の上からスマホを取り、スマホに向かい声を掛けます。
「Hey,Siri.人気の子供の名前を教えて。」
スマホから流れる電子音、その中から妻は一つ選び、夫の持っている夫が考案した名前の書いてある紙を目の前でビリビリーッ!!と引き裂きまして
小さなメモ用紙に選んだ名前を書きました。
「おまえさん、これで役所に出しといておくれ。いいかい、くれぐれもあんたの考えたのを出すんじゃないよ。」
五寸ほどの釘を刺すかのように念を入れ、亭主を役所へ送ります。
メモに書かれた名前はこうでした。
『葉紐』
どう読むかわかりますか?すんなり答えられないでしょう。
読まれた方々にお願いでございます。
子供にとって名前は親から一番最初に貰う『プレゼント』です。
どうか何卒、御粗末な名前を選びませんよう、お願いいたします。
読めぬ名前よりもでしたら、まだ
『寿限無』の方がましなので。
つまらぬお時間、ご拝借ありがとうございました。
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