第25話 追放した冒険者の成れの果て
さっそうと現れたのは犬耳の美少年。
ウェル・ベルクだった。
「…ウェルくん!」
ほとんど動けない状態のゲルド。
全身に痛みが走り、声を出すのも辛いだろう。
「妾もおるぞ!」
小族の少女。
エリスお嬢様はひょこっとゲルドの前に現れた。
「エリスお嬢様。
ゲルドさんに回復と結界をお願いします」
ボロボロで今にも死にそうなゲルドさんに早急な治療が必要と判断した俺はエリスお嬢様に頼んだ。
結界もオークロードと本気で戦うためだ。
「そのつもりじゃ!
聖なる加護を、汝の光、癒しを捧げよ。
光魔法『ヒール』」
光魔法『ヒール』でゲルドを回復させるエリスお嬢様。
しかし、ヒールだけでは応急処置レベルだ。
「ま、待て! お前たちの適う相手じゃない!
オークロードは次元が違うし再生もする!」
再生するのか…。
厄介だな…。
でも、逃げるわけにはいかない!
足止めだけではダメだ。
多くの人が犠牲になってしまう。
倒すんだ…俺が。
危険度Sランクのオークロードを!
「ぐおおおお!!!!!!」
すると後ろからゲルドさんにトドメを流石のようにジェネラルオークが二体襲いかかる。
「くっ! くそ!」
エリスお嬢様もゲルドさんも危ない!
「エリスお嬢様! 結界をお願いします!
『ラーニング』2つ同時発動。
【剛剣】【ファイアブレス】
合成!【二刀流 火炎の剛剣】!!!!」
ズドーン!!!
巨大な火柱が二本上がったと同時に
二体のジェネラルオークは一瞬で灰となった。
「くっ! なんて威力だ!!」
ゲルドさんでさえ全力の一撃でやっと倒せるほどの強敵を一瞬で倒すウェル。
「全く、妾の結界がなければ危なかったぞ」
光魔法『シールド』。
無詠唱で使ったエリスお嬢様の結界。
前よりも格段に丈夫になっているおかげで炎を防ぐことができた。
「すみません。急だったもので」
その姿を見ているのはゲルドとクラーラだけではない。
オークと戦っているB級冒険者、C級冒険者たちも見ていた。
そして、誰もが思った。
この2人ならこのピンチを打開してくれるかもしれないと。
危険度Sランク、オークロードを倒してくれるのではないかと。
全員の心が共鳴して広がったとき、
「うおおおおおおおおおお!!!!!」
鼓舞されたかのように全員叫ぶ。
「なんだアイツすげぇーぞ!」
「ジェネラルオークを一瞬で倒しちまった!」
「もしかしたらオークロードも倒せるかもしれない!!」
「俺たち助かるぞおおお!!!!」
もうウェルのことをインチキだとかイカサマだとか言う人も疑う人もいない。
ウェル・ベルクは一人前の冒険者として認められたのだった。
「……ビリーさんですよね?」
ウェルの口からとんでもない発言が放たれて
周囲は動揺する。
「今、ビリーって言ったか?」
「どこにいるんだ!?」
「アイツ今まで何してたんだ!?」
「姿が見えないが…」
冒険者たちはその言葉に疑問しかない。
なぜならビリーの姿もないし、声も聞こえないからだ。
「ウェルくん、どういうことだ!?」
その疑問に対して最初に問いかけたのはゲルドだった。
「俺の固有魔法『サーチ』のおかげです。
最近鍛えて魔物と人間の区別がつくようになりました」
固有魔法『サーチ』。
半径100mまで生物を感知する魔法。
そして、範囲を絞れば敵がどこにいてどこから攻撃を仕掛けるか精密に知ることができる。
最近はその精度を上げるトレーニングを積むことで
魔物の魔力と人の魔力を区別することができた。
「そして、このオークロードだけが人の魔力を持っているんです」
俺はカーリンとユルゲン。
「ビリーを助けてくれ!
あんなやつでも仲間なんだ!」
という2人の頼みを聞いて森に入った直後に
固有魔法『サーチ』を使った。
そのおかげでオークの大軍の中心に
人の魔力を持っているオークを見つけたのだった。
それがオークロードだ。
「俺はある冒険者たちに頼まれてオークになったビリーさんを探していました。
まさか、オークロードになっているなんて…」
楽園の使徒『ラプラス』の仕業だろう。
恐らく今回も大量の魔力を使ってオークを作った。
そのオークたちを融合させてオークロードを作ったのだろう。
ビリーを核にして。
「諦めるのじゃ。
ウェルのマナドレインなら理論上救えるが
オークロードみたいな格上には通用しないぞ!」
そうだ。
俺が扱える闇魔法『マナドレイン』は弱い魔物にしか通用しない。
オークならマナを吸い取って元に戻すことはできただろう。
だが、オークロードには通用しない。
前にグリーンドラゴンで試したからな。
「どうしたものか…」
「……ウェル……」
え?
「ウェル……ベルク!!」
オークロードが喋った。
「ぐおおおお!!!」
ウェルの名を呼んだ後、雄叫びを上げるオークロード。
「ウェル・ベルク!!!
コロス!! コロス!!!!」
え? 俺?
するとオークロードは斧を振り下ろす。
「やば! 空間魔法『テレポート』!!」
俺は即座にゲルドさんとエリスお嬢様と一緒にその場を離れた。
オークロードの攻撃でゲルドさんが巻き添えになるからな。
「こ、ここは?」
ズドーン!!!!!!!
移動したあとものすごい轟音が鳴り響く。
50m離れているのにオークロードが振り下ろした斧の衝撃がここまできた。
なんて怪力だ。
「ゲルドさん、エリスお嬢様。
ここで待っててください。
空間魔法『テレポート』!!」
俺はゲルドさんとエリスお嬢様の二人を置いてオークロードのところに戻った。
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