第23話 ギルドマスター


数分前。



「うおおおおおおおおおおおお!!!」



先陣を切って暴れまくる元A級冒険者で

現在ギルドマスターのゲルド。


指揮を取らずに特攻しまくる。



「ちょ! ゲルドさん!

オーク倒すのも大事ですが指揮を!!!」



ゲルドに注意するのは、元A級冒険者でギルドマスターの補佐をやっている女性クラーラ。


青髪でショートカット。

スレンダーでスタイルがよくメガネが似合う美女だ。



「ふははははは!!!!!

この状況で指揮などなんの役に立つ!!

それより俺が多く倒せば犠牲が最小限になるであろう!!

オーク(多く)だけにな!!!!」



『オーク』と『多く』を掛け合わせたようだ。

指揮を取ろうが取らなかろうが多勢に無勢は変わらない負け戦。

それなら多くの敵を倒した方が被害は少ないという考えのようだ。



「オヤジギャグか!!

とかいって…本当は暴れたいだけでしょ?」



クラーラはゲルドの真意をつくと



「聞こえなーーい!」



と言いながらまたオークをなぎ倒す。



「子供か!!!」



とツッコむクラーラ。



「おいクラーラ! そっちへ行ったぞ!」



オークの1体がクラーラを襲う。



「ぐおおおお!!!」



雄叫びをあげながら棍棒を振り下ろすオーク。


しかし、それを軽々かわすクラーラ。



「荒ぶる炎、灰燼と化す精霊の加護を…」



するとクラーラは詠唱を始めた。



「汝に与える炎の息吹…」



そして、その詠唱をしながらオークの攻撃をことごとくかわす。



「目前のすべてを焼き尽くせ!

炎魔法 ゼロ距離『フラムルジア』!!」



詠唱が終わるとオークの溝落ちに手を当てて炎魔法を放つ。


完全詠唱の中級魔法をゼロ距離で放つ。



「ぐおおおお!!!」



オークの身体はみるみる焼かれて上半身がなくなった。



「ふっははは!! さすがだ!

詠唱しながら動けるなんてなかなかいないからな」



基本的には詠唱中は無防備だ。

魔力を込めながら集中するため特に背後からの攻撃は一溜りもない。


なので、魔導士は基本的にパーティーを組んで、守られながら詠唱する。


しかし、クラーラは動きながら、または攻撃しながら魔法を詠唱できる稀に見るタイプだ。



「私もまだまだ負けられませんよ」



「ぐおおおお!!!」



更に奥の方からハイオーク10体、ジェネラルオーク3体がやってきた。



「おいおい! オークだけじゃねぇのかよ!」



ジェネラルオークはA級冒険者が一人でやっと倒せるレベルだ。


それが3体も。



「ハイオークぐらいならなんとかなるんですけどね」



ハイオーク10体なら一人でも問題はない。

しかし、ジェネラルオークはどうしたものか…。


すると後方からB級冒険者やC級冒険者が集まってきた。



「ギルマス!! 俺たちにも戦わせろやー!!」



「一人だけ獲物を横取りしているんじゃねぇ!」



血の気が多いがなかなか頼もしい。



「よく来た野郎ども!

だったらハイオークどもは任せるぞ!」



ゲルドとクラーラはジェネラルオークに集中することを決めた。



「久しぶりに身体強化魔法を使ってやるぜ!」



するとゲルドは魔力を集中して高めた。



「ぐおおおお!!!」



ジェネラルオークは雄叫びをあげながら大きな斧を振り下ろした。



ガキーン!!!



しかし、ゲルドはそれを剣で受け止めた。



「ぐっ!! さっすが! なんて怪力だ!!」



受け止めた斧を剣で滑らせて受け流す。



「だが、戦闘スキルがねぇから負けちまうんだぜ!」



そして、ジェネラルオークの懐に入り込む。



「剛剣なる…滅陣!!」



ジェネラルオークを縦に真っ二つにした。


剛剣なる滅陣。


魔力を込めて力任せに剣を振るうが、その威力は周囲に衝撃を飛ばすほどの勢いで斬りつける。


ジェネラルオークを一刀両断するにはちょうどいい威力だ。



「闇魔法『ブライン』!」



更に他のジェネラルオークに状態異常『暗闇』をかけて視界を奪うクラーラ。



「無詠唱では3秒しか持ちませんがこれで十分です!」



わずか3秒。


その隙にゲルドは他のジェネラルオークを一刀両断。


残り一体。



「ぐおおおお!!!」



大きな斧を振り回すジェネラルオーク。



ガキーン!!!


ガキーン!!!



「クラーラ!!

俺が引き付けている間に詠唱だ!」



「言われるまでもありません!」



ガキーン!!!!!!!



「ぐあ!?」



ジェネラルオークがクラーラに気づいても



ガキーン!!!



「余所見させないぜ!」



ゲルドは精一杯ジェネラルオークを引きつける。



「ぐ、身体強化もギリギリだ…」



身体強化魔法の効果ももうすぐ切れそうな時、



「炎魔法 ゼロ距離『フラムルジア』!!!」



ズドーン!!!!



「ぐが!?」



クラーラはジェネラルオークの後頭部に手を添えて炎魔法を放つ。



しかし、ジェネラルオークは大ダメージではあるがまだ立っている。

すぐに振り向いてクラーラに斧を振り下ろす。



「ぐおおおお!!!」



「!?」



ピンチのクラーラ。

しかし、



ズバーン!!!!!!!



ジェネラルオークは真っ二つになった。



「ふははははは!!!!!

俺を無視して無事なわけねぇだろ!」



ゲルドの一撃でジェネラルオーク3体の討伐を完了。



「助かりましたゲルドさん」



「相手はジェネラルオークだ! 仕方がないさ!」



なんとかジェネラルオークを討伐した2人。


しかし、その奥の方から…。



ズシーン


ズシーン



巨大生物の足音が近づいてくる。


そして、木々をなぎ倒しながらその魔物は現れた。



「こ…こいつは…」



ジェネラルオークを凌駕するオークの中の王。


オークロードが現れたのだ。



「ぐおおおお!!!!!!」



オークロードが雄叫びをあげると冒険者たちが吹き飛ばされてしまった。



「うあああ!!!!」



「くっ! な、なんでこんなところにオークロードがいるだよおおお!!」

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