第7話 36歳童貞のおっさんが美少年ショタワンコになる

「日に日に暗殺者の強さが増して来おったから

もし妾が死んでも、この人形を依り代に使って復活できるよう保険をかけておいたのじゃが、本当にそうなってしまうとはのう」



「そのためにお嬢様は、クズイチにイジメ…ゴホン。魔法を当てるトレーニングと称してラーニングの伝授をしていたのですね」



今、イジメって言わなかった!?


あと、クズイチでもう呼ばれるの!?


ココさん!!!


助けた時はセーイチって呼んでくれたのに!!!


ロリコンってバレてから評価は最底辺になってしまった!!!!!


しかし!!


悪くない!!!!!



…それにしても凄い話だった。


エリスお嬢様とココさんの出会い。


その年齢でそこまで苦難を乗り越えるなんて…。


あれ、前世と年齢を足したら今はいくつになるんだろう…。


いや、聞かないでおこう。

殴られそうだからな。


うん、女性に年齢を聞くのは紳士ではない。



「それにしても…グランベル家は何故こんなにも狙われるのでしょうか…?」



俺はさっき描いた脳内再生をシャットダウンして

現実に話を戻した。


何故、グランベル家は狙われるのか?


ただのいざこざとは思えない。





「…詳しいことは妾もわかっていない。

じゃが、グランベル家に伝わる秘密の『カギ』があるそうじゃ。

屋敷が全部燃えてしまった今となっては

そんなものがあったとしても焼失してしまったじゃろうな」



秘密の『カギ』か…。


気になるな。


財宝でも出てくるのか?



「いつもやってくる暗殺者たちは全く聞かされていませんでしたからね。

もしかしたらレイリー家が何か知っているのかもしれません」



確かに、9年前からのエリスお嬢様の話からずっと出てくる名前。


レイリー家。


今までずっとこのレイリー家が絡んでいたのか?




「今回の暗殺もレイリー家なのでしょうか?」




「レイリー家はあまりいい噂は聞きませんね。

かといって今まで証拠を掴むことができなかったから、黒と断定するには時期早々ではあります」




うーん…なんとも言えない情報。


さて、これからどうしたものか?



「俺たちが生きてることが知られるとまずいでしょうか?」



「そうじゃな…妾たちが生きているとなったら

また暗殺しに来るじゃろう」



「そのためには身を隠すか、変装するしかありませんね」



エリスお嬢様とココさんの意見に俺も賛成だ。


そもそもなんでこんな大それた暗殺をしてきたかもわからないからな。


エリスお嬢様は小人サイズになったから大丈夫だろうが、俺とココさんはどうしたものか…?



「姿もそうじゃが名前も変えねばならんな。

何が良いじゃろう?」



「確かにクズイチでは品格が疑われますね」



ココさん!!!!!!


本名がクズイチになってる!!!!!!

クズイチは本名じゃないから!!!!!



「クズイチの名前を決める前にまずは姿を変えねばならんな。固有魔法『メタモルフォーゼ』を使ってみよ」



え!? クズイチが本名は確定なの!?


というか俺は魔法で姿が変えられるのか…。



固有魔法『メタモルフォーゼ』

自分が思い描いた姿に変えられる魔法。

更に形態を固定することで常に維持をする。



つまり、このおっさんの姿から別の姿になって固定すると、その固定した姿を起きている時も寝ている時もずっと維持できるというのか。


しかも固定した時は魔力を消費するのは一回のみ。




「まぁ、いきなりやっても失敗する可能性があるじゃろう。妾の手を握って妾とイメージを共有るのじゃ」



なるほど…。


ってエリスお嬢様と手を握る!?


女の子と手を握るのか!?!?


やばい手に汗が!!!!!



「今回だけその湿った手を握ってやるのじゃ」



やばい!!!!!

手汗バレた!!!!!


ならば!!!!!


恥を捨てて!!!!!


握ろう!!!!!


幼女の手を!!!!!



「さっさと握るのじゃ!

また脳内で良からぬことを妄想しておるのじゃろう!」



「と、とんでもない!!」



またレッテルが増える前に

エリスお嬢様の手を握った。


その手はとても人形とは思えないほど

人肌を感じさせた。



「固有魔法『メタモルフォーゼ』」



俺は名称を詠唱した後、光に包まれた。


そうだなぁ、どうせなら女の子にモテモテになる超絶イケメンの高身長で細マッチョの若い男になりたいなぁ。

年齢はちょうどいい20歳ぐらいにしよう。


髪型はイケメンに似合うちょい長めで茶髪かな?


よーし!


イメージできたぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!



光に包まれた俺はその妄想を爆進させて

イメージを捉えた。


そして、光がなくなっていき俺は姿が変わった。



「ふっふっふっふ…生まれ変わった俺は…。

イメージ通りかなぁ!?」



目を開いた先にはココさんがいた。


そして、俺は不思議と感じてしまった。


ココさんってこんなにデカかったっけ?


俺が身長180cmになったのならば

ココさんより身長が高いはず…。


そして、俺の服は『メタモルフォーゼ』を使う前より大きくなったような…。

…いや、完全にブカブカだ…。


あとなんか頭に、もふもふな耳があるような…

おしりの方に意識的に動かせるしっぽがあるような…。

というか声が子供…?



「とりあえず喉が渇いたからあの湖に行くぞ」



「かしこまりましたお嬢様」



あれ!?


俺の異変にスルー!?


そうか、湖に行けば俺の姿が見れるか。



そして、俺とココさんとエリスお嬢様は

エリスお嬢様と初めてであった湖に向かった。


到着すると俺は走って湖に向かい

自分の姿を確認した。



「な、なんじゃこりゃああああああああぁぁぁ!!!!!」



イケメンというより美少年と言うべきだろうか…。

犬耳としっぽが生えてモフモフと言うべきだろうか…。



まさかの!!!!!




美少年ショタワンコ!!!!!!!!!!!!




というかなんで!?



「変身は成功したようじゃな」



「いや! してない!!!!!!

なんで美少年!? なんで獣人!?

そりゃブサイクよりいいけど!?」



俺のイメージとは全然違う姿に驚いたが

そういえばエリスお嬢様の手を握っていたから

エリスお嬢様なら何か知っているはず。




「お主のいかがわしい店に行きたいという

邪な心を持っていたから妾の方で改ざんしたのじゃ。

あと、妾の方でその姿を固定にしたから、妾の意思でなければ解除できんぞ」



あ、バレたのか…。

女の子の店でウハウハ作戦。

そして、この姿はもう固定されたのか…。



「さらに犬耳は妾の好みじゃな。

従順でイジメたくなりそうじゃ」



や、やばい。

エリスお嬢様は俺をペットにする気だ。



「おもちゃからペットに昇格ですね。

クソクズイチさん、おめでとうございます」




いや、嬉しくないからね!

早く人に昇格したい!!!!!!



そして、クソがついた!

クズからさらに好感度が下がった!!!!!!!



ココさんとエリスお嬢様からクソを見るような眼差しが俺の心を突き刺す!!!!!!


たが、意外と悪くない!!!!!!

いや、目覚めそう!!!!!!




「さて、そろそろクソクズイチから名前を改変しようかのう」



あぁ…エリスお嬢様。

セーイチと呼ばれることなく改変するのか。

というかエリスお嬢様とココさんはいいのか?



「妾はこの姿になったから大丈夫じゃろう。

じゃがお主の名前は姿を変えても目立ちすぎじゃ」



確かに…。

でもエリスお嬢様が名前を変えないのはいささか不用心では?



「私は変装していませんし変身魔法も使えません。それにA級冒険者のツテがありますので

それを使おうと思います。

そして別行動もしたいですし」



ココさんの話によると

ココさんは冒険者ギルドで顔が効くので

匿ってもらいながら働くことができるという。

生活の拠点にするには今の現状だと冒険者ギルドがいいという。


そして、ココさんは闇ギルドを雇ったと思われるレイリー家を偵察するとか。


なるほど…。


と、いうことは俺はまた冒険者ギルドに入るのか?



「うぅ…トラウマが…」



異世界転生して2年間で入っていた冒険者ギルド。


苦労ばかり来た挙句追い出された。


だからこそ戻るのはおっくうだ。



「胸を張るのじゃ!

お主はもう昔のお主ではない!

妾たちを救ったではないか!

自信を持て!!」



エリスお嬢様が俺の心境を察してくれたのか。

喝を入れてくれた。



そう、前に俺が何をしていたのか2人に話したことがある。


あれは執事になって1週間後。

エリスお嬢様に



「妾に会うまでは何をしておったのじゃ?」



と聞かれたことがある。


なので俺は冒険者ギルドでG級冒険者をやっていることを話した。


そしたら



「お主はスケベじゃが根は悪くない。

気遣いもできて雑用の物覚えなら誰よりも早い。

執事としてはなかなか良いのじゃ!

自信を持て!!」



「誰だって適材適所があります。

それならばそれに適した仕事をするのが一番です」



俺はこの言葉で本当に救われたと感じた。

だからこそ2人の夢は俺の夢となった。


一緒に叶えるために一生尽くそうと。



そして、今回もエリスお嬢様に救われた。


そうだ!

俺はもうあの頃の俺じゃない!


変わったんだ!


もう何もできない俺じゃない!



「名前も変えるなら『ランダムネーム』を使うのじゃ!」



エリスお嬢様の話によると

固有魔法『ラーニング』の習得によって

固有魔法『ランダムネーム』というのが使えるらしい。


固有魔法『ランダムネーム』。

術者の頭にランダムで名前が浮かぶ魔法。

ほんとにこれだけなので、今以外使い道はなさそうだ。



「ではいきます。固有魔法『ランダムネーム』」



俺の頭に色んな単語が駆け巡る。

この世界のありとあらゆる言葉。

そして、俺が知っている地球のありとあらゆる言葉。


色んなものランダムに交わり形作っていった。



「……わかりました」



俺の頭の中に名前が決まった。



「俺の名前は…ウェル・ベルク」




ウェル・ベルク。


これが俺の新しい名前か…。


うん、悪くない…。

いやむしろカッコイイ!!!!!!



ウェルとエリス…。


美少女人形と美少年ワンコ。


これが俺たちの新しい人生の始まりか。

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