無能転生者の異世界英雄譚～冒険者パーティーを追放されたが、受け身で習得するチートスキルを悪役令嬢から授かったので英雄になれるみたいです〜ですがショタワンコにされました、ぴえん

第6話 悪役令嬢の正体

頭の中で話しかけてくるエリスお嬢様と

美人猫耳メイドのココさんと一緒に崩壊した屋敷の地下へ潜り、移動していた。

その先にあったのは、可愛らしいゴスロリ人形だ。

なんだこの人形は？

「これは妾の依り代とする人形じゃ。

ラーニングで習得した固有魔法『ビシッツ』で妾の魂をこの人形に憑依させるのじゃ」

ふむふむ。

そうするとエリスお嬢様は俺から離れることができてこの人形になると？

「そういうことじゃ」

頭の中での会話終了。

固有魔法『ビシッツ』。

魂を別の器に移動させ定着する魔法。

魂を移動するには本人の同意が必要で

無機質限定である。

なるほど。

自由自在に他人の魂を操れるほどのチート魔法ではないのか。

そして、これも俺が寝ているときに魔法をかけられたのだろうか？

「お主が寝ているときに使っている枕に憑依させたのじゃ」

なるほど。(パート2)

そういえば誰かの後頭部で押し潰される夢を見たな。

あれは俺の後頭部だったのか。

そして、夢じゃなかった。

それにしても用意周到すぎる。

ラーニングは魔法を受けたら習得する固有魔法なので、ダメージがなかったり効果が発動しなくても習得できる。

つまり、こうなることは予期して

起きているときも寝ているときも

魔法を当てまくったのか？

「言ったであろう？

最悪の事態に合わせた保険じゃと。

というよりさっさとするのじゃ！

お主の頭の中は本当にうるさいのう」

そういえば俺の考えていること全部筒抜けだったんだったな。

では、早く始めよう。

実はロリコンだとバレないうちに。

「『ビシッツ』」

俺は頭でイメージしながら両手を人形に向かって前に突き出して魔法の名称言った。

そうすると身体が緑色に光出して

その光は俺の頭の上に集って人形に移動した。

光がなくなるとさっきまでただの人形だったのだが

まるで小さな人間のようになった。

そう、人形から生物になったのだ。

そして、その人形はゆっくりと目を開いて背伸びをした。

「…うぅ～ん！ やっと外に出られたのじゃ」

人形が喋りだした。

そして、その声、その口調。

間違いなくエリスお嬢様だ！

よかった…。

成功したみたいだ。

「さて、こうなった経緯や今後の話でもしようかのう。この覗きスケベひざ枕ロリコン男に色々働いてもらわないとな」

あらヤダ肩書きたくさん！？

なんでロリコンってバレた！？

そういえば魔法使う前にロリコンって単語が過ぎったような！？

「お嬢様。それは名前は長いのでクズイチで統一しましょう」

ココさん！ ひねりがない！

覗きスケベひざ枕ロリコン

→クズ

セーイチという本名と組み合わせたのか！

「おぉ！ それは良いのう！」

いや、良くない！

クズの中の一番みたいで良くない！

誠の一番だから！

覗きスケベひざ枕ロリコンだけど

名前からも誠を消さないで！

そういえばSc〇o〇l 〇aysの伊〇誠は

色んな女の子に手を出して誠実じゃなかったな。

誠なのに誠じゃなかった…。

あれ？

俺もそういう流れ！？

「…お主の頭の中に入っていてわかったのじゃが

かなり妄想の飛躍が激しいのう。

今も何かつまらないこと考えておるようじゃな？」

エリスお嬢様鋭い！？

そういえば9年前に異世界転生したのなら

Sc〇o〇l 〇aysを知っているのかもしれない。

よし、伝えてみよう！

「すみません。

誠なのに誠じゃなかったと考えていましたw」

笑ってくれるかな？

「やっと自覚したようじゃな」

「違う！ 俺じゃない！！」

エリスお嬢様の半分ブラックジョークが炸裂！

笑ってくれるのではなく笑われた！

などと茶番を続けていると

屋敷がなくなってもこの三人でまたこうして会話ができることに俺は喜びを感じていた。

本当によかった。

「さて、話を戻そうかのう。

妾たちのこと、これからのこと。

じっくり聞かせてやるのじゃ」

10年前。

エリスお嬢様の両親は事故で亡くなったと聞いていた。

しかし実際は暗殺されていたのだという。

さらに、両親だけでなくグランベル家と血筋のあるものは全て殺された。

そして、エリスお嬢様を襲った馬車での事故も

細工してあったという。

実際、エリスお嬢様は死んだ。

これで計画通りグランベル家は潰えるはずだった。

しかし、異世界転生という予期せぬできごとにより

エリスお嬢様の身体に雛森雫という魂が入り蘇生することとなる。

異世界転生した雛森雫ことエリスお嬢様は

魔物から逃げたり戦ったり

食べ物や飲み物の確保をしたり

サバイバルをしたそうだ。

異世界転生する前も元々令嬢育ちであったが

剣道、空手などの習い事をしていたので

『ラーニング』を介して発動することにより

威力が増したという。

それで子供なのに森の中でも生き延びれたのか。

あれ？ でも変だな？

あの森って安全で魔物なんてほとんどいないはず？

「お嬢様は定期的に森に入って武者修行していたのですが、ほとんど魔物を狩り尽くしてしまったそうです」

あらヤダ男らしい！

エリスお嬢様ワイルド！

そして、魔物を狩りながら

異世界転生して1週間。

やっと屋敷にたどり着いたという。

エリスお嬢様が生きていることに驚く使用人たち。

何しろ死んだと聞かされていたのだからな。

更に荷物をまとめて出ていく準備をしていたという。

そしてほとんどの使用人は歓迎しなかった。

悪役令嬢としての振る舞いのせいでエリスお嬢様には、人徳がなかったのだ。

それを良いことに近づいてきたのがレイリー家だ。

やってきたのはレイリー家のトップ。

アルベルト・レイリー。

エリスお嬢様のお父様とは長い付き合いだという。

「エリスお嬢様が死んでしまったと聞きましたのでこの屋敷は私が貰う予定でしたが…

いや～よくぞご無事で！ 生きててよかった！」

エリスお嬢様いわく、このときのアルベルト・レイリーの顔はひきつって目は笑ってなかったという。

全くもって白々しい。

いかにもグランベル家の屋敷が手に入らず残念そうな感じであった。

そして、エリスお嬢様は再びグランベル家の長として戻ったという。

しかし、夜も眠れぬほど何度も命を狙わるエリスお嬢様。

ときには身体を焼かれ

ときには腕を凍らされて

ときには矢で身体を射抜かれ

ときには剣で斬られて

ラーニングの力で切り抜けてきたが使用人たちはどんどん辞めていった。

危険な目にあわないようにエリスお嬢様から辞めさせたこともある。

信頼できて強い使用人。

その想いがココと出会いを引き寄せる。

ココを使用人にしてからは

ほとんど無傷で済んだそうだ。