厄災戦争 無限と支配者は世界を壊す2
アスピドケロンの怒りを買ったバハムート。
反撃すら許されないほどにまでボコボコにされるバハムートだったが、僅かな攻撃の隙間を付いて何とか猛攻から抜け出した。
見えない攻撃をバカスカ当てられまくり、バハムートの体からは至る所から血が流れでている。
しかし、腐っても厄災級魔物。
この程度のダメージは無いに等しい。
「クッソ痛てぇ。あのデブ野郎、俺をバカスカ殴りやがって........お前も助けろよアジ・ダハーカ」
「いや、今のは君が悪いからね。相手が厄災級魔物と言えど、女の子だよ?そんな子に“デブ”って呼ぶのはダメだよ」
「この後殺すのにか?」
「........だから君はモテないんだよ。デリカシーの欠けらも無い」
あれ程殴られたと言うのに、反省の色がないバハムートに呆れるアジ・ダハーカ。
昔からそれなりに知っている仲ではあるが、ここまで乙女に対して気を使えないヤツだとは思っていなかったのか、溜め息が絶えなかった。
「落ち着いたか?」
「全く。あのボケナスを殺す。ウロちゃん手伝って」
「フハハハ。勿論だとも。ようやくまともに戦えるな」
「塵1つこの世に残さない。ぶち殺す」
「........今のアスピドケロンを団長殿達が見たら、きっと驚くだろうな」
バハムートをボコボコに殴り飛ばしたアスピドケロンだが、全くと言っていいほど気が納まっていない。
ウロボロスは、昔をすこしだけ思い出しながらも間違っても怒りの矛先が自分に向かないように細心の注意を払った。
キレた時のアスピドケロンは、冗談抜きで恐ろしい。
かつて数多の国を滅ぼした時にも何度かキレていたが、ウロボロスはその様子を見て“怒らせるのは絶対に辞めよう”と思うほどだった。
「さて、仕切り直しだな。今からが本番だ。準備はいいか?アスピドケロン」
「さっさと殺ろう。あのクソ野郎を1秒でも早くこの世界から消し去りたい」
「ぶっ殺すぞくそデブ。そのデブい図体を破壊してやるよ」
「少しは学ぼうよバハムート........ともかく、俺も次は参加するよ」
先程の気の抜けた空気感とは打って変わって、一気に緊張感がウロボロス達の間に走る。
殺気と殺気がぶつかり合い、次第にその殺気は空間を歪めて世界を揺らす。
僅かな静寂。
風すらもこの瞬間は止み、ウロボロス達の周りは完全なる静寂に包まれた。
そして、その静寂は嵐を呼ぶ。
「「死ね」」
同時に動いたのはアスピドケロンとバハムートだ。
アスピドケロンは周囲の全てを支配すると、風の弾丸をバハムートに向かって放つ。
“
非生物の全てを支配し、アスピドケロンの思うがままに全てを操れる異能。
周囲に浮かぶ魔力すらも操り、出力次第ではこの世界に天変地異を起こせる凶悪な能力だ。
「さっき見たんだよそれは!!ぶっ壊れろ!!」
目に見えない風の弾丸を、バハムートは翼で容易に弾く。
そして、アスピドケロンの地面に向けて破壊の能力を使用した。
「“
次の瞬間、地面は奈落の底まで割れ、アスピドケロンの身体を埋葬しようとする。
“
込めた魔力の分まで周囲を破壊し尽くす異能であり、その力は大陸を両断するだけの破壊力を持っている。
バキバキバキと、思わず耳を塞ぎたくなる絶望の音は次第に大陸全土にまで渡り、バハムートの意図せずに数多くの人を巻き込む。
その中には、バハムートが恨んでいた合衆国も入っていた。
「足元を狙うとか、規模が小さいね。私にそういう絡めては効かんよ」
「手伝おう」
アスピドケロンは自身の足元だけを支配すると、地割れを起こした地面を元に戻す。
ウロボロスはその手助けとして、無限に生成された魔力をアスピドケロンに与えた。
絶対的な支配者と、無限に魔力を生成する魔力タンク。
この組み合わせは相手が思っている以上に厄介であり、仁のような圧倒的な火力でごり押す以外に攻略法が無い戦い方だ。
「2人とも纏めて吹き飛べ」
アスピドケロンはそう言うと、周囲の魔力をかき集めて大きな魔力の玉を作り出す。
周囲にある魔力の殆どをかき集めて作られた魔力弾は、バハムート達を容易に巻き込めるだけの大きさであり、流石のバハムート達もこれには危機感を覚えた。
「あれはやべえ!!」
「俺が邪魔をしよう」
アジ・ダハーカはそう言うと、三つの口を大きく開けて黒いレーザーを放つ。
“
圧倒的な貫通力を持った黒いレーザーのような魔力を打ち出す異能であり、ほかの異能よりも利便性は無いが貫通力に優れた能力。
かつてアジ・ダハーカがこの黒閃を地面に向かって放った時は、世界の裏側まで貫通したと言われている程だ。
そんな貫通力に関しては世界一とも言える一撃がアスピドケロンを襲う。
「させるわけないだろう?」
しかし、ウロボロスとて見ているだけではない。
ウロボロスは迫り来る黒い閃光に向かって無限を発動すると、周囲の空間を強引にねじ曲げて軌道を逸らす。
幾ら貫通力があると言っても、空間を曲げられてしまえば真っ直ぐ進むことはできない。
光ですら歪む程にまで空間を曲げてしまえば、どんなものでもその道を真っ直ぐ進むことは出来ないのだ。
尚、本人達は気づいていないが、このねじ曲げた黒閃は地面を貫通し、聖王国のとある街に出現することとなる。
そして、その街は一瞬の内に滅ぶのだが、ウロボロス達が知る由もない。
「ありがとウロちゃん」
「礼には及ばん。さっさと殺れ」
「はいはーい」
集め固められた魔力はバチバチとうねりを上げてバハムート達を吹き飛ばす時を待つ。
バハムート達も阻止はできないと確信すると、防御に回った。
「じゃ、死ね」
無慈悲にそう言い放ったアスピドケロンは、魔力弾をバハムート立ちに向かって放つ。
その瞬間、世界は真っ白に染まるのだった。
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