神正世界戦争:炎帝 &幻魔剣vs剣聖①
突如として現れた人類最強。
肌を突き刺す殺気とただならぬ気配は、格上と戦ってきたシルフォードとエドストルに冷や汗を掻かせるほどだった。
滝のように降り注ぐ雨の中に混じる汗。剣聖からは見えていないはずだが、その鋭い目の奥では全てを見透かされている気がしてならない。
「最長5分ですか。撤退しつつ牽制を入れ、逃げ続ければ時間は稼げそうですね」
「無傷で勝つのは無理。だけど、私達の“勝ち”は逃げればいいから、どんな手を使ってでも時間を稼ぐ」
ドレス平野の戦いで名を挙げた規格外を持ってしても、剣聖に勝つのは難しいだろう。
しかし、規格外以上に規格外な団長ならば、この剣聖をなぎ倒せると言う確信が2人にはあった。
それまでは、耐えるのみ。
逃げに徹すれば負けることは無い。
「ほっほっほ。あの“豪鬼”をいとも容易く殺すとはのぉ。さすがは“炎帝”と“幻魔剣”じゃな」
「........私達を知ってるの?」
「知っておるとも。ドレス平野での噂はここまで届いておる。人里離れた地にて暮らしておろうとも、強者の話は耳に入るものじゃ」
幸い、剣聖はシルフォード達の狙いに気づいていない。
シルフォードとエドストルは会話を長引かせることによって時間を稼ごうと判断すると、とにかく適当な話題を振ることにした。
「“人類最強”とまで呼ばれる貴方に名を覚えられるとは光栄ですね。私も頑張ってきたかいがあるというものですよ」
「ほっほっほ。多少の才能の差はあれど、歩む道がその者を強くする。ゴルゼインよりも険しい道をお主らは歩んできたということじゃな」
「それは当たり前。私達は常に格上と戦ってきた」
「ほう?お主らよりも強い奴が居るのか。これは楽しめそうじゃのぉ。大方、“黒滅”や“黒鎖”辺りか?確か、お主らの団長と副団長と聞いたぞ」
「ご名答。貴方でも敵わない。正真正銘の化け物ですよ」
「自分達の長だろうに、化け物呼ばわりとは中々に酷いのぉ。まぁ、儂も似たようなもんじゃが........」
剣聖はそう言うと、自分の後ろで剣を構えるバッドスに意識を向ける。
1年以上の修行で、彼は既に
しかし、それでも剣聖には遠く及ばない。
尊敬も支持もされているが、ひっそり化け物扱いされている事も知っている。
真の化け物はこんなものでは無いと剣聖は知っているが、出会った事の無い者には分からない話しだ。
「お主らはどちらかのぉ?」
「「──────────?!」」
巻き起こる殺気。
それに素早く反応したエドストルとシルフォードは、迎撃体制を作ると先手を取られる前に攻撃を開始した。
「燃え尽きろ」
放たれたのは灼熱の業火。
シルフォードは団長からなるべく地形をを破壊しないようにと言われていたが、そんなことを気にしているようでは瞬殺されてしまう。
素早く対応できる中で、一番強力な精霊魔法をシルフォードは行使した。
滝のように降り注ぐ雨をも一瞬で蒸発させ、ぬかるんでいたはずの泥は水分失い土に戻る。
まともに喰らえば骨も残らない圧倒的火力で放たれた精霊魔法は、目に追うのもやっとな状態で剣聖へと迫った。
「ほっほっほ!!あの“精霊王”よりも強力ではないか!!これはかなり楽しめそうじゃのぉ!!」
想像以上の反撃に、剣聖は愉快に笑いながら剣を振るう。
精霊王との戦いでは楽しむために多少手を抜いていた剣聖だったが、今回ばかりは本気で剣を抜く。
わずか数瞬。刹那の時よりも早く剣聖は20近い斬撃を解き放ち、火球をズタズタに切り裂く。
飛び散った炎の残骸が剣聖の体を焼こうと追尾するが、剣聖はそれも斬り伏せた。
「想定はしてたけど、剣一つで斬り伏せられるのはショック」
「大丈夫ですよシルフォード。団長さんなら殴り飛ばしてます」
「確かに。次」
後ろへと下がり距離をとるシルフォードとエドストルは、なるべく味方を巻き込まないような位置取りを意識しつつ牽制を続けた。
“炎帝”の名に恥じぬ圧倒的火力で剣聖を足止めし、僅かにできた隙をついて小さな攻撃を仕掛けていく。
そのどれもが容易く対処されてはいるものの、時間を稼ぐ事には成功していた。
だがしかし。ここまでやれば剣聖も相手の狙いが何かわかる。
「ほっほっほ。時間稼ぎか。おそらく、団長とやらを待っておるな?儂としては待っても良いが........忠告さてれおるのでな。悪いが、本気で潰させてもらおう」
遊びから仕留めに、戦いを楽しむ者から戦いを終わらせる者に変わった剣聖は、長年積上げてきた独自の歩行によってシルフォードとエドストルの視界から消える。
シルフォードとエドストルも剣聖が動いた事は確認でき、視界から消えた事で探知に集中するが、気づいた時には肉薄されていた。
「速っ!!」
「シッ!!」
まずは厄介な遠距離攻撃持ちのシルフォードから。
光速とも思えるほどの速さにまで達した剣聖は、シルフォードの首を切り落とさんと剣を振るう。
が、それを許すほど二人も弱くはなかった。
シルフォードは即座に炎の盾を展開し、自分を守る。エドストルはシルフォードが自分の身を守ると信じて、剣聖に斬りかかった。
まさか反撃されるとは思ってなかった剣聖だが、エドストルの剣を避けると距離をとる。
あのまま肉薄し続ければ、先に剣が燃やされた事だろう。
「ほっほっほ!!反応するだけに留まらず、反撃まで行うとは見事。儂も少し見くびりすぎておったな」
「生憎、自分よりも早い相手と戦うのは慣れている。反射的に防御を貼れなきゃボコされるからね」
「多少コンビネーションの訓練してて良かったですね。今のは惜しかった」
コキコキと余裕そうに首を鳴らすシルフォードと、剣聖に一撃入れられずに悔しがるエドストル。
まだまだ余裕がありそうな二人を見て、剣聖の心は昂っていた。
「ほっほっほ!!これは久々に楽しいのぉ!!昔を思い出して身体が若返りそうじゃ!!」
「出来れば年でさっさと死んで欲しいんだけどね。生きすぎだよ?」
「全くですね。早く死ね」
「辛辣じゃのぉ。老人は労れと教わらんかったのか?」
「生憎、化け物は老人に含まれない」
「手厳しいのぉ。まぁ、よかろうて。残り少ない余生を楽しむぐらいは許して欲しいもんじゃ」
再び剣を構える剣聖。
その目は逃がさないと言っている。
「逃げながら戦うのは難しいかな。時間はそれなりに稼げたし、後は死なないように戦おう」
「そうですね。私が前衛をやりますか?」
「エドストルだと多分無理。私がメインで立ち回るから、エドストルはフォローを」
「了解です」
シルフォードは大きく息を吸い込むと、常に自分の隣にいる相棒に声をかける。
「行くよ。サラ」
「──────────!!」
シルフォードにしか聞こえない声。シルフォードはやる気満々のサラを頼もしく思いながら、精霊魔法を行使した。
「炎よ。我が化身となれ。
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