討伐開始(交通整理)
地面を揺らし、盛大に復活した暴食の魔王ベルゼブブ。その姿はデカいハエの姿であり、正直見るに耐えない。
想像してみるといい。自分の3倍近くあるハエなんてただただ気持ち悪いだけた。
「魔王センスねぇよ。なんで数ある昆虫の中からハエなんだよ」
「いやまぁ、暴食の魔王ベルゼブブっていえばハエだからね。むしろコレでカマキリとか出てきても困るでしょ?」
「確かに」
前の世界でも、暴食の魔王ベルゼブブは御伽噺で存在していたな。
しかもハエの姿で。でも俺が見たベルゼブブの絵は、こんなリアルなハエじゃ無くて人型だった気がする。
「どうするの?仁の考えているカッコイイ登場の仕方だと、街に被害が行くと思うよ?」
「もう出まくってるだろ。最初の地震で。古い家がボロボロに崩れてやがる。まぁ、これ以上の被害を出さないように、裏から掩護するつもりではいるけどな」
「あぁ、カッコイイ登場の仕方はやめないのね......」
馬鹿野郎。龍二達がピンチに陥ってから、俺達が出て来れば“キャー、仁さんカッコイイ!!”ってなるだろうが。
コレぞ感動的な再会!!きっとみんな涙を流してくれるに違いないだろう。
「さて、俺達のカッコイイ登場の為には、光司達が苦戦してくれないと困るわけだ。頑張れよー」
「何の応援をしているんですかねぇ........」
俺達は街に被害がなるべく出ないようにする為に、陰ながら手助けをするとしますか。
あまりに大きすぎる能力は使えないが、ちょこっと異能を使う程度ではバレないだろう。
街では逃げ遅れた人々が我先にと、各地にある教会に逃げ込もうとしている。こういう時、神を信仰していようがいまいが、人の醜さが出てくるな。
下手したら、この逃げる人々に押しつぶされて死ぬ人もいるかもしれない。
特に、体の弱い人や小さい子供はこの人の波を越えるのは厳しそうだろう。
衛兵達も何とかしようと頑張ってはいるが、流石に何千人と流れる人の並を止めるには人が足りない。
仕方が無い。俺達で少し冷静になって貰うか。
「イス。一旦あそこの人達の足を止めさせろ。衛兵と転んでいる子供とかは凍らせるなよ」
「はいなの!!」
イスは軽く片足を前に出すと、慌てふためく人々の足を凍らせる。
「きゃぁぁぁ!!」
「何だこれは!!」
「いやぁ!!助けてぇ!!」
........ちょっと失敗だったか?落ち着いてもらいたかったのだが、余計に混乱させてしまったようだ。
衛兵達も何が起こったのか分からず、ただ困惑しているだけ。しかし、自分達の足は凍っていない事に気が付くと足の凍らされていない転んでしまった子供や、お年寄りを助け出す。
どうやら彼らは、仕事ができる有能君達だったようだ。
「さて、顔を知られていると面倒だし、仮面は付けて行くか」
「おー、仮面が初めて役に立った気がするね」
「何気に私はあの仮面好きなの」
一応、ヴァンア王国を消した時に仮面は被っていたのだが、アレはどちらかと言えば雰囲気作りだったからな。
今回は雰囲気作りでは無く、ふつうに顔がバレたくないから使うのだ。確かに、仮面が初めて役に立った気がする。
俺は真っ白な仮面を手に取ると、それを顔に付ける。髪型でバレても面倒なので、フードも被っておこう。
ところで、一つ気になることがあるのだが。
「なぁ、なんで戦闘音が全く聞こえないんだ?暴食の魔王も動いてないし」
「本当だね。なんか光司君たちの方を見て話してる?」
「ちょっと、身体強化を強めて話を聞いてみるか」
雑音が多すぎて聞き取りづらいが、このぐらいの距離なら問題なく話を聞けるはずだ。
『ホウ?貴様ラガ我ヲ討チ滅ボスト?』
『そうだ。人々の生活を脅かすお前達は僕達が討伐する。覚悟しろ!!』
『フハハハハ。無知トハ実ニ哀レ也。“
『?』
『マァ、イイ。トットトカカッテコイ。我ノ糧トナレ』
『行くぞ!!みんな!!』
光司の掛け声と同時に、魔王に向かって空を飛ぶのが目に入る。
2年前とは比べ物にならない程速さで魔王に肉薄すると、切れ味抜群の聖剣“ソヤハノツルギ”が魔王の羽を一枚斬り飛ばした。
おぉ!!やるじゃないか。あの一刀を振るうのに5回はフェイントが入っている。
視線の動きや、重心ノ動き。更には刀の起動までもにしっかりとフェイントが折混ぜられていたのがよく分かる。
この二年間でかなり成長したんだな。
「今のはいい一撃だね」
「そうだな。正直、今の一撃よりもその前の会話の方が気になるけど」
「なんかグレゴリウス?とか言っていたね?監視とか何とか」
「それも気になるけど、俺は普通にラスボスVS勇者みたいな会話がちょっと羨ましいなと」
「あぁ、そう......」
花音は呆れているが、俺としては結構重要である。カッコイイと言うよりかは、どこかの少年漫画のように仲間とラスボスに挑む感があるその姿は少しだけ羨ましかった。
どの魔王でもいいから“世界を半分くれてやる”って言ってくれないかな。そしたら全力で断るのに。
「ねぇ、仁。魔王との戦闘を見るのもいいけど足を凍らせたままだよ?」
「おっといけねぇ。もう流石に子供や老人は助け出せたか。もう少し見たかったけど、お預けだな」
仮面を被った俺達は、未だにギャーギャー騒いでいる人々の所へと歩いていく。
探知を全開で使っているが、俺達の近くに敵らしき者は感じられない。
魔王の近くにいた悪魔達が襲ってくると思っていたのだが、それらしき気配は龍二達の方にある。
市民を殺すのは後でもできるってことか?先に戦えるもの達を殺そうと言うわけか。
「だ、誰だ?!」
俺達が近づくと、衛兵達が槍を構えて俺達を警戒する。
うんうん。仕事熱心でいい事だ。
普通に話すと威厳がないので、少しキャラを作って話すとしよう。
「子供達や老人は助け出せたかね?」
「......は?」
「我が身の可愛さばかりに、子供を踏み潰そうとしたもの達を止めてやったのだ。もう大体は助け出せたか?」
「は、はい」
「そうか」
そう言って俺は、指をパチンと鳴らす。すると、3分の1程度の人々の氷が溶けて動けるようになった。
この指パッチンについては、ついさっきイスと打ち合わせした。俺が指を鳴らしたら、3分の1程度の氷を解いてくれと。
「動けるぞ!!」
「よし!!今のうちに!!」
再び走り出そうする愚か者たちを見て、俺は再び指を鳴らす。
氷が解かれた人々は、瞬く間に足を凍らされてしまった。
そして、ドスの効いた声で全員に聞こえるように魔道具も使いながら忠告する。
『ゆっくりと衛兵の指示に従って歩け。次、走った者はここで永遠に凍らせるぞ』
そう言って、再び氷を解いた矢先、頭の足りない馬鹿数名が走り始めた。
マジかよ。馬鹿過ぎないか?ちゃんと忠告したじゃん。
俺は頭を抱えながら、イスに走った馬鹿共を凍らせるように指示を出す。
そして、凍らされた馬鹿共はギャーギャー騒ぐが、俺は今度は殺気も込めて盛大に脅した。
「次、舐めた真似をしたら頭のテッペンまで凍らせるぞ?」
殺気はこの場にいる人々全てに行き渡り、後ろで騒いでいた人達も大人しくなる。
衛兵さん達は、こういう事は出来ないからな。1番効果的なのだが、彼らは民を守るのが仕事なのだ。下手に脅すことはできない。
そして、俺の脅しに怯えた人々は大人いく衛兵の指示に従って移動を始めた。
「あ、あの。ありがとうございます」
衛兵の1人が、俺に礼を言いに来る。本当にできた人達だな。流石は神聖皇国の兵だ。
「礼を言われることでもない。少し手を貸しただけだ」
「そ、そうですか。ところで、貴方達は一体......」
お前は誰だと聞かれたので、滅茶苦茶格好つけて答えてやろう。
「我々は
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