第四十八話

 俺は首をひねって、記憶きおく辿たどった。だがそんな流派りゅうはは、聞いたことが無かった。だからつい、言ってしまった。

相模二刀流さがみにとうりゅう? 聞いたことねえなあ……」


 すると、ことみは少し落ち込んでしまったようだ。

「ま、まあね……。相模二刀流は私の父が作った流派で、父が師範しはんなんだけど、まだまだ小さいの……。でも本当にすごいのよ、相模二刀流は! 私が、その強さを証明して見せる!」と、ことみは二本の刀をり上げた。


 俺は、少し考えてから決めた。

「ふーん、そうか……。ま、このままじゃ俺も、『いん』と『よう』を手に入れることは出来ないからな……。よし、ことみ! 俺と組もうぜ!」

「ええ!」


 そして俺と、ことみはがっしりと握手あくしゅをした。


 しかし、ことみは何かに気が付いたようだ。

「あ、でも、そうすると大会への登録とうろくも、しなおした方がいいんじゃない?! ほら、私たちは別々の人と大会に登録したはずだから! で、実は逃げた人は相模二刀流の、一番強い門下生もんかせいだったんだけどね……」


 俺は、なるほどと思い答えた。

「そうか……。しかし、なるほど。確かに、そうだな……。うん。登録をしなおした方が、いいかも知れねえなあ……」

「絶対、そうだって! よし! 登録を、しなおしに行きましょう!」


 そして俺たちは、大会の受付に行った。机には、さっきと同じ二人の男がいていた。


 ことみが机まで行き、話しかけた。

「えーと、すみません。組になる人を変更したいんですが、出来ますか?」


 左側に座っている男が、聞いてきた。

「えーと。あなたはすでに登録して、大会に参加されている方ですか?」

「はい、そうです。南条なんじょうことみ、です」


 男は、帳面ちょうめんを確認した。

「えーと、南条ことみさん……。あ、はい。既に登録されていますね。で、誰と変更したいんですか?」

「はい。風早かぜはや誠兵衛せいべえという人です」


 男は再び、帳面を確認した。

「えーと、風早誠兵衛さん……。なるほど、こちらの方も既に登録されていますね。 

 で、この方と二人一組になりたいと?」

「はい、どうでしょうか?」

「まあ、いいでしょう。お二人とも既に登録されていますし。はい、変更を認めましょう」


 ことみは、飛び上がって喜んだ。

「本当ですか? やったー!」


 俺も、一安心ひとあんしんした。

「やれやれ。これで取りあえず、戦うことは出来るか……」


 すると、ことみは意気込いきごんだ。

「よーし! それじゃあ早速さっそく、敵を倒しに行きましょう!」

「ああ、そうだな……」


 しかし俺たちが受付から離れると、二人の男たちが近づいてきた。


 男たちは、話し出した。

「よし。これで俺たちの優勝だな」

「ああ。うん? 待て。誰かいるぞ!」


 そして俺と、ことみに聞いてきた。

「おい。お前たちも、この大会の参加者なのか?」


 ことみが、答えた。

「ええ、そうよ! ……って、こいつら、さっき私たちに勝った奴ら!」


 俺は、確認した。

「え? そうなのか?」

「うん、間違いないわ!」


 ことみは男たちに向かって、えた。

「こらー! さっきは負けちゃったけど、今度は勝って見せるわ!」


 男は、うすら笑いを浮かべた。

「うん? お前は確か、さっき俺たちから逃げた女。やれやれ、こいつらが最後の敵か……」

「え? どういうことよ?!」

「言った通りだ。今、この大会に残っているのは、ここにいる四人だけだ。つまり俺たちがお前たちに勝って優勝して、『陰』と『陽』を手に入れることが出来るって訳だ!」


 しかし、ことみは必死ひっしの表情で再び吠えた。

「そう、そういうことなの! でも優勝するのは、あんたたちじゃない。私たちよ!」

「ふん。妖刀ようとうを持っている俺たちに、勝てると思っているのか?」

「な、何ですって?!」

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